住みやすい部屋にするための家具選び
新年が近づき、春から新生活が始まるなど、家具の購入を検討している方も多いのではないでしょうか。しかし家具は買って部屋に置けばよいという単純なものではありません。なぜなら部屋には6畳や8畳といった広さや窓や扉の位置・空調などといった物理的な制約以外にも、この部屋で何をしたいか、誰とどのように使いたいかなどライフスタイルと密接に関係しているからです。
快適で住みやすい部屋にするにはこれらの条件をよく考えて家具を購入・レイアウトしないと、後悔する結果につながってしまいます。そこで、今回は模様替えのご相談にいらっしゃる方の中から、後悔した家具・買い替えたい家具で、とくに多かったもの3つについてご紹介したいと思います。
3位・テーブル
「デザインがかわいくて円形テーブルを購入したが、意外と大きく置き場所に困った」(兵庫県 40代女性 会社員)
「テーブル面が狭く使いづらい」(東京都 50代女性 会社員)
家具を購入してから後悔することが多いものの一つにテーブルがあります。「部屋に対して大きすぎた」「家族で使うには小さすぎた」など大きさに関するもののほかにデザインや仕様についての後悔も多くなっています。
狭い部屋に円形テーブルは要注意
なかでも多いものが、円形テーブル。デザインに丸みがあり部屋がやさしい雰囲気になることや、角がないためお子様にも安心などのメリットがありますが、直線部分がないため壁などに寄せてレイアウトすることはできません。
そのため上の図表1のようにおなじ4人掛けテーブルで比べた場合、スペースをとるため狭い部屋で使用すると窮屈になったりレイアウトできない場合もあります。
またテーブル面積も角の部分がないため図表2のように、まったく同じサイズの長方形テーブルと比較して小さくなります。そのため有効面積が狭くあまり食器が置けません。また仕事など作業をする場合はテーブル面の角にひじを置くことができないため、書き物やマウス操作などの作業がしにくかったり、腕が疲れるなどのデメリットも発生します。
脚が中央にあるタイプはひっくり返るリスクが高い
そのほか円形テーブルの中でもデザイン的に脚が中央にあるタイプは、4本脚タイプの円形テーブルよりバランスが悪く、天板のはしに力をかけたときひっくり返る可能性もあります。
このような点から円形テーブルはデザインをインテリアのアクセントにしたい場合にはおすすめですが、スペースに余裕がなかったり、仕事や勉強で使う場合にはやめておいた方がよいでしょう。
機能的に見える伸縮式テーブルだが……
「来客時を考えて伸縮できるテーブルを購入したが、結局伸ばしっぱなしで伸縮部にゴミがたまり掃除機で掃除している」(東京都 40代女性 主婦)
「伸縮する部分が壊れた」(埼玉県 40代女性 会社員)
そのほか伸縮式のテーブルも後悔する方が多いテーブルの一つです。伸縮式テーブルとは「エクステンションテーブル」とも呼ばれ、来客時など人が多く集まるときなどシチュエーションに合わせて、テーブルのサイズを変更できるものです。
しかしこの伸縮式テーブル、普段は4人掛けで使い、来客時などのシチュエーションに合わせてテーブルを伸ばす予定で購入したのに、伸ばしっぱなしにして使用するご家庭が大変多いのです。なぜならテーブルが大きいと、ティッシュケースや文房具・雑誌など何でもテーブルに置いておけるため大変便利だからです。
伸縮部分にデメリットあり
ですが伸縮式テーブルは一般的なテーブルと違い、伸縮する部分に溝やヒンジなどの金物があるので「ゴミがたまる」「ヒンジが壊れやすい」「伸縮した部分が不安定」などのデメリットがあります。であれば初めから6人掛けの大きめテーブルを購入すればよかったと後悔する方がたいへん多いのです。
このような点から伸縮式テーブルは、スペースがない部屋や1~2人で使用する場合はおすすめですが、スペースに比較的余裕がある場合や4人以上で使う場合は大きめのテーブルを購入した方がよいでしょう。
2位・ソファ
「横幅は大きいのに思ったほど座れない」(神奈川県 30代男性 会社員)
「奥行きがありすぎて腰をつけると床から足が浮く」(大阪府 50代女性 会社員)
テーブル以外に後悔することが多いものにソファがあります。とくにソファは「ショールームで見たときはそれほど大きさを感じなかったのに、家に置いたら大きすぎた」など大きさに関する後悔が多くなっています。
そのほかにもソファはデザインや仕様についての後悔も多くなっています。ソファはそのデザインから、ひじ掛けがあるタイプ(図表3)とひじ掛けがないタイプ(図表4)があります。ゆったりくつろぐにはひじ掛けがあったほうが、身体もあずけられるので良いのですが、ひじが大きすぎると反対に座る面積が狭くなってしまいます。そのため場所をとる割には「窮屈」「家族で座れない」などの後悔が生まれます。例えば同じ幅140センチの2人掛けソファを比べてみた場合、ひじ掛けのないソファは2人でゆったり座れますが、ひじ掛けがあるソファの場合座面の幅が108センチ程度になり2人ではゆったりと座れません。
奥行きが深いソファは足が疲れやすい
このような点からひじ掛けのあるタイプのソファを検討する場合は、全体の大きさ以外に、家族何人で座れるか、座ったときに窮屈でないかなどについてもショールームで確認しておきましょう。
そのほかソファの奥行きが深すぎるのも後悔のもと。奥行きが深すぎると、ソファに深く腰掛けたときに、とくに身長の低い女性などは足裏が床から浮いてしまうのです。足裏が床から離れていると足がぶらぶらするため、疲れやすく落ち着かなくなります。
そこで足裏を床につけるように座るためにはソファのはしのほうで座ることになり、腰を痛めたりゆったりくつろげないなどの後悔につながります。このように奥行きが90センチ以上あるソファや外国製のソファを購入したい場合は、必ず座り心地を確かめると同時に、深く腰掛けたときに足裏が床につくかどうか確認してみましょう。
1位・収納家具
「ケチって買ったキッチンの食器棚が思ったほど収納できない」(大阪府 40代女性 会社員)
「食器棚がリビングから丸見えで、見栄えが悪い」(東京都 30代女性 主婦)
後悔する家具でもっとも多いものが収納家具。とくにキッチンに置く食器棚も後悔することが多い家具の一つです。本来、食器棚など収納量が多い大きめの収納家具は、地震時の転倒や食器の飛び出しを考えると壁に固定されている作り付け家具がおすすめです。
しかし作り付け家具は比較的高価なため、市販の家具を購入するご家庭が多くなります。そこで注意したいのが高さ。一般的な設計の場合、キッチンの天井高さがマンションの場合2.2メートル程度、戸建てで2.4メートル程度です。市販の食器棚の高さが1.8メートル程度ですのでこれを設置した場合、40~60センチほど食器棚上部にオープンスペースができてしまいます。オープンスペースがあるということは、そこに紙袋やストック品などを手軽に置いてしまいやすく、ホコリがたまりやすい不衛生な環境をつくってしまいます。
食器棚は作り付けがおすすめ
また横幅にもよりますが高さ1.8メートル程度の食器棚では収納量も少ないため、例えばお正月用の食器や夏のガラス食器など使用頻度が低めでも、1年のうちで必要となる食器を入れておく場所が足りなくなります。
そのほかにもオープンキッチンの間取りの場合、リビングダイニングからキッチンが丸見えになるため、天井まで高さがない収納はあまりかっこいいものではありません。デザイン・収納量や衛生面・地震などの安全面から見ても、食器棚は天井まである作り付け家具をお勧めいたします。もしあまり背が高い家具は好きでない場合は、天井を一部下げたり幕板を張るなどの方法もあります。
小さい収納家具を安易に買わない
「いつの間にか増えていった収納ラックがいっぱいあるが結局片付かない」(東京都 30代女性 会社員)
「片付いてはいるが、雑然としてすっきりしない」(埼玉県 30代女性 会社員)
収納家具の中で、リビング収納も後悔する家具で最も多いものの一つです。とくに小さめの収納家具はソファやテーブルにくらべて安価で手軽に購入できることから、容易に購入しやすい家具でもあります。しかしよく考えずに安易に小型の収納家具を購入すると、色もサイズもばらばらで統一感がない収納家具だけがリビングやダイニングに増えていってしまいます。そして「思っていたより収納できなかった」「片付かない」など、家具だけが増えて片付かない結果に後悔してしまうのです。
こういった事態にならないためにも、収納家具は安易に購入しないと決めることが大切。
・どこに何を収納するのか?
・収納するもののサイズは?
・購入したい収納家具のデザインは部屋にマッチしているか?
などを一覧にして書きだし、整理することから始めましょう。
収納家具は色やサイズを統一する
そのうえで収納家具を購入するときは、色やサイズなど統一感にこだわりましょう。統一感が出るだけですっきりしたおしゃれな空間になります。
また収納量はある程度確保できているのだけれど、部屋が雑然としてすっきりしないと後悔する方もいらっしゃいます。それは図版1のようにガラス扉の収納家具や、扉がないタイプの収納家具を多く使っているケースです。片づけても収納物が見えるため、収納物の量や色によっては部屋が雑然として見えてしまうのです。その場合は収納に扉やカーテンをつけたり、扉のついた収納に変えるなどして、収納物を隠しましょう。
また背の高い家具を購入する場合は、前述しました食器棚と同じ理由で、作り付け家具がおすすめです。もし市販の家具を購入する場合は壁や天井・床に固定するなどの地震対策を心がけましょう。地震対策グッズがたくさんありますので、それらを使って壁や天井・床のうち少なくとも2点をとめるように対策すると転倒リスクが減り安心です。
ライフスタイルにいろどりを加えてくれる家具は、ただ置けばよいというものではありません。使い勝手やデザイン・サイズ・部屋の間取りとの相性をよく考えて検討してみてください。後悔の少ない家具選びが実現できると思います。