2022年に入り、北朝鮮が立て続けに弾道ミサイルを発射している。これを受けて日本国内では「敵基地攻撃能力の保有」が議論されている。ジャーナリストの宮田敦司氏は「日本には移動する弾道ミサイルを発射前に攻撃する能力がない。このため『敵基地攻撃能力』を保有しても、使いようがない」という――。
北朝鮮による弾道ミサイル発射を受け、記者会見する岸信夫防衛相(中央)=2022年1月17日午前、東京都新宿区の防衛省
写真=時事通信フォト
北朝鮮による弾道ミサイル発射を受け、記者会見する岸信夫防衛相(中央)=2022年1月17日午前、東京都新宿区の防衛省

「防衛力の抜本的な強化」を唱える岸防衛相

1月に入ってから北朝鮮が立て続けに弾道ミサイルを発射している。これを受けて岸信夫防衛相は、記者団に「いわゆる敵基地攻撃能力の保有を含め、あらゆる選択肢を検討し、防衛力の抜本的な強化に取り組んでいく」と述べた。以降、「敵基地攻撃能力」保有をめぐって各政党が旗幟をあらわにしている。

「敵基地攻撃能力」とは、弾道ミサイルの発射基地など、敵の基地を直接破壊できる能力をいう。政府の見解では、他に手段がない場合のやむを得ない必要最小限度の措置として、「法理的には自衛の範囲に含まれ可能」としている。

元航空自衛官として筆者が不思議に思うのは、日本の敵基地攻撃能力が発揮される状況についての議論がないこと、そしてそもそも対北朝鮮において敵基地攻撃能力がどれほど意味を成すのかの議論が欠けていることである。