おうちジムやおうちキャンプ、スマホで世界旅行……コロナ禍によって、これまで考えられなかったようなサービスや商品が誕生しています。これらのうち、コロナ後も生き残るサービスの条件とは――。
おうちでパスチモッタナーサナのポーズをとる女性
写真=iStock.com/Solovyova
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「おうち○○」にはマーケティングのヒントがある

こんにちは、桶谷功です。

2020年4月の緊急事態宣言以降、すっかりおなじみになったのが、広告やPOP、記事の見出しなどで使われる「おうち時間」「おうちカフェ」「おうちごはん」など、「おうち○○」という言葉でしょう。

実はこの「おうち○○」という言葉には、商品やサービスのコンセプトをつくるときに使えるセオリーが潜んでいます。

よく見ると「おうち○○」というフレーズには、2パターンがあることにお気づきでしょうか。ひとつめは「おうち時間」「おうちご飯」など、「家にいる時間」「家でとる食事」を今風に言い換えたもの。言い換えることで、ちょっと強調した感じになり、より印象的です。

矛盾のある組み合わせから新しいものが生れる

ふたつめが「矛盾」です。意外な組み合わせと言ってもいいでしょう。「平常時なら家ではやらないことだけれど、コロナの今だから試してみよう」というようなもの。

例えば「おうち外食」。

「外で食べるから外食なのに、おうちで外食って、どういうこと?」

と思いますが、テイクアウトやデリバリーサービスを利用してレストランの味を家で楽しんだり、チェーン店の人気メニューを家で再現したりすることを指すようです。つまり「矛盾」を埋めようとすることで、新しい商品やサービスが生まれるのです。

「おうちキャンプ」というものもあります。「キャンプはアウトドアでするものでしょう。おかしいじゃん」と思いますが、アウトドア業界は「庭やベランダでテントを張ってみよう」「アウトドアウエアを室内着にしてみよう」などと提案している。

実はイノベーションを生み出そうとしたり、強いブランドをつくろうとするときに、最初から矛盾のある組み合わせを考えるのは、われわれマーケターのセオリーのひとつです。

「この矛盾を満たすには、どんな方法があるのか」を頭をひねって考えることで、まったく新しい商品やサービスが生み出される。

いまはそれが自然に次々と生み出されているというすごい状況なのです。