10の染みがあれば3つくらいは告白せよ

その点、コメンテーターの中には「富裕層ならこれくらいの額の資金移動は普通だ」という人もいますが、事実は逆です。むしろ富裕層の口座こそ、マネーロンダリング回避のために金融機関は細心の注意を払い、口座管理やチェックを行っています。全然富裕じゃない僕の口座でさえ、普段と異なる外貨収入があった際は、銀行から連絡がきたくらいです。その額わずか5000円……。結局、それはX(旧ツイッター)の収入でしたが、それくらい普段と違うお金の流れはチェックされている。

だから今回、大谷選手の資金流出について金融機関からチェックが入らなかったとすればおかしな話ですし、また、2段階パスワードの運用を含め、すべてを水原氏に任せきりだったとしたら、それはやはり大谷選手自身に甘さがあったと言わざるをえない。

もちろん、そこも含めて水原氏が犯罪的な行為で金融機関などを騙していた可能性はありますが、ただ一点、口座の動きを年に1、2回確認するだけでも今回の事態は防げたはずです。

大谷選手は野球に集中すればいい、お金に頓着しないのが彼らしいという声もありますが、大谷選手ほどの人物になると、自身のお金がマネーロンダリングに使われないか、違法団体の広告塔に使われないかの注意やセルフマネジメントも必要になってきます。

要するに、法的には「シロ」でも、責任者として何らかの落ち度や、管理の甘さが存在していたのであれば、そこは素直に述べたほうが、むしろ信頼度は上がるのではないでしょうか。

「僕自身には法的に非はありませんが、甘さや不注意があったのかもしれません。以後気を付けます」と。

世の中に、一点のミスもない純白の個人や企業など存在しません。誰だってよく目を凝らせば、淡い染みや小さなほころびが存在するもの。会見を指揮する弁護士は「完全否定」「事実無根」を貫きがちですが、メディアやSNSは、1つの染みを発見すればそこを容赦なくついてくる。ならば、10の染みのうち3つくらいは自ら告白したほうがいいんです。

多くの消費者と向き合っている企業や多くのファンに支えられている有名人には特に意識してほしいことですが、何か重大な事態が起きたら、暫定的な段階でもとにかく早く公表する。そして、隠すよりも見せる。それが信頼回復への第一歩になるのです。

(構成=三浦愛美 撮影=的野弘路 写真=時事通信フォト)
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