ここ2~3年、敵対的買収が世間を騒がせたが、その中で独特の「防衛策」を取っているのがカゴメだ。株主構成に早くから着目し、わずか8年で14万人の個人株主を獲得した、その舞台裏とは。
主婦が会場に殺到!ゲストには吉永小百合も
08年11月6日、カゴメ「株主フォーラム」が行われた東京・高輪のホテル会場は、大勢の個人株主で埋め尽くされていた。特に目立つのは、同社株主の約3分の1を占める専業主婦の姿だ。男性が圧倒的に多い一般的な株主総会と違い、会場にもどこか和やかな雰囲気が漂っている。この日は喜岡浩二社長による決算概況説明の後、同社のCMにも出演している女優の吉永小百合さんがサプライズゲストとして登場。会場は大いに沸いた。
その様子を舞台脇から眺め、満足気に頷く1人の男がいた。株主フォーラムの仕掛け人である執行役員財務部長の長井進氏だ。
カゴメは1998年からファン株主づくりに取り組み、その一環として、現在の株主フォーラムの前身である株主懇親会を毎年開催してきた。98年当時、約6500人にすぎなかった株主数は、08年9月に14万人を突破。個人株主構成比率は99.5%に上る。
そもそもなぜ個人株主を増やそうとしたのか。当初経理部長としてプロジェクトを指揮していた長井氏は、狙いを次のように語る。
「ある年の調査で、一般のお客様がカゴメ商品を月平均100円ご購入されるのに対し、株主様は月に1500円という結果が出ました。それだけでもすごいことですが、ファン株主になっていただければ、さらに口コミも期待できます。そこで主婦の方をメーンのターゲットに個人株主のすそ野を広げることにしたのです」
とはいえ、ここまでの道のりはけっして順調ではなかった。ファン株主づくりの最初の施策は、98年の株主総会単独開催だ。いまでこそ単独開催は珍しくないが、当時は総会屋対策として同日開催する企業が圧倒的多数。当然、社内からも反対の声があがった。それを押し切って単独開催に踏み切ったものの、参加株主数は期待していたほど伸びなかった。