入会は簡単だけど退会はややこしい
「アッ! 月末までに解約しなきゃいけなかったのにまた忘れた‼」
利用してないから解約しようと思っているのに、月会費が払いっぱなしになっているスポーツジムやサブスクはありませんか?
「最初の1カ月は無料!」の文字につられて登録し、そのまま忘れて翌月から自動引き落としになっている……。そんな、オンラインサービス黎明期に人類が陥りまくった落とし穴。それに何度もハマってきた経験をいかし、今は回避する術〈登録した瞬間に退会しておく〉を駆使できるようになった人も多いのではないでしょうか。
その1人である私もコロナ禍に入会した「オンライン瞑想レッスン」を一度も使用しないまま忘れ去り、半年にわたり月々3980円が引き落とされていました。悲しい。悔しい。
本音を言えば「この2カ月間、利用されていないようですが退会をお忘れではないですか?」とリマインドしてほしい。だけど絶対にしてくれないのが世のルールです。自分で「退会しそびれ」がないか、常に確認するしかありません。
友人や知人も「Adobeの月額利用サービスを使っていないのに払い続けてしまっていた」とか「自分はAmazonプライム会員だった。忘れていたまま3年間、会員費が引き落とされていた」など、結構耳にします。存在自体を忘れてしまっているものもあれば、解約するのを忘れたり、解約手続きが面倒くさくて放置したりしているパターンもあるのではないでしょうか。
「スポーツジムの8割は幽霊会員(会員でありながら、ほとんど施設を利用しない人)で、経営は幽霊会員によって成立している」ともいわれているそうです。
人間のそういった特性を利用するかのように、退会手続きを敢えて複雑で面倒な仕組みにしているサービスが、以前は多かったように思います。
「入会も退会も簡単」な最近のサブスク
しかし最近のNetflix等の動画配信サービスは、「入会金なし。退会も再入会も簡単にできるシステム」になっています。
「観たいドラマがU-NEXTで観終わったから、来月はHuluで別の番組を観よう」と思えば、その場でU-NEXTを退会してHuluに入会して、また翌月にU-NEXTに再入会、などコロコロ変えられます。退会手続きの“引き留め”も激しくありません。「ありがとう。よかったらまた来てね」という雰囲気なので心地良いです。
もし動画配信サービスが「一度入会したら退会するのに解約金がかかる」とか、退会手続きが面倒だったりしたら、ここまで世界的に浸透している現状はなかったのではないでしょうか。
最近はそんな、簡単な「退会手続き」に慣れてしまっているのですが、昔ながらの「高額な退会違約金」で心を揺さぶられるシステムのお店はまだまだあります……。
休会中も気軽に参加できる教室(A)
現在の私は、ヨガ教室(A)に入会しているのですが、このヨガ教室(A)のシステムはまさに今風で、実に良心的です。入会金なし、休会や再開にかかる料金も無料。入会も退会も再開もコース変更もWEB上で気軽に申請できます。Netflixと同じ。
「忙しくて来月は行けなさそうだなー」という時は休会して、またやる気になったら再開できるのです!
スポーツジムによくある「休会している間は月会費の半額を払っていないと退会になり、再開する時にまた入会金が発生する」等のシステムも教室(A)にはありません。
さらに回数券もあるので、休会中の会員や非会員も、「1回だけやりたいな」という時に1回券を買ってヨガができます。お手軽なのがうれしい!
※を多用するホームページには警戒心
1回券は会員料金に比べたら割高だけど、定期的に行けない時にはほんとに助かります。この“会員じゃなくても1回券でできる”サービスをやっているところは、なかなかありません。「一見さんばっかり来ても困る」という、経営上の理由もあるのでしょう。
そんなある日のことです。私は「明日、ヨガがやりたい!」と無性に思いました。
私はいま教室(A)を休会中で、1回券で予約したかったのですが、当日だったため予約がいっぱいで取れませんでした。
そこで、別のお店を検索することにしました。
ヨガなどのお店を探す時、私には気を付けていることがあります。
ホームページのところどころに「※」を多用した小さい文字がビッチリ書いてあるサイトのお店には行かない、ということです。
2年前、某大手ヨガ教室チェーンを退会する際、この「※がついた小さくて色まで薄い文字トラップ」にハマってしまい、退会する時になって「違約金(2万5000円)」があることを知ったのです。当時も、この「※トラップ」が世の中にあることは重々承知していたので、入会する時にその小さい文字を熟読しまくって確認していました。だけど違約金の文字は見つけられなかった。一本とられました。
それ以来、「※」を多用した小さい文字がビッチリ書いてある「某大手ヨガチェーンを彷彿とさせるホームページのお店」には警戒心を持つ人間になってしまいました。
入会説明は隅々まで読み込んだ
ここでちょっと、この「某大手ヨガ教室チェーン」での経験を説明します。
私は14年ほど前にも、某大手ヨガチェーンに入会したことがありました。少し通ってから妊娠したため、行かなくなりました。でも「店頭でないと退会できない」というルールが面倒で、数カ月間“幽霊会員”として在籍したあとで退会したことがありました。
そして2年前、同じチェーンの別の店舗で「3カ月無料コース」で入会しました。入会説明を隅々まで読み込んだところ、「退会は4カ月後にしかできない」と書かれていました。つまり、3カ月間は無料だが、4カ月目の月会費(1万6000円)を払ってからじゃないとやめられない、ということです。
なるほど。「無料」に見せてはいるけど、結局月4000円はいただきますよ、ということだね! わかった、わかった(笑)、そりゃこっちだって全額無料でサービス受けようなんて思ってないよ、それにしても昔よりだいぶ良心価格にしてくれるようになったんだね、ありがとう、しっかり理解できたからね! と、この時は某大手ヨガ教室チェーンと仲良くなれたような多幸感と、利用規約をちゃんと読めるオトナになった自分への誇らしさすら感じたのです。
そして7月、3カ月無料コース入会後の初日。着替えてスタジオに入り、マットに座って、さあこれからヨガ始まるぞという時に、ススーっと先生が寄ってきてラミネートされた紙を見せてきました。「特製ヨガマット&ヨガグッズセット」で「今日買えば10%OFFです」といいますが、1万2000円、2万円、3万円の3種類。高っ。入会金と月会費を払ったばかりなのに、まだ買わせるんかと思いました。そもそも要らないし。
配られたサプリのカプセルに拒否感
さらに先生は「酵素のサプリメントです。すごく体によくって本当にオススメ! 店頭で売ってま〜す」と、瓶から1粒ずつ出して生徒の手のひらに置いていくという方法でカプセルを渡してきました。みんなその場で飲んでいました。私はなんかイヤで、でも素手で触ってしまったので先生に返すこともできず、その場で床に置いて、ヨガが終わったあと拾ってゴミ箱に捨てました。
ワケの分からないカプセルを我が体内に入れることに拒絶感があったのです。それに、ヨガの先生にそんなグッズの営業までやらせるチェーン店の商魂に、哀しみを感じました。そこに抵抗したい気持ちがあって、絶対に飲みたくありませんでした。それがもしも、仲良くなったヨガの先生が家で作ってきたパウンドケーキだったら私は躊躇なく食べます。食い意地がエベレスト級だから。それにしたって、やっぱり手渡しは変じゃないだろうか?
4カ月目にやめようとしたけれど…
その某チェーンのヨガは特殊で、入会後の1回目にやったら脱水症状になってしまい、翌々日まで大変な目に遭いました。これは、そのチェーンのせいではないのですが、「もうやりたくない」と思いました。自分には合っていなかったと思い、退会できる11月まで待ってやめることにしました。つまり、たったの1回に1万6000円を払うことになってしまいましたが、仕方ないと諦めました。
ここのチェーンは、入会はWEB上で簡単にできますが、退会は店に行かないといけないシステムです。入会時に説明を読み込んだ自信があったけど、私が入ったコースには退会違約金(2万5000円)があることをその時に知ったのです。
店頭の受付で「みんな違約金分がもったいないから、違約金が発生しなくなる1年後まで続けますよ」と言われました。1年後? 月会費1万2000円、つまり12万円以上を払うってこと?
けれど、ここで違約金(2万5000円)を払って退会すると、たった1回のヨガに4万円払ったことになります。しかも、脱水症状になりに行ったという……。アホすぎる。
最初はすごく優しく入会を促してくれながらも、違約金のことはハッキリ分かるように明記せず、客側が「きっと私が見落としたんだ」と反省するしかない、巧妙さ。そんなやり方に、もう中年だけど目に涙がにじみ出てくるような悲しさを感じました。「このチェーン店では休会とかもしたくない、いますぐやめたい」と思いました。私はここの経営システムが好きじゃないことを自分でシッカリ思い知ろう。そのためにはキッパリ別れなきゃダメだと思ったのです。
こんな商法の店にはもう入会したくない
来ているお客さんはみんなすごく楽しそうだし、悪い店じゃないと思うけど、私には合っていない。
「違約金払います」と言うと、受付の女性のトーンは目に見えて落ちて、淡々と退会処理を始めました。これ以上空気が悪くなるのが耐えられなかった私は、やたらヘラヘラしながら2万5000円を払いました。
メインの商品(ヨガ)以外のカラクリで1円でも多く金を振り込ませようとする商法のお店にはもう入会したくないと思いました。
そしてその後、私は「入会金なし退会も再入会もWEBで気楽にできるシステム」のヨガ教室(A)に出会ったのです。先生は営業してこずヨガを教えてくれるだけ、受付でカプセルも売ってない。感動しました。
「着いて数秒でクレカ」に嫌な予感が
そして今回です。
教室(A)を休会中の私は、無性に1回だけヨガがやりたくなって、ヨガジム(Z)を見つけました。
ヨガジム(Z)は検索して初めて知ったお店でしたが、近所にあり、入会していない人向けの体験レッスンが1回1000円とのことなので、WEBで予約をとりました。
ジム(Z)に着くと、受付の人に出迎えられてiPad(タブレットPC)を渡されました。
「体験代1000円を払うためにクレジットカード情報を入れてください」とのこと。早い。到着して3秒でクレカ情報の要求。なんだか嫌な予感がしました。
モヤっとしながら途中まで入力したのですが、やっぱりイヤだなーと思って「クレジットカード情報を入れないと体験レッスンが受けられないなら、ちょっと……」と言うと「PayPayでも払えますよ」と言われました。
いろんな支払い方法があるなら最初から言ってくれてもいいのに、まずクレジットカード情報を入力させるってなんなの? 不信に思いながらPayPayで払いました。体験の1000円なんて現金で手渡しでいいじゃん。500円玉2枚でよくないですか?
私の五感が、かつての“某チェーン”風の香りをビンビンに感じ、更衣室に入る前の時点で半分くらい心が閉じました。
スタジオは広くて気持ちがよかったのに!
ところがジム(Z)は、建物は古いものの、スタジオがすごく広くて隣の人たちとの距離も遠く、手を伸ばす時も気にしなくてよくって、窓も大きくて木と空が見えて、すっごく気持ちよくヨガができました。今までいろんなヨガやピラティススタジオに行きましたが、ダントツで1位でした。
私が休会しているヨガ教室(A)はかなり狭く、隣の人とぶつからないように気をつけないといけないのです。それと比べるとジム(Z)のスタジオは相当魅力的でした。入会しようかな……と思いました。ジム(Z)も、ヨガ教室(A)と家から同じくらいの距離だから、通うのになんの問題もありません。
でもなー、システムがなー、某チェーン臭がするんだよなー、と思いながら着替えて帰ろうとすると、受付の人に呼び止められ「入会の説明をするのでここに座ってください」と言われ、「もう1人、体験の人がいるからその人が着替え終わるまで待って」と言います。
高い入会金を設定しておいて「今日なら無料です」
教室(A)はこういう営業トークが一切なく、体験に行った日も「あれっ? 今日体験の人でしたっけ? ありがとう。よかったらまた来てねー!」と手を振ってくれた。だけど(Z)はやっぱり引き留めるんだ……。
さっきまで「(Z)は環境が最高!」と気分がよかったけど、「出会ったそばからいきなり私の金融情報をGETしようとするジム(Z)は、絶対に退会が大変」と確信しました。
思いきって「すみません、今日は入会するつもりがなくて、説明してもらうのは申し訳ないので帰ります」と言うと、受付の女性が「今日入会すれば入会金無料ですけど⁈」と言いながら見せてきた紙を見ると「入会金3万5000円」と書いてありました。高すぎだろ!
「はい、今日は入会はするつもりなかったので、今度にします」とヘラヘラ言ったら、受付の人は、「ハイハイ!」とイラついた感じの言葉を向けてきて、私はその言葉を背中で吸収して帰りました。不快にはなりませんでした。私がこの店の決まりに従わないのが悪いし。
だけど「高額な入会金を自分で設定しておいて『今日ならこれが無料』と言って入会させようとするシステム」って、もう古くないですか?
(Z)を体験してわかった(A)のすばらしさ
教室(A)は個人でやっているお店のようですが、そのお気楽システムのおかげか、店舗が増えるらしいです。最近はもう、みんなそういうシステムのほうに行っているんじゃないかと思います。実際行きやすいし。
教室(A)に通っている人が、たまたまジム(Z)に行くって、(Z)にとってはチャンスですよね。
そんなふうにフラリと来た人に「今日この場で入会しないと、次は3万5000円かかりますよ」って言ってしまったら、その人は金輪際(Z)には来なくなると思います。いくら(Z)のスタジオが気に入ってそこでヨガをしたくても、もう行きたいとは思わなくなります。
3万5000円を払って入会する人もいるかもしれないけれど、おそらく(Z)はその入会金が欲しいわけじゃなくて、定期的に会員費を払ってくれる人を増やしたいんじゃないだろうかと思います。
私はジム(Z)が教室(A)と同じ“お気楽システム”だったら入っていたと思います。スタジオが最高だったから。
帰宅してから、教室(A)の休会を中止して、会員再開手続きをWEBでしました。ひさびさにヨガをやって、やっぱり定期的にやりたくなったので!