人には言えない預金残高、いつの間にか消えていくお金……。ファイナンシャルプランナーの水野綾香さんは「私は『貯められないFP』でした。そのため自分に自信が持てず、自己肯定感がどん底という『暗黒の時期』がありました」と話す。彼女が貯金と自己肯定感を取り戻したシンプルな方法とは――。
ファイナンシャルプランナーの水野綾香さん

どう足掻いても貯まらず。自己嫌悪に陥る

みなさん、貯金は得意でしょうか。

白状すると私は苦手です。もともと「貯められないFP」でした。

「FPとして人様に貯蓄方法や投資のアドバイスをしているにもかかわらず自分自身がまったく貯金できない。そんな自分が許せない」。マネーセミナー講師の仕事が増えはじめた8年前、私はそう悩んでいました。

「先月はだめだったけれど、今月こそはお金を残して貯めよう」。そうやって意気込んではみるものの、時間があれば自己投資をしていろんな人と会いたいという気持ちが先走り、自分の中の小さな決め事を守れずに、挫折をくり返していました。

支出の中心は週5日の外食(交際費)と趣味のビジネス系セミナーへの参加。さらに「なんとなくの購買」も多く、給料日前に通帳をみると「あれ? お金が残ってない?」という残念な生活でした。「自分はなんてダメな人間なんだ」と自己肯定感が下がると同時に、落ち込んだ気分で過ごす日も増えていきました。

改善策として、現金と預金残高を紙に書き出したり、家計簿をつけたり、いろいろと試しましたがそれでも貯めることができません。行き詰まった私は、意外なところにヒントがあることに気づきました。

自己肯定感の低い「暗黒時代」からの脱却

年間60回ほど行うマネーセミナーの中で、「先取り貯蓄をしましょう」と、私自身が参加者のみなさんに声高に訴えていたのです。しかし私は「知っている」だけで「やってみる」ということをしていませんでした。

これからお伝えする話は、先取り貯蓄を取り入れることで、自己肯定感を取り戻し、その後の人生が好転していったという私自身の体験談です。暗黒時代だった当時をあらためて振り返りながらお伝えしていきたいと思います。

新卒で入社した会社で仕事に慣れはじめた20代半ば。「よし、今月から銀行口座に2万円ずつ貯めていこう」と貯金をすることにしました。しかし最初の3、4カ月は貯金できていても、途中で緊張の糸が切れて、コンビニのATMでお金を引き出してしまいます。

私自身セミナーでは、急な病気になったり、リストラされたりしても、ひとまずは生活を維持できるように「1カ月の生活費の3~6カ月分は銀行口座に置いておきましょう」と参加者にはお伝えしていました。いつでもどこでもお金を引き出せるという銀行預金の「流動性」は「元本保証」とならぶメリットです。しかしこの「流動性」が私には向きませんでした。