※本稿は、よしたに『大人ぼっちマニュアル』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
すぐに人に頼る人がお金で失敗する
「お金を稼ぐのは使うためでしょう? 足りなければ稼げばいい、無駄なお金を使ったなら節約すればいいだけ。貯めこむことばかり大事にしたら、気持ちよく使えなくなるよ。節約しすぎるとその分仕事も小さくなります」
きっぷの良い話し方で、面白くわかりやすくお金の問題についてお話ししてくださった山崎先生。お金との付き合い方を通して常に人生を前向きに楽しむ、「守り」より「攻め」の姿勢について我々に教えてくださいました。
「投資って何となく難しそう……」と二の足を踏んで、貯めたお金を銀行に置いて塩漬けにしたままという40代の方、結構いると思います。そもそもお金の話って、やたらと難しい印象があると思いませんか。そんな不安や思い込みも山崎先生にかかると、すべてシンプルに明解に解きほぐされていくから不思議です。
将来が不安でお金を持っている人は「カモ」である
「(投資は)運が良い年なら4割もうかる、運が悪ければ3割削られる、そういう賭けだと納得できる人はやってみたらいいですよ。億劫だからやってないだけなら、金融会社で積立などから始めたらいい。リスクを取る行為だから絶対やったほうがいいとは言えないけど、せっかく稼いだお金を有利な場所に置いておかないのはもったいないかもしれないですね」
山崎先生によると、そもそも資本主義とは「リスクを取っても平気な人が、リスクを取りたくない人から利益を『ピンハネ』する仕組み」のことだそう。若い社員が月給25万円をもらっているなら、会社は当然それ以上の利益を得ているはず。会社で働くことを決めた以上、その「カモ」状態からキャリアを始めるのは仕方ないことだけど、長い人生で少しでもカモでなくなる方向に向かうべきではないかというのが先生の持論です。なるほどなぁと思いますよね。
儲け話よりも先に考えるべきこと
つかわないお金があるならすべきこと
本編でおっしゃっているとおり、先生のオススメ投資先は「オルカン」一択。また、よく耳にする「日本経済は成長が見込めないからドル預金を持ちましょう」という話には否定的でした。
「日本と比べて他国の政府がどれだけ信用できるかなんてわかりませんし、今の円安がずっと続くわけじゃありません。日本にも十分チャンスはあります。つまりは海外のチャンスにもアクセスできる状態でありさえすればいいんです。(オルカン投資を通して)お金は世界に分散させつつ、自分は自分でチャンスを探すという姿勢が大事です」
そして一旦預け先を決めたなら、お金のことで心や時間を支配されすぎないことも大切。「人生には他にもやることがたくさんあるのだから」とおっしゃっていました。投資におけるピークがいつまで保たれるか、いつから崩れるかなんてプロでもなかなか判断できない。だからこそ、わかりやすく、あまり不利にならない場所に運用を任せたら、仕事や趣味などに集中できる時間をしっかり持つ。それが人生を豊かにするお金との付き合い方なんだと思いました。
「僕はね、大学の講義でいつも『リボ払いで買い物をするような恋人とは結婚するな』って話すんですよ」
山崎先生のお話を伺っていると、お金とは、我々の普段の生活に深く組み込まれているものであり、必要以上に恐れるものでも崇めるものでもなく、適度な距離をもって付き合うべきものだということがよくわかります。お金は自分を評価する物差しではないのだから、仕事や人生がうまくいかないときに「お金で何とかしようとする、何かしないといけないと焦ることはやめましょう」という言葉が印象的でした。
2024年元日に山崎先生は65歳でお亡くなりになりました。その20日前に原稿の校正をお願いした際、青いボールペンの力強い文字で「よくまとまっています!」とメッセージを書いて戻してくださって、担当者とともに喜んだことが心に残っています。心よりご冥福をお祈り申し上げます。