山形新幹線の米沢駅から、セゾンファクトリー営業部長の永野川誠氏が運転する車に乗り込んだ。「会社まで約30分です。相当な山中にありますが、驚かないでくださいね」と説明される。
車はどんどん山へ向かい、辺りは一面の銀世界となった。「今年はこれでも、雪が少ないほうなんです。当社の数十メートル先からは、冬季は通行止めになります」と、永野川部長。なんでも、会社には水道がきていないらしい。いったいどんな辺境に会社があるのだろうか。
民家が途絶えてからもしばらく走った後、コンクリート打ちっ放しの洒落た建物が見えてきた。黄色と黒の看板が見える。そう、「シャネルやエルメスを手本にした」というユニークな食品加工メーカー、「セゾンファクトリー」の本社だ。
同社は1989年の創業以来、ジャムやドレッシングなどの食品加工を手がけている。売上高は2006年2月期で約23億円と大きくはないが、取引先は錚々たる顔ぶれだ。百貨店では、大丸、三越、伊勢丹、高島屋など。ホテルではパークハイアット、ザ・リッツカールトン、帝国ホテルなど。黄色と黒のデザインで統一された直営店も全国で運営する。
社名の「セゾンファクトリー」を直訳すると、「季節の工場」。山形県産の果物だけでなく、世界各地の「旬の果物」に手を加えることにより、生で食べても十分おいしい材料を、さらにおいしい状態にして日本中の食卓に届けたい、という意味が込められている。