好きなことにチャレンジすべき
山歩きでもいいし、釣りでもいい。車やバイクが趣味ならば、仲間とドライブやツーリングに出かけるのもいいし、忙しくてこれまで着手できずにいた部屋の模様替えでもいいでしょう。あるいは、海外赴任の経験があり英語が得意なら、近所の子どもに英会話を教える選択もあるでしょう。地元にUターンして、地域貢献の役割に就くのも後半生にふさわしい生き方の1つです。
前半生で培ってきた経験を活かしつつ、楽しみながら本当に好きなことにじっくりとチャレンジするべきです。決して、世の中に認められるとか、見返りを期待するとかではなく、自分自身の「好きか/嫌いか」に忠実に従うべきです。それでも矩をこえずに生きていけるのが、後半生のありがたさでもあるのです。
因果関係が曖昧だからこそ個性が生まれる
私を例にしますと、好きなことは「温泉旅行」「ゴルフ」「ものまね番組・ドッキリ番組を観ること」「SF小説・物理の本を読む」あたりです。もう少し世の中に役立ちそうなことを、と言われれば、「教えること」です。自分が面白いと思うこと(経営学、思考術、物理)を人に教えることが大好きです。
家族と温泉旅行に行ったり、仲間とゴルフをしたり、ものまねやドッキリ番組を観ている時間は、掛け値なしに楽しいものです。
しかし、「なぜ、好きなの?」とかしこまって聞かれても、ハタと困ります。なぜなら、「ヨガではなく、なぜ温泉なのか?」「お笑い番組ではなく、なぜものまね番組なのか?」を論理的に説明することが自分でも難しいからです。
経営戦略論にも「因果関係の曖昧さ」というものがあり、それは重要な概念の一つです。企業にとって「持続的な競争優位を導く源」とも言われています。具体的には、「改善力」「新事業開発力」「機動力」「組織力」といった力を「なぜ持てるのか?」について、その企業ですらうまく説明できない状況を指します。トヨタ、アマゾン、キーエンスといった組織がこれに当てはまるのですが、本人たちですら説明できないのですから、他社がそれを模倣しようとしても困難であるのは言うまでもありません。だからこそ「模倣困難性」が生じ、競争優位の維持につながるとも解釈されています。要するに因果関係が曖昧なものは、それゆえに企業の個性となり、最も大切にすべきものとなるのです。
人にもそれは当てはまります。個性とは、自分でもなぜそれがそうであるのか理路整然と理由を説明できないものがほとんどです。つまるところ、因果関係がない。言い換えれば他人のものさしで測れないものが、その人自身の“個性”なのです。