まず取りかかりたいのは、現状のカタチの把握だ。ファンクションを優先させるとはいえ、いきなり福島のファンクションはこれだと本質を見抜くのは難しいので、まず対象のカタチを洗い出し、それは「何のため、誰のため」と考えてファンクションを導き出すプロセスをたどる。

福島には、じつにさまざまなカタチがある。風光明媚な山や川、豊富な農産物、東京・仙台・新潟をつなぐ交通の利便性、大小合わせて180カ所ある工業団地。地図やアンケート資料などを参考にしながら、こうしたカタチを分類していくと、環境、文化、生活、経済、社会保障、社会基盤という6つに集約できる。

次にこれらのカタチは何のための手段なのか考える。たとえば「文化」の目的を考えていくと、文化には「歴史を伝える」「絆を強める」といったファンクションがあることがわかる。このとき目的や機能を「○○を~する」と表現すると、ファンクションがより明確になる。

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図2 福島は何のためにあるのか?

こうして浮かび上がってきたファンクションは、FAST(Function Analysis System Techniques)ダイアグラムでツリー状に整理する(図2)。FASTダイアグラムでは左側が目的で、右側が手段の関係になる。たとえば「ビジネス市場をつくる」はそれ自体1つのファンクションだが、「経済を支える」という上位ファンクションから見ると手段になる。

整理ができたら、それらのファンクションを達成する最適なカタチは何か、ここで具体的なプランを考えていく。ここから先は感性の勝負だ。過去の事実の分析には知性が必要だが、未来には事実はなく、感性で未来の理想像を描いていくしかない。

このときに欠かせないのがチーム作業だ。ファンクショナル・アプローチには「チームデザインの原則」があり、複数人で作業を進めていくことを原則としている。とくに未来のカタチを描いていくときは、個人の感性だけだと危うい部分があるが、複数の人が感性をぶつけ合うことで精度が高まっていくはずだ。