遺言の内容にかかわらず「遺留分」という最低保障がある

兄弟姉妹(または甥・姪)以外の相続人には、どのような遺言などがあろうが、必ず一定割合の財産を取得できる権利が保障されています。この制度のことを「遺留分」と言います。たとえば、二男に全財産を相続させる旨の遺言を遺して父親が亡くなり、長男・二男の2人が相続人だとします(兄より優れた弟なのでしょうか)。

特定の相続人に全財産を相続させる旨の遺言も有効ですが、このままだと、長男はなにも取得できません。このような場合に、長男を保護するのが遺留分です。

長男の法定相続分は2分の1ですから、その2分の1である4分の1の割合の財産を取得できる権利が長男には保障されています。

【図表1】相続人のパターンごとの遺留分割合と法定相続分
出典=『オタク六法

二男が取得した財産額が1億円だとすれば、長男は、自身の遺留分が侵害を受けているとして、その4分の1である2500万円を支払うよう、二男に対して請求できます。このような請求のことを「遺留分侵害額請求」と言います。

なお、あくまで侵害を受けている遺留分相当額の金銭を請求することしかできないので、特定の財産を引渡すよう請求することはできません。

遺留分侵害額請求は、相続の開始および自分の遺留分を侵害するような贈与・遺贈がなされたことを知ってから1年以内に行う必要があります。また、相続開始から10年経過しても行使できなくなります。

1年以内に「遺留分侵害額請求権を行使する」という意思表示さえすればよく、具体的な金額まで提示する必要はありません。そのため、遺留分の侵害が疑われる場合には、まずはこの意思表示だけはしておいて、後々、財産調査等をしたうえで具体的な金額の請求を行う、ということも一般的に行われます。

【Q5】亡くなった父のフィギュアコレクションに、100万円の価値があると判明しました。しかし父はそのコレクションを友人に遺贈してしまいました。どうにか取り返して現金化したいです。

【A5】まず、コレクションそのものを取り返すことはできません。しかし、コレクションの遺贈により、相続人(兄弟姉妹、甥・姪を除く)に遺留分の侵害が生じている場合には、相続人は、コレクションの受遺者に対して遺留分侵害額請求をすることが可能です。

たとえば、コレクションが故人の全財産であった場合には、各相続人の遺留分が侵害を受けていることは明白ですから、自身の法定相続分の2分の1の割合の金銭を、コレクションの受遺者に対して請求できます。

他方、コレクション以外にも財産が十分にあり、相続人が自身の遺留分割合を超える財産を取得できている場合には、コレクションの受遺者に対しては、残念ながらなにも請求できません。