2012年、国内の工場立地件数が2年連続で増加し、2008年以来4年ぶりに1000件を超えた。経済産業省「工場立地動向調査」の結果をもとに、現在の立地先選定の傾向や国内に立地することの利点を紹介していく。
関東内陸などを中心に
国内の工場立地が増加へ
リーマンショックとその後の世界的不況、そして超円高などを背景に、日本国内における工場立地件数(1000平方メートル以上)は、2009年に前年比でほぼ半減し、2010年にも減少するという低調ぶりだった。しかし2011年には前年比で約10%増加。2012年には同じく約41%も増え、立地件数は1229件に上った。立地面積の合計についても、前年比で約207%増の3144ヘクタール。2年連続で国内工場立地が増加したわけである。
これらのデータは、経済産業省「平成24年(1~12月)における工場立地動向調査(速報)」に基づく。
なお、工場立地には工場の新設だけでなく移転も含まれている。しかし2011年には立地件数の63%、2012年には同じく約73%が「移転でない立地」、すなわち「自社の既存工場の全部または一部を廃止する計画を伴わない新規立地」だった。こうして国内の生産能力を実質的に拡大する動きが増している、という立地の中身にも注目すべきだろう。
一方、2012年の工場立地件数を都道府県別にみると、(1)北海道(75件)、(2)静岡(73件)、(3)群馬(70件)、(4)兵庫(68件)、(5)栃木(61件)の順。さらに前年比の増減数では、北海道(48件増)に、栃木県、群馬県(各37件増)が続く結果となった。
もう少し広域的な区分で見たほうが、立地傾向はとらえやすい。そこで地域ブロック別に立地件数を見ると、(1)関東内陸(226件、構成比18.4%)、(2)東海(189件、同15.4%)、(3)南東北(111件、同9.0%)の順となり、以上の3ブロックで全体の42.8%に達する。関東内陸は、茨城・栃木・群馬・山梨・長野。東海は、静岡・愛知・岐阜・三重。南東北は、宮城・山形・福島・新潟である。企業が立地先を選んだ理由は後に詳しく紹介するが、最多立地件数の関東内陸は首都圏および隣県だけあって、客観的に見ても多様な条件が平均的に整ったエリアといえる。また、昨今の内陸指向には地震対策の意図もうかがえる。