2008年12月25日(木)

なぜ、クーポン戦略で「ドコモ」と組んだのか:マック式ファイナンス論(4)

地域別価格とIT戦略で躍進する原田泳幸CEOに聞く【交叉比率】

PRESIDENT 2007年10月1日号

ノンフィクション・ライター 野崎稚恵=文 田中靖浩=取材協力 大沢尚芳=撮影 ライヴ・アート=図版作成

「今後は、定価を重視する消費者は減っていくと思う」

原田CEOは、プライスボードの定価の意味は薄れ、近い将来、クーポンで割り引きされた「実勢価格」のほうが主流になる時代が来ると予測する。

「ホットペッパー」「ぐるなびクーポン」などのクーポン需要が増えており、確かにその傾向は強まっているようだ。

マクドナルドでも、現在、紙のクーポンを大量に配布している。新聞の折り込みチラシ等で配布するほか、コーヒー無料券は、全国で数百万枚が配られた。クーポンをどれだけ多く配布したかを競う社内コンテストも開催され、上位入賞者10名には、原田CEO自ら広尾のレストランを借り切り、手作りのキムチチャーハンとけんちん汁を振る舞った。

「クーポン配布の意味は、第一に客数を増やすこと。利用者の中には、『しばらく行ってなかったけど、マクドナルドってこんなにいい店だったっけ?』という感想が多くあった」(原田CEO)

しかし1回につき数千万枚の紙のクーポンを発行するのは時間もコストもかかる。そこで、今年7月、マクドナルドはエヌ・ティ・ティ・ドコモと組み、イーマーケティング会社JVを立ち上げた。

携帯電話を使ったクーポンの電子化で、コスト低減とスピード決済が実現する。

「レジが30秒短縮されれば、売り上げが5%伸びる」(原田CEO)

現在は、350万人を超える会員を擁する「トクするケータイサイト」会員に対し、ケータイメールによるクーポンサービスを実施中だ。

「ウェブでもクーポンを実施しているが、印刷する手間がかかる。こちらは携帯電話さえあれば、クーポン価格で利用できるので、より便利だ」(原田CEO)

クーポンにはもうひとつ、商品を活性化させるという重要な意味がある。商品が効率よく利益を生み出しているかを測る指標に、交叉比率がある。この指標は、たとえば利益率が高くても、商品回転率の低い商品があった場合、クーポンによって利用者が増えれば、回転率が上がる。反対に、利益率が低くても、同様にして商品回転率を爆発的に高めれば、利益は上がり、結果的に交叉比率が高くなる。

たとえば、売れゆきの鈍いフィレオフィッシュの販売を増やしたい場合、クーポン券を発行し、販売数量を増やすことで、商品の回転率を上げる。さらに、新製品で利益率の高いマックフルーリーを買ってもらう可能性もでてくる。そのベストマッチを目指すのだ。

「それ以外にも、顧客の少ない時間帯や、雨など天候条件のよくないときに、店舗ごとに、リアルタイムで特定の顧客にクーポンを送ることも可能となる。いずれはリアルタイムで、購買動向を把握できるようになるはずだ」(原田CEO)

2008年2月からは新会員組織を設立し、「おサイフケータイ」を活用した会員証を発行する。「iD」や「トルカ」を利用したシステム開発も進行中。イーマーケティング戦略から目が離せない。

 

【McDONALD'S DATA FILE(4)】

クーポンの電子化で実勢価格の時代が来る

2004年2月原田CEOの登場後、客数は06年の一時期を除き、伸び続けている。原田CEOの「猛烈に顧客数を増やす施策を徹底し、一貫させる」戦略は成功している。既存店売上高も順調に推移している。ただ問題点は客単価。「500円を切るとまずい」と原田CEOは言っている。

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