失敗を成功に変えるには、なにが必要なのか。神戸大学大学院の栗木契教授が、マーケティングにおける「失敗→成功」の事例を検証したところ、代表例として浮かび上がったのが日清食品の「10分どん兵衛」だった――。

どん兵衛の売上が前年比1.5倍になったワケ

読者のみなさんは「10分どん兵衛」という言葉をご存じだろうか。

きっかけは、2015年に芸人のマキタスポーツ氏がラジオで、「(カップ麺の)どん兵衛は10分待って食べるとおいしい」と発言し、SNSで話題になったことだった。これまで日清食品がパッケージなどで推奨してきた待ち時間は「5分」であり、それよりおいしい食べ方があったのであれば、食品会社としてはたいへんな失敗である。

日清食品はこの事態にすばやく反応して、「5分でお客様においしさを届けることに縛られすぎていて 世の中の多様性を見抜けていなかったことを深く反省しております」とのお詫び文をホームページに掲載した。SNSでの話題はさらに広がり、「日清のどん兵衛 きつねうどん」の売り上げは前年比1.5倍になった。失敗もうまく使えば、マーケティング上の大きな成果につながる。

画像提供=日清食品

気をつけていても失敗は起こる。だが慌ててはいけない。起きてしまった失敗には、真摯に向き合い、対策を重ねる。そうすれば、その後のマーケティング活動は確実に高度化する。

いやその前に、気を落ち着けて、考えてみるべきことがある。マーケティング活動の組み立てを見直せば、失敗に見えていた活動が別のところで大きな価値を生み出すかもしれないのだ。

失敗とは、何らかの前提のもとでの価値判断である。