1998年にデビューした「サンライズ瀬戸・出雲」は日本で唯一の定期夜行列車だ。ブルートレインなど往年の名列車が続々と引退する中、どこまで生き残れるのか。松本典久さんの著書『夜行列車盛衰史』(平凡社新書)より、一部を紹介しよう――。
日本で唯一の定期夜行列車「サンライズ瀬戸・出雲」
筆者撮影
日本で唯一の定期夜行列車「サンライズ瀬戸・出雲」

鉄道車両は20~30年でリニューアル

1990年代に入ってブルートレインが次々と整理されていったのは、必ずしも利用不振といった理由だけではなかった。そこでは車両の老朽化などの問題も抱えていたのだ。

当時のブルートレインの主力となっていた14系客車および24系客車は、車両グループとしては1971(昭和46)年および1973(昭和48)年に誕生したものだ。数年にわたって製造されているが、民営化時点ですでに約20年近く使用されていたのである。

鉄道車両の耐用命数はさまざまな計算方法があり、車種によっても異なるが、新幹線車両では15〜20年、一般車両では20〜30年ぐらいが目安となっている。陳腐的な老朽化の場合、適当なインターバルでリニューアル整備が行われている。個室寝台の導入が進んだのも、多くはこうしたリニューアルのタイミングに合わせていたのだ。

しかし、約20年ともなると物理的な老朽化もあり、大がかりな整備も必要になってくる。そこで新たな経費をかけるより、編成の縮小や列車の削減などで補うという考え方もなされるようになった。

速度の出ない邪魔者扱いされたブルートレイン

また、ブルートレインの運転は機関車が牽引するといった方式だ。機関車を交換すれば電化・非電化にかかわらずどこでも運行できるのが強みではあったが、加減速性能のいい電車や気動車が台頭してくると性能の差がネックとなってくる。加減速性能が違えば列車間隔をあけなければならず、結果として線路容量が減ってしまうのだ。

特に都市部の朝夕は通勤・通学ラッシュで輸送需要が高く、輸送力の減少は大きな問題となる。いくら強力タイプのEF66形であっても電車のように走ることはできず、最高速度は時速110キロ止まり。ブルートレインは邪魔者扱いされるようになっていたのだ。