30年前。私たちの生活にエアコンや携帯、インターネットはなかった。そんな「昭和の暮らし」に戻ることは、月々の出費を驚くほど減らし、さらに家族のあり方を見直すことにも繋がっていく──。

30年ローンを約7年で完済

「ないなら、ないなりに、なんとかなる」

それが、ガスを手始めに冷蔵庫、クーラー、クルマ、テレビ、電子レンジなどを使わない生活を送っている大庭聡恵さんの実感だ。神奈川の戸建てで夫と4人の子ども、犬1匹とともに暮らしている。

「モノを手放してみると、いいことばかりだったんですよ」と大庭さんは語る。

テレビを見ないから子どもたちと接する時間が増えた。早寝早起きをするから子どもたちが元気になった。また食洗機を使わず、食器を水洗いで片づけてみると、こびりつく脂汚れから、ラードやバターなどの動物性脂肪をいかに多く取っているかに気づいた。動物性脂肪を控えた料理に切り替えたところ、夫の足のむくみはなくなり、娘の皮膚炎もよくなった……。

大庭さんは元マンガ家。13年2月に自身の経験をまとめたイラストエッセイ『びっくり節約生活! 一家6人+1 月7万円』(二見書房)を出版したところ、テレビ番組に取り上げられるなど話題を呼んだ。

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大庭家「月7万円生活」の内訳

書名の通り、大庭家は聡恵さんと薬剤師の夫、大学1年生の長男から小学2年生の次女までの2男2女の6人家族だ。

毎月の生活費は約7万円。内訳は、一番大きい項目が4人の学費で2万6300円。次が食費で2万2100円。ほかには上下水道が9300円、電気代が8000円、電話代が2500円、自宅の固定資産税が1750円。携帯電話やインターネットの契約はなく、ガスも使っていない。

このため1年間の出費は100万円に満たない。自宅購入のため15年前に約3000万円を30年ローンで借り入れたが、節約の結果、わずか7年で完済。いまは子どもたちの進学費用のために貯金を続けている。

節約生活のきっかけは、ある日の停電だった。夜9時、辺りが急に真っ暗になった。家族はすぐに布団に入った。翌朝、いつもよりも早起きした子どもたちが、朝ご飯をふだんよりもたくさん食べた。

「子どもたちの健康は私が守らなければ、と考えていたのでうれしかった」と大庭さんはいう。

朝食を食べる子どもたちの姿を見た大庭さんが漏らした「早く寝ると食費はかかるかもしれないけど、光熱費は浮きそうだね」という何気ない一言に、夫が反応した。電卓を手に計算をはじめた。当時、家を新築して5年目。住宅ローンの返済額が上がる時期だった。

「夫の計算によれば、生活費を見直して、貯金や保険を解約したお金などを返済にあてれば、あと2年で住宅ローンを完済できるということでした。それまでは、あればあるだけ、という無節操な使い方をしていましたし、利子を払い続けるのはもったいない。そう考えて節約をはじめたんです」

夫が立てた節約の計画に沿って「いかにお金を使わないか工夫すること」が大庭さんの役割になった。