週刊文春による、朝日・産経両新聞社社員と黒川弘務検事長の「賭け麻雀」報道は日本を揺るがした。「権力の監視者を称しながら、癒着に邁進」する、新聞社のジレンマをあぶりだしたが、なぜ新聞社はそんな行動を取るのか。とくに、朝日新聞の誤報問題は記憶に新しいが、なぜ朝日新聞は読者、国民を裏切り続けるのか。新聞業界に詳しいジャーナリストの鳶田真一郎氏が新聞記者の苦悩を解説する――。
賭け麻雀問題で記者は複雑な思い
東京高検の黒川弘務検事長の辞任劇は、報道業界で働く記者たちにも波紋を広げている。週刊文春の報道で明らかになった、黒川氏と新聞記者らとの賭け麻雀問題。新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言下での出来事だけに、世論を意識した与党内も一気に「黒川辞任」に傾いた。
一方、忘れてはならないのは、黒川氏は当時、多くの著名人をはじめとした世論の批判を買った検察官の定年延長問題の渦中の人物。その動向や言動を注視し、国民に広く知らせるべき新聞記者が、飲食どころか、複数回の賭け麻雀に興じていたことに、「その場で聞いた話をなぜ記事にしていないのか」と記者が所属する新聞社への風当たりも強まっている。だが、業界内でも最もハードと言われる司法や警視庁担当の記者クラブに身を置き、対象に「食い込む」ことを至上命題とする記者たちの受け止めは複雑なものだ。