品川エリアといえば、どちらかといえば、通勤の乗換え駅といったイメージが強く、そこに通う街、住む街としての人気はさほど高くなかった。住宅ジャーナリストの山下和之さんは「最近は周辺の大規模再開発、各種エキナカ施設の充実などで注目度が高まっている。今後は2030年代に向けてさらなる変貌を遂げることが期待されている」という――。
ビルが林立する品川駅周辺
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品川は多くの人たちが通いたくなる、住みたくなる街に変化

1998年、旧国鉄品川駅東口貨物ヤード跡地に大規模な複合ビル群の「品川インターシティ」が誕生。2003年には東海道新幹線の品川駅が開業し、2004年にはアトレ品川、2005年にはエキュート品川などの商業・飲食施設が相次いでオープン、品川エリアはオフィスビルやタワーマンションを中心とする超高層ビル街に発展した。

それまでの品川駅は、山手線の主要ターミナル駅のなかでも、新宿駅、渋谷駅、池袋駅などに比べてどちらかといえばマイナーなイメージが強かったが、「東京の南の玄関口」として急速に変貌、進化を遂げた。多くの人たちが通いたくなる、住みたくなる街に変化してきたといっていいだろう。

しかし、それはこれから始まるさらなる発展への前奏曲に過ぎなかったのかもしれない。2030年代にはリニア中央新幹線の始発駅としての品川駅が開業し、東京メトロ南北線の延伸による品川駅も新たに開業、日本中だけではなく、海外からも注目度が高まるのは間違いない。

「東京の南の玄関口」から「次代の東京の玄関口」に

隣接しているJR山手線の高輪ゲートウェイ駅周辺では、「100年先の心豊かなくらしのための実験場」として新たな街づくりが行われており、品川エリアとの相乗効果も期待されている。

東京の「東京の南の玄関口」としてではなく、「次代の東京の玄関口」として東京の正面玄関となり、もう一段の発展が見込まれている。それに合わせて、周辺ではタワーマンショの開発計画が相次いでいるので、居住地としても注目度が高まるのではないだろうか。

【図表】品川からの距離と時間
筆者作成

東名阪が1時間強で結ばれ大都市圏に

品川エリアの大変身のキッカケになるのが、2030年代に予想される2つの交通機関の品川駅の開業だ。

第一が、リニア中央新幹線。東京、名古屋、大阪を最速600kmを超えるスピードで結び、わが国を代表する首都圏、中京圏、関西圏の三つの都市圏がひとつの一大都市圏として機能するようになる。

開業すれば、東京から名古屋までが40分、大阪までが67分で結ばれる。東京圏でいえば、東京駅から大船駅までがおよそ40分、横須賀駅が70分ほどだから、大阪も十分に通勤圏に入ってくる。

この3大都市圏の人口は6000万人を超え、GDPは320兆円超に達する。先進国でいえば、フランス一国に匹敵する巨大な経済圏が誕生することになるわけだ。品川駅はその始発駅だから、東海道新幹線の品川駅開業とは比べ物にならないインパクトになるはずだ。

もっとも、リニア中央新幹線は当初2027年の開業を目指して工事がスタートしたものの、当時の静岡県の県知事の反対によって工事が頓挫し、開業はかなり遅れそうな見込み。それでも、県知事が交代し、2024年7月、当時の岸田首相が「大都市圏を結ぶ新たな交通網の早期構築は重要、早ければ2037年の全面開業を想定し、必要な支援を行っていく」と発言、早期開業への機運が高まっている。大阪までが2037年とすれば、名古屋までは2030年代の前半、遅くとも半ばには開業を期待できるのではないだろうか。

東京メトロ南北線の延伸で六本木、赤坂へのアクセスが改善

いまひとつが、東京メトロ南北線の品川駅への延伸計画だ。

意外かもしれないが、品川駅にはJR山手線をはじめとする在来線の各線、東海道新幹線、京急本線が乗り入れているが、地下鉄の乗り入れはない。京急本線には都営地下鉄浅草線が相互乗り入れしているものの、純粋な地下鉄は通っていないのだ。浅草線も山手線の外側を走っていて、品川駅から六本木、赤坂など山手線内側の都心部へのアクセスはあまりよくない。品川駅から新橋駅や目黒駅などに出て、地下鉄に乗り換える必要がある。都心部につながる地下鉄がない点が、どちらかといえばマイナーなイメージにつながっていた一因かもしれない。

それが、東京メトロ南北線を延伸、白金高輪駅で分岐して品川駅に直結するようになる。すでに東京都の認可が下り、2024年11月から工事が始まっていて、2030年代の半ばの開業を目指している。

現状では品川駅から六本木一丁目駅までは、目黒駅で南北線に乗り換えて20分ほどかかるのが、南北線が品川駅に乗り入れれば、品川駅から六本木一丁目駅まで直結、10分弱に短縮される。乗換えが必要なくなる分、実際の時間は20分、30分と短くなって、精神的な負担も軽減されるのではないだろうか。同時に山手線の混雑緩和にも貢献するはずだ。

六本木交差点
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品川駅はリニア中央新幹線の始発駅になり、周辺での再開発に拍車がかかり、国際競争力の強化が進む。さらに東京メトロ南北線の延伸で都心部へのアクセス、利便性が向上し、エリアへの企業立地、商業・サービス業の店舗が増加し、タワーマンションなどによって居住者が増えることが期待される。まさに、「次代の東京の玄関口」へ進化するわけだ。

品川エリアでは15年ぶりの30階建て以上のマンション

こうした変化を見込んで、品川エリアでは、タワーマンションなどのマンション開発が盛んになっている。エリアの人気が一段と高まれば、資産価値の上昇も期待できるので、開発が計画されている物件をチェックしておきたいところ。2025年春から販売が予定されている物件としては、次のような物件を挙げることができる。

まず、日鉄興和不動産などの「リビオタワー品川」。日鉄興和不動産は、品川インターシティに、大型ビルを開発するなど、品川は同社にとって思い入れの強いエリアであり、「リビオタワー品川」をリビオシリーズのマンションのフラッグシップと位置づけ、ひとかたならない力を入れている。2024年夏から秋にかけて、同社のイメージキャラクターである俳優の横浜流星さんによるコマーシャルがテレビやネットを賑わしたのをご記憶の方もいらっしゃるのではないだろうか。

マンションが建つのは、東京都港区港南三丁目で、品川駅までの徒歩時間は13分となっている。建物は鉄筋コンクリート造の地上34階建て、総戸数は815戸の大規模タワーマンションだ。

日鉄不動産によると、品川エリアで30階建て以上のタワーマンションが供給されるのは、実に15年ぶりのことであり、それだけ希少性の高い物件ということができる。

免震装置を組み込み、防災面の備えも徹底

徒歩時間はやや長めになっているが、駅前、駅近での開発はほとんど終っているので、多少駅からの距離が遠くなるのは仕方のないところだし、品川駅にはさまざまな商業施設が揃っていて、利便性は極めて高いので不便を感じることはないのではないだろうか。

しかも、JR山手線高輪ゲートウェイ駅も徒歩13分だから、両駅のほぼ中間に建つことになる。先に触れたように高輪ゲートウェイ駅周辺では、オフィス、ホテル、商業施設、文化施設、住宅などの複合開発が進められており、2025年度にはまちびらきが予定されている。「リビオタワー品川」は品川エリアの発展性だけではなく、高輪エリアの発展性をも享受できる恵まれた環境にあるといっていいだろう。

湾岸部に位置するため、防災面での不安を感じる人もいるかもしれないが、免震装置が組み込まれているので、揺れに強く、各階に防災倉庫を完備し、48時間非常用自家発電を備えているので、万一のときにも安心できそうだ。

三井不動産のハイグレードマンションも

不動産業界最大手で、パークマンションシリーズで知られる三井不動産レジデンシャルが開発しているのが、「パークタワー品川天王洲」だ。

所在地は東京都品川区品川二丁目で、最寄り駅は東京臨海高速鉄道(りんかい線)の天王洲アイル駅と東京モノレールの天王洲アイル駅の徒歩4分だが、品川駅も徒歩15分となっている。品川駅からはやや遠くなるが、天王洲アイル駅には、各種の商業施設、金融機関などが揃っているし、健康のためにも品川駅まで歩けば、周辺の商業施設や駅なか施設などを利用できるので、生活面での不便はないだろう。

建物は、鉄筋コンクリート造の地上34階建てで、総戸数は275戸の大規模マンションだ。

三井不動産レジデンシャルの「パークタワー」シリーズは、最上級ブランドである「パークマンション」に次ぐハイグレードマンションと位置づけられており、外観デザイン、仕様・設備などはハイスペックなものが用意され、その分価格はやや高くなりそうだが、将来的な資産価値の上昇が期待できる魅力的な物件といっていいだろう。

タワーマンションにひけをとらない共用施設

いまひとつが「ブランズシティ品川ルネ キャナル」。階数は19階で、20階建て以上をタワーマンションとすれば、厳密にはタワーマンションとはいえないものの、共用施設の充実ぶりはタワーマンションにひけをとらないラインアップとなっている。

たとえば1階にランドリー&カフェ、バー&カフェテリア、2階にゲストルーム、パーティルーム、3階に多目的スタジオ、バー&カフェテリア、ワークラウンジなどが設置される予定で、超大規模マンションにもひけを取らないラインアップといっていいだろう。

名称のブランズシティは東急不動産、ルネは総合地所のマンションブランド名で、最後のキャナルは「運河」「水路」などを意味する英語。水辺での生活を味わえる、総合地所と東急不動産が開発したマンションということになる。

アドレスは東京都港区港南四丁目で、最寄り駅は東京モノレールの天王洲アイル駅が徒歩6分で、りんかい線の天王洲アイル駅が徒歩9分、そして品川駅が徒歩14分となっている。

建物は鉄筋コンクリート造の19階建てで、総戸数は233戸だ。

品川は多額のローンを背負ってでも買うべきエリアか

品川駅エリアは、リニア中央新幹線、東京メトロ南北線の延伸計画もあって、2030年代にはもう一段の発展が期待され、マンションの資産価値も高まる可能性が高い。2025年の春からの販売開始なので、販売価格は公表されていないものの、簡単には手を出しにくい高額価格帯になりそうだが、夫婦ペアローンを組んだり、親に協力してもらったりしていまのうちに買っておけば、5年後、10年後には資産価値が大幅にアップするかもしれない。

それなりのローンを背負ってでも買うだけの魅力のあるエリアといっていいのではないだろうか。