女性皇族の配偶者の身分をどうするか

ただし女性皇族の配偶者について、皇族の身分を取得するのか、それとも国民のままなのか、その位置付けが気になる。

国民の中の「旧皇族の男系男子」については、「現在の女性皇族の配偶者」になると「皇族」の身分を取得することが明言されている。それとの対比で考えると、「旧皇族の男系男子」“以外”は皇族の身分を取得できず、国民のままというつもりだろう。

しかしそれでは、もともと同じ国民なのに門地もんち(家柄・家格)の違いによって皇族になれるケースとなれないケースに分かれるから、憲法が禁止する「門地による差別」(第14条第1項)に当たる。皇室の方々の場合は第1章(天皇)が優先的に適用されて「門地による差別」禁止の例外であるのに対して、「旧皇族の男系男子」は当たり前ながら“純然たる国民”なので、第3章(国民の権利及び義務)が全面的に適用される。完全にアウトだ。

皇族の配偶者が「国民のまま」の場合に起きる問題

しかも婚姻後も国民のままであれば、同じく第3章が国民に保障するすべての自由と権利は最大限に尊重されなければならない。

その一方で内親王・女王方は天皇のお務めを全面的に代行する「摂政せっしょう」への就任資格を持っておられる(憲法第5条・皇室典範第17条第1項)。天皇の全面的な代行者になる可能性がある女性皇族の配偶者が国民のままという制度は、天皇の「日本国の象徴」「日本国民統合の象徴」としてのお立場を致命的に損なうおそれがあるのではないか。

たとえば「信教の自由」(憲法第20条第1項)。

問題点が分かりやすいようにあえて少し極端な仮定をすれば、内親王・女王方の配偶者やお子様が、反社会的な活動が問題視され、安倍氏暗殺事件の背景ともなった宗教法人「世界平和統一家庭連合(旧・世界基督教統一神霊教会、いわゆる旧統一教会)」の信者になり、熱心に布教活動を進めても、国民であればそれを止めさせることは憲法上、許されない。

あるいは「選挙権・被選挙権」(憲法第15条、最高裁昭和43年[1968年]12月4日大法廷判決、公職選挙法第9条・第10条など)。

これもリミット的な想定をすれば、天皇の代行者になり得る内親王・女王方の配偶者やお子様が政治家を目指し、ついに内閣総理大臣にまで登り詰めることも排除しない制度設計は、果たして天皇・皇室に対して国民が寄せる期待と合致するのか、どうか。

そもそも、憲法の「国政に関する権能を有しない」(第4条第1項)という規定が事実上、空洞化する危険性も否定できない。