子育て支援を拡充しても子供は増えない

民間の会社で事業計画を立てる際に、何十年も投資しているわりに一向に成果を出さないプロジェクトがあれば、撤退するか計画の見直しを図るのが当然です。間違っても「成果が全然出てないな。ようし! このまま継続だ。しかも予算は倍増だ」とはなりません。そんな社長がいたら経営者失格です。

政府の少子化対策とは、まさにこのダメなプロジェクトをだらだらと続けているようなもので、中身の話よりも「どこから予算を持ってくるか」ばかりに終始しています。

赤ちゃんに絵本を読み聞かせる両親
写真=iStock.com/maroke
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民間の会社と政府とは違うという意見もあるかもしれませんが、政府の支出は元はといえば国民の税金であり、無駄に使ってほしくはないものです。

岸田文雄首相の「異次元の少子化対策」の発言以来、一貫して政府が唱えていることは、「子育て支援の拡充」のみで、基本的にこれらは出生増に寄与しないことは、当連載でも何度も申し上げていることです(〈いま増税するなんて狂気の沙汰である…政府は「若者が結婚しない本当の理由」を分かっていない〉参照)。子育て支援を否定するものではなく、それはそれでやるべきことですが、こと出生数を増やす効果がないことは、これまでの統計を見れば明らかです。

社会保障が充実している北欧は出生率が高いが…

一時期、家族関係社会支出のGDP比倍増の話も世間を賑わせました。「日本の出生率が上がらないのは、フランスや北欧などと比べて、この比率が低過ぎるからだ」というものです。家族関係社会支出とは、公的な社会保障給付の支出額のうち家族関連に含まれるもので、具体的には、児童手当、ひとり親手当、出産・育児休暇手当、保育支援に相当します。

最新の2019年のOECD統計より、対象38カ国の比較をすれば、以下の通りです。

多い順にいえば、スウェーデン3.42%(1位)、デンマーク3.31%(4位)、ノルウェー3.19%(6位)、フィンランド2.89%(8位)、フランス2.71%(10位)に対し、日本は1.73%(28位)と低いことは事実です。ちなみに、出生率世界最下位の韓国は1.37%(32位)です。

こう見ると、やはり出生率が低いのは、この予算が足りないからだと思ってしまいがちですが、残念ながら、この比率を上げれば出生率が上がるという因果はありません。

それをわかりやすく相関図にしたものが図表1になります。2010年から2019年までの10年間の増減にて比較してみましょう。