小麦粉の店頭価格は1kgで250円程度だ。これに対し「150gで220円」という割高な少量パックが売れている。2015年に発売された「日清クッキングフラワー」は、販売累計2600万個で、日本家庭の2割に普及する人気商品になった。この商品が生まれた背景を、神戸大学大学院の栗木契教授が解説する――。
アフターコロナのマーケティング課題
緊急事態宣言の解除もはじまり、経済活動や社会生活の再開が広がっていく。しかし以前の日常が、そのまま戻ってくるわけではない。「新しい生活様式」を模索する日々が続く。巣ごもり消費も在宅テレワークと両立させながらとなると、意外に忙しい。
生活の変化と見直しのことを、「生活シフト」と呼ぶとすれば、日常生活を対象とするマーケティングでは、「生活シフト」への対応が非常に重要となる。自社の商品やサービスの見直しを進め、マーケティングを進化させて変化に対応できれば、生活シフトは企業に新たな市場機会を企業もたらすことにもなるだろう。
アフターコロナの日々を想定したマーケティングの知見をいかに獲得していくか。そこでは将来を予測するばかりでなく、過去を振り返るアプローチも無意味になったわけではない。そこで重要なのは、どのように「課題設定」のもとで過去を振り返るかである。
本稿では、事例研究として日清フーズの「日清クッキングフラワー」(以下、クッキングフラワー)を取り上げる。
ここでの課題設定は、「平時においても生活様式は、時間とともに確実にシフトしていた。アフターコロナにおいて生活シフトが加速化すると見込まれるのであれば、平時にあってシフトをとらえ、市場を創造することに成功していた企業のマーケティングのポイントを再検討しておく必要がある」である。