アプリ自体を無料でダウンロードした後、1週間は無料で使える。気に入ればサブスクリプションを購入する形となる。日本のApp Storeを経由する場合、現時点で料金は週あたり720~1500円だ。適切に生成することさえできれば、証明写真機よりも魅力的な写真を、写真館よりも安価かつ手軽に入手できる。

アプリの説明によると、「顔写真を高解像度化」するほか、ありふれた自撮りを「魅力的なインフルエンサー級のコンテンツに変える」などの機能が備わる。現在までに2万7000件以上のレビューが寄せられており、評価は星4.5と非常に良好だ。アプリは2019年に登場し、昨年になって生成AI機能が追加された。

「人工的な印象」まだまだプロには及ばないとの指摘も

問題もある。正しい写真館でプロが撮影した写真と比較すると、完全に対等な品質とはならない。米金融ニュースメディアのベンジンガは、「AIが生成したヘッドショットは人工的な印象を与える」と指摘する。

記事によると、プロの写真家のあいだで失職する危険性について動揺が広がるなか、AIが職を奪うには至らないとの見立てもあるという。プロの写真家は、被写体とコミュニケーションを取りながらシャッターを切る。人間が介在しないAI顔写真では、「写真家が切り取るような、瞬間の本質を捉えることができない」との批判があるという。

描写の正確性も問題だ。AIは日々進化しているものの、苦手分野が残る。手や指など複雑な形状の描画が求められるものや、歯などの数が決まっていて直線的に並ぶべき物体の生成はまだまだ不得手だ。NPRは、場合によっては第3の腕をはやしたり、耳など細部の描写に矛盾が出たりする場合があると指摘する。

大きな胸に加工される…AIが押し付ける「ゆがんだ美意識」

ほか、AI写真の負の影響は広く指摘されている。より魅力的なスタイルをAIが勝手に追求した結果、望まない性的なアピールが加えられることがある。あるTikTokユーザーの女性は、「LinkedIn用の顔写真が欲しかっただけなのに」と投稿。性的な画像が生成されたと嘆いている。

『tiktok』より
tiktok』より

この女性は、ルーフトップのバーで撮影したカジュアルなショットをAIに読み込ませ、ビジネス向きの顔写真を生成したかったようだ。

だが、AIの出力は驚くべきものだった。裸にジャケットだけを羽織り、タイトなレザーパンツを着用した画像が自動生成されてしまった。はだけた胸元からは、無理矢理合成された豊満なバストがのぞく。まるでフェイクポルノだ。

職業上の交流を広げようとプロフィール画像を生成したはずが、自分の顔でポルノに近い画像が表示されたこの女性のショックは、想像するに余りある。また、AIから「あなたは胸が足りませんので足しました」と言われたような印象すら受けるだろう。