※本稿は、プチプチ文化研究所『プチプチ® なぜつぶされることを防ぐために生まれた気泡シートは指でつぶされるようになったのか』(マイナビ出版)の一部を再編集したものです。
破裂音3倍…つぶす専用「プッチンスカット」誕生秘話
【杉山(以後 杉)】みなさんに暮らしの中で使っていただいている「プチプチ」。
この「プチプチ」という言葉は、川上産業(株)の登録商標なんですよ。
【高橋(以後 高)】僕は17年前に人が何気なく指でつぶしてしまう性質にフォーカスして「∞プチプチ」というおもちゃを作りましたが、そのときに、なぜ人はプチプチをつぶしてしまうのかをいろいろと調べ始め、『プチプチOFFICIAL BOOK』に出会ったんです。
【杉】プチプチのおもちゃを作りたいとご連絡をいただいたときのことをよく覚えています。前回のその本は2006年に発売されたので、2007年の1月に連絡をいただいたというタイミングに運命を感じますね。
【高】そのときの本を読んでまず「こんなのあったんだ!」と驚いたのが、「プッチンスカット」ですね。指でつぶす専用に作られたプチプチシートって、壊れやすいものを包むという役割に対してバグってますよね。
【杉】最初は一般的なプチプチを手のひらサイズに切って10枚セットで売り出しました。ありがたいことに、テレビ番組などで取り上げていただき、じわじわ人気が出たので、つぶす専用グレードを開発し、通常のプチプチより音が3倍も大きな今の形になりました。
1万個に1個の「ハートのプチ」を見つけられるか
【高】1万個に1個、ハートのプチがあるっていうのも、プチプチの歴史にとって重大なアイデアですよね。
【杉】2001年からやっているんですが、もともとのアイデアは四葉のクローバー。出会うとちょっと嬉しいよね、という感覚から、「プチプチにも入れちゃう?」という当時の社長のノリのよいアイデアで始まりました。
プチプチって大きい穴がポコポコ空いた成形ロールで作るのですが、そのうちのひとつをハート型に変えているんです。
そして数カ月かに1度、その場所を変えているんですよ。
広がるプチプチの可能性
【高】プチプチってまだまだいろんな可能性を秘めていますよね。
【杉】晋平さんのように、プチプチに興味を持ってくれる方が増えて、プチプチを素材に、さまざまな表現をしてプチプチの可能性を広げてくれています。例えば、アーティストの明和電機さんは、子ども向けの舞台でプチプチを使った楽器で演奏をしてくださいました。
また、デザイナーの津村耕佑さんには、プチプチタングルというパズルのようなものを開発いただき、アートイベントを一緒に行ったこともあります。
【高】企業とのコラボも多いですよね?
【杉】Googleでは、エイプリルフールにネタ動画を作られていて、2017年には、プチプチをキーボードに見立てて、プチプチで入力するという、おもしろい動画を作成していただきました。
ほかにも、トヨタ自動車の自然共生の取り組みについて広める目的で制作された6万粒のプチプチアートでは、プチプチのおもしろさを再発見できました。
好きな大きさにスパスパ切れる「スパスパ」
【高】僕もプチプチ文化研究所のメンバーとして、いろいろとお手伝いをしたこともありますが、初めに「スパスパ」の構想を聞いたときには本当に感動しましたね。それまで全く気づいていなかったけど、プチプチって僕みたいな不器用でズボラな性格だと、ハサミで切るときに曲がってしまい、なかなかきれいに切れないんですよね。
あと、必要なサイズに対して大きく切ってしまったり、反対に足りなかったり。それが当たり前で、今まで疑問にも思っていなかったんですが、四角い形の「スパスパ」ができたことで、解決されて、包むのにも無駄がない。僕は今、仕事の製品梱包にスパスパばかり使っています。
【杉】晋平さんには、「プチプチ自動販売機」のリニューアルでもお手伝いいただきましたね。プチプチの自動販売機は群馬県高崎市にある工場と愛知県にある旧名古屋本社の2カ所に設置されています。高崎工場は、プチプチを作っていないのですが、直売所のようなイメージで設置したのがきっかけで、近隣の方がプチプチを買いに来られるようになっています。
【高】デザインを依頼されて、周囲の風景に対する見た目の目立ち方を重視しつつ、ゲーム性をもたせたおもしろいものにしたいと思ったんです。自販機って、当たりつきとかあるし。なので今回は、買うと謎解きクイズがプチプチに一問ついてきて、全問解いて最後のキーワードをWebから送るとプレゼントがもらえる仕掛けをつけました。
被災地で活躍
【高】プチプチは保温力にも優れていますよね。会社員時代、仕事で徹夜中にくるまったことがあって、冬でもけっこう暖かかったです。
【杉】プチプチは体に巻くと温かいのでレジャーに持っていくのもおすすめ。さらに、防災にも役立つんです。例えば、被災して体育館などで過ごすとき、床にプチプチを敷いてもいいし、布団代わりにしても。くるくる丸めれば、枕代わりにもなります。かぶってポンチョにすればぬれるのも防げるんです。
【高】実際に地震などの被災地でも使われているんですよね。
【杉】はい、2004年の新潟県中越地震を機に、災害時にはプチプチを提供するようになり、2024年の能登半島地震の際にも、プチプチを寄付し、避難所で活用いただきました。
閉じ込められた鉱山作業員に「プッチンスカット」を提供
【杉】また2010年にチリで落盤事故があり、33名の鉱山作業員が閉じ込められるということがありました。その際に、プチプチを贈ったことがあります。その際は物資を届ける穴のスペースを考慮してプッチンスカットをお届けし、プチプチをつぶしてストレス緩和になったと、喜んでもらえました。
【高】あのときは本当にすごい動きだと思いました! 素晴らしい贈り物でした。
【杉】プチプチは環境問題にも積極的に取り組んでいます。卵の殻を使った「たまぷち」を開発したり、使い終わったプチプチを回収する活動も行っています。
【高】最後にどうしてもこれだけは外せないエピソード。プチプチの野立看板ですよね! 神奈川県に新幹線から見えるプチプチの野立看板があると。これも前回の本で知って、彩香さんにだいたいの場所を聞いて出張のときにスマホで調べながら、見やすい座席の位置を確認して待ち構えていたんですよ。「そろそろだ……」と思ってトンネルを抜けたら連写しようと構えていたら、3つ野立看板が視界に入ってきました。「きた!」と思って連写したら、プチプチの看板がないんですよ。あれ? と思って彩香さんに連絡したら、その数日前に台風で飛んだって……(笑)。
【杉】そんなわけで、ぜひ本書(『プチプチ®』)を読んでプチプチの世界に浸ってくださいね。