“経営の神様”稲盛和夫の言葉には、ビジネスで苦闘する人びとへの示唆と激励が感じられる。私たちがつい忘れ、見逃している、人生を前向きにとらえるための真摯な生き方と知恵の数々──。「心」を震わす稲盛の名言を読む。

■われわれの行動の基本は愛情を持ってすることである

愛情というのは盲目の愛であってはならない。“小善は大悪に似たり”と言われる。小善というのは、一見美しく優しく見えるけれども、実は大悪に転じてしまう。善と思うことが実は大悪だった、という例はいくらでもある。大善とは何なのかを見抜く眼力が必要なのだ。愛情を持って行動すべきであるが、その愛情を単純に考えてはいけない。

■よい匂いのする畑は「豊穣」であり、悪い匂いのする畑は「不毛」である

ニューブリテン島(南太平洋)のある未開発部族の村落では「労働は美徳」という考え方があるという。そこでタロイモを作る村人たちは、互いの畑と作物をこのように評価しあうという。労働の結果である畑の作物を立派に仕上げた人は人格を磨いた結果だとして、村人全員からその「人格の高まり」について高く評価される。

■自分の好きな仕事を求めるよりも、与えられた仕事を好きになることから始めよ

最初は与えられた研究だったが、次第にファインセラミックスの魅力に取りつかれ、積極的に研究するようになった体験を語ったもの。

■「不燃性」の人は会社にいらない。勝手に燃えてくれる「自燃性」であってほしい。少なくとも私が近づくと燃える「可燃性」でなければならない

ものには他からエネルギーを受けて燃える可燃性のもの、それでも燃えない不燃性のもの、自分自身で燃える自燃性のものがある。何かをなさんとする人は、自ら燃え上がる自燃性でなければならない。

■頭のいい人には悲観論者が多い

なまじ頭がいいと先が見えて動きが悪くなるので、稲盛は困難な事業にあえて「おっちょこちょい」を起用する。