TOEICテストのスコア280点から同時通訳者になった小熊弥生さん。いったいどのように英語学習を実践してきたのだろうか。「英語が使いこなせる自分」に最短距離でなれる英語学習とは何か!?今日から実践したくなる、誰もが英語をモノにできる、効率的な英語学習法を伝授してもらった。

単語や熟語と慣用句は徹底的に丸暗記。一方で英語に耳を慣らすと同時にネイティブスピーカーの発音を学び、読み書きについても毎日ある程度の時間を速読と英文作成にあてる。これを毎日実践すれば必ずや英語力は身につくはずだ――。

そう確信して英語に取り組んでいるのに、努力が報われない人も少なくない。何がいけないのか。まだ努力が足りないのか。あるいは自分の能力が足りないのか。英語上達を迫られるビジネスパーソンが今いちばん知りたいポイントだが、周囲を見回してみると、同じくらいの時間を英語学習に費やしているのに、ある人はぐんぐん上達し、ある人は停滞を続ける。そんな状況もしばしば見受けられる。

ということは、英語学習法に決定的な違いがあるということだろう。では、その違いは、勉強法のディテールに関するものなのか、それとももっと根本的なことなのか。

英語学習の初期段階で、TOEICのスコアを280点からわずか半年で805点にまで引き上げた経験をもつ同時通訳者、小熊弥生さんに、「何をどうしたらいいのか」と、単刀直入に聞いてみた。

小熊さんの口をついて出た答えは単純明快、目標を見極めるということだ。

目標を具体的にして
手元に引き寄せる


『TOEIC(R)テスト280点だった私が半年で800点、3年で同時通訳者になれた42のルール』(幻冬舎)より。

「夏の旅行のプランを立てるとして、どこか行きたいというだけでは場所もホテルも航空券も検索できません。例えば休暇をゆっくりと過ごしたいということになれば、にぎやかな観光地よりはリゾートがいいでしょう。次に砂浜というキーワードが加わればビーチリゾート、それならバリかモルディブ? といった具合に目標が定まります。英語の場合もまったく同じです。ただなんとなく英語ができるようになりたいと思っても、それだけではどこへ向かえばいいのかわかりません。英語がペラペラになりたいというのは、今からネイティブになりたいと言っているのと同じ。そういう非現実的なことは目標になりません」

小熊さんは目標を引き寄せることが大事と忠告する。

「海外出張に行かなくてはならない。行くからには英語でコミュニケーションをとり、ビジネス相手の心をつかむような格好いい挨拶をしたい。こう思うことが実は最初の目標なんですね。My nameis ~で自己紹介を始める人がほとんどなら、あえて、I am ~ で始めてみるとか、I belong to ~と日本人は所属部署で自己紹介をしがちですが、もしあなたが研究開発のリーダー的な存在だとしたら、I am the head of the R & D Department. と言ったほうがスマートだし、相手にも伝わりやすい。自己紹介ひとつにしてもバリエーションは無限にあります。そのうちの10や20のパターンを覚えるのに苦労はないはずです」

自己紹介のバリエーションは、スカイプを利用した英会話教室などでどんどん入手し、精査し、発音もそこで練習すればいいと小熊さんは身近でお金のかからない勉強法を推奨する。

大事なのは準備することなのだ。日本語のプレゼンにおいてさえ何度も練習するというのに、英語でスマートな挨拶をしたい人が余計に練習しないのはおかしい。だから、利用できるものはどんどん使って準備すべしということ。さて自己紹介の次には、どんな目標を設定すべきか。

「自己紹介の次はプレゼンテーションですね。挨拶と同様に事前に準備ができます。昨今では海外の同業者のプレゼン動画などまでネット上にアップされていたりしますから、どんどん使いましょう。そしてプレゼンの後は雑談が目標です。企業のカルチャーや互いの相性について理解し合うためには、巧みな雑談がポイントになる。趣味の話から意気投合して新たなビジネスチャンスにつなげるというステップの目標ですね。そして、次がようやくQ&Aです。ここでは高いレベルのリスニングの力が求められるようになりますが、そこもなんとかクリアできたら、あとは接待くらいでしょうか。英語で接待し、文化や政治の話題にも対応できる状況にすることが英語学習の目標になります」

ここまでが、30~40代のビジネスパーソンの現実に即した目標設定のポイントなのだ。