2014年7月10日(木)

自認書 -「一筆書けば許す」を信じてはいけない

PRESIDENT 2014年5月19日号

著者
村上 敬 むらかみ・けい
ジャーナリスト

1971年、大阪府生まれ。東京外国語大学外国語学部(マレーシア語科)卒。ビジネス誌・エンタープライズIT誌を中心に、自己啓発から経営論まで、幅広い分野で活躍中。

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文=ジャーナリスト 村上敬 答えていただいた人=弁護士 長谷川裕雅 図版作成=ライヴ・アート
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身に覚えのない罪で逮捕されたり事情聴取されるリスクは、誰にとっても無縁ではない。たとえばお酒の席で喧嘩に巻き込まれて、殴った殴らないの話になったり、満員電車で痴漢に間違われることもある。

多くの人は「清廉潔白なのだから、自分が罪を認めるはずがない」と考えているに違いない。しかし現実はそうではない。否認を続けると勾留期間が長引き、起訴される可能性が高くなる。一方、罪を認めれば不起訴になったり、略式起訴により罰金で済む可能性が高まる。それゆえ本当は無実でも、あえて罪を認める選択をする人もいる。いわば名を捨てて実を取る戦略だ。

しかし、この戦略を選んだために、かえって実利を失うこともある。自白すると、会社をクビになるリスクが高まるからだ。

まず一般論として、刑事事件と懲戒処分の関係を説明しておこう。会社員がプライベートで起こした事件は私生活上の非行であり、原則的には懲戒処分の対象にならない。ただし、それによって会社の社会的評価に重大な悪影響があった場合、懲戒処分することもできる。

懲戒処分が妥当かどうかは、「当該行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から総合的に判断」(最高裁二小昭和49年3月15日)される。つまり、一般に、社会的信用度が重視される会社ほど、懲戒処分になる可能性が高い。

問題は懲戒のタイミングだ。会社の評判を貶める社員とは一刻も早く関係を断ちたいのが企業側の本音。しかし逮捕段階でクビにすると、不起訴になったときに後から労働審判でひっくり返されるおそれがある。そこで浮上するのが自白の有無だ。長谷川裕雅弁護士は次のように解説する。

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