2050年には世界のGDPに占めるアジアの割合が52%になるとも言われている中、先進国が安定的な成長を遂げていくには、アジア経済の取り込みが欠かせない。こうした状況の中、資源輸出を武器に、特に中国との関係を深めているのがオーストラリアだ。アジア経済の成長の果実をいかに取り込むのか。オーストラリア経済の動向について、ナショナルオーストラリア銀行のグループ・チーフ・エコノミスト、アラン・オスター氏に話を聞いた。
メルボルン、シドニーの不動産を
中国人が積極投資
今、オーストラリアの不動産市場に異変が起きている。メルボルンやシドニーなどオーストラリアの主要都市で、次々と中古のマンションが取り壊され、真新しい新築マンションが続々誕生しているのだ。そのほとんどを中国人が購入しているという。
「国内経済は決していい状況ではありませんが、中国人がオーストラリアの不動産を積極的に購入していることから、建設・住宅・不動産関連事業の景気は比較的好調です。新築マンションの大半を中国人が購入しているのではないでしょうか」とオスター氏は分析する。
これまでオーストラリアの貿易相手国ナンバーワンは日本だったが、2007年以降、中国が追い抜いた。中国の経済発展に伴い、鉄鉱石など資源輸出が増えたからだ。しかも輸出だけでなく、中国からオーストラリアへの輸入や投資も活発に行われている(図表参照)。
「オーストラリアは教育サービス部門では世界でもトップクラスの水準。2011年には42万人以上の留学生が訪れています。中でも中国人の留学生も急増しています」とオスター氏は話す。
かつて「アメリカがくしゃみをすれば日本が風邪をひく」と言われたが、今や「中国がくしゃみをすればオーストラリアが風邪をひく」といっても過言ではないほど、オーストラリア経済は中国によって支えられている。
「国内経済の成長率が思わしくないにもかかわらず、ここ数年、豪ドル高になっているのは、各国の中央銀行が準備通貨として保有を増やしているからでしょう。欧州中央銀行も豪ドルで持つようになったことも大きな一因です。各国の中央銀行としては、米ドルやユーロ、日本円だけでなく、何か経済に異変があった場合のリスク分散として、様々な通貨を保有したいと考えています。こうした状況を考えると、中国経済との関係性が深いオーストラリアは中央銀行にとって注目に値する存在なのではないでしょうか。中国元を保有しなくても、取引のしやすい豪ドルを保有することで、間接的に中国に投資しているような形をとれるからです。このような動きがしばらく続けば、現在の豪ドル水準が続くのではないかと考えます」