じわじわと広がる「割って飲むお茶」
最近、これまで当たり前と思われてきた「消費鉄則」が崩れてきたのを感じる。
新型コロナウイルスの影響だけではない。以前から日常の消費習慣が変化していたのだ。その中の1つに、「無理なくできる健康志向」がある。
健康志向は昔からあったが、「無理なくできる」が近年の特徴。飲食なら、新たに何かを選ぶ際に従来の品を置き換える——といった行為だ。これが飲料市場にも表れてきた。
例えば、国内飲料市場全体における「無糖飲料製品」構成比は「2018年は約49%」(全国清涼飲料連合会調べ)と、半数が無糖になった。飲料カテゴリーでは近年、無糖の炭酸水が驚異的な伸びを示し、むぎ茶飲料の伸びも著しく、緑茶飲料も手堅い。
それに気づいた企業は新たな提案を打ち出す。
「濃縮系飲料」という市場がある。「原液を割って飲む」もので、国内では乳性・乳酸菌飲料の「カルピス」(2019年7月7日にブランド誕生100年を迎えた)が代表例だ。
この市場に同年4月、「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ」(180グラム缶)で参入したのが、サントリー食品インターナショナル(以下、サントリー食品)。「水とまぜるだけで、やさしい麦茶がすぐできる」という利便性を打ち出した。
なぜ、こうした商品を開発したのか。同社に取材し、消費者意識と合わせて考察した。
水を入れるだけで2リットル分の麦茶ができる
「麦茶のご家庭での飲用量は年々増加傾向にあります。ペットボトルの麦茶と煮出し・水出しの麦茶を併用するご家庭が多く、作るのに手間がかかることも分かりました。そこで昨年『GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ』を発売したのです。この商品は濃縮された麦茶を缶から出し、水とまぜるだけで1~2リットルの麦茶がすぐできます」
サントリー食品の高原令奈氏(ジャパン事業本部 ブランド開発事業部 課長)はこう説明する。同社入社以来、飲料畑一筋に歩み、今回の商品開発でも中心を担った1人だ。
「GREEN DA・KA・RA」ブランドは、「親子を笑顔に」をコンセプトに掲げ、子どもから大人まで幅広い世代に日常生活の水分補給を訴求する。かつてはスポーツ飲料のイメージがあったが、2013年に発売した「やさしい麦茶」のヒットで消費者の印象も変わった。
商品名のとおり“やさしいイメージ”を打ち出し、“すっきり香ばしい味わい”“アレルギー特定原材料等28品目不使用”などを掲げる。発売以来7年連続で売り上げ拡大が続く。