福島の災厄にピリオドを打てぬ政府。だが、国の新たなエネルギー戦略案には、重要な柱の一つとして「原子力」が明記されている。なぜか──その謎を解くには電気事業法に加え、とある省令の掘り起こしが必要だ。
電力の使用状況(東電サービスエリア内)/今夏の需給見通し(5月13日現在)
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電力の使用状況(東電サービスエリア内)/今夏の需給見通し(5月13日現在)

「原発がなければ電力が不足する」という不安が巷に蔓延している。震災後の計画停電の経験が刷り込まれ、新聞やテレビが、まるで「原発がなければ停電だぞ」と脅迫するかのように報じているからだ。事実はどうか。

東京電力のHPには、連日の需給状態を示す「電力の使用状況グラフ」が掲載されている(上図参照)。6月5日のピーク時供給力は4020万kW。これに対する予想最大電力は3240万kW。平均して500万kW、供給力が需要を上回っている。別ページに掲載された「今夏の需給見通しと対策について」の第三報(5月13日付)には、同社が弾き出した夏の電力需給予測値が表示されている(下図参照)。7月末と8月末の需要はいずれも5500万kWだが、供給力はおのおのそれを上回る5520万kWと5620万kW。昨年7月23日のピーク時供給力は5999万kW。今年ピーク時の需要をそれよりも500万kW低い水準で見通しを立てた理由として、「震災による生産減少と顧客の節電協力」を挙げている。

しかし、実はこの供給力には「稼働停止中」または「稼働抑制中」の火力発電所や水力発電所の余力が一部しか含まれていない。原子力の専門家である京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏は、長年の調査研究をもとに、「原発は総発電量の2割程度にすぎないため、原発を停止しても、未使用の火力発電が稼働すれば、そのポテンシャルは3割の余力を残す」と断言している。小出氏に限らず、原発による電力供給が他の電源で代替可能であることを主張する専門家は少なくない。