有名企業でも1万円以下で買える銘柄は意外にある
1株100円程度、もしくは100円を割り込むような銘柄は少なくありません。
ヒロタのシュークリームでおなじみ「ヒロタグループホールディングス」(88円)、サマンサタバサのバッグで有名な「サマンサタバサジャパンリミテッド」(106円)など、知名度のある会社の中にも、100円を割り込む銘柄は数多く存在します。
株式は100株単位で売買できるので、1株100円程度であれば、1万円程度で買えるわけです。
ですので、極めて少額から投資できるお手軽さ、そして、極めて低い株価から、その上昇余地の大きさ(伸びしろ)に期待して、そのような銘柄に手を出す(出そうとする)人は少なくありません。
しかし、それらは投資対象として、魅力的なのでしょうか?
一般には、株価500~1000円以下の銘柄を「低位株」、株価100円以下ともなれば「超低位株」とも言われるのですが、そんな超低位株の中には、業績低迷が続き、財務内容も悪く、将来性もない企業も少なくありません。
とくに株価が50円を切るような銘柄など、市場に見放され、放置されている可能性も高く、「ボロ株」と揶揄されることもあります。
ダメだと分かっているのに、なぜ投資してしまうのか
経営再建中、上場廃止秒読みの銘柄も珍しくありません。
それゆえに、超低位株の大幅上昇など、めったにありません。
極めて低い株価ゆえに、いったん上昇モードとなれば、わずかな期間で大きな利益を得るチャンスはあるわけですが、実際のところ、超低位株のほとんどは超低位のまま、ずっと放置されているのが現状です。
私自身、ホテル運営の「アゴーラホスピタリティグループ」(23円)、いきなりステーキの「ペッパーフードサービス」(106円)、紳士服の「タカキュー」(79円)など、多くの超低位株を保有しています。
しかし残念ながら、そのどれ一つ、株価は上昇することなく、超低位のままです。
コロナショック以降、堅調な株価相場ではありながら、超低位株は完全に「蚊帳の外」状態なのです。
そうです、ずっと安値で放置されている超低位株の急騰劇など、相場全体が少し堅調なくらいでは、起こり得ることはありません。
超低位株の急騰劇は、奇跡に近いと言っても過言ではありません。
それは、私も十分に分かっております。
そしてそれは私だけでなく、超低位株に投資する人のほとんど人は、十分に分かっていることでしょう。
それでも、株価急騰を期待して、超低位株に投資する人は少なくないわけですが、それは、いったいなぜでしょうか?
「ダメ元」と思いながらひそかに期待してしまう
それは、「ダメ元」心理によるところが大きいかと思われます。
超低位株が突如、上昇モードに切り替わる可能性は極めて低いわけですが、しかし、その確率は決してゼロではありません。
ゼロではない以上、「ダメ元」でチャレンジしてみようという心理は、(超低位株に興味ない人も)理解できるのではないでしょうか? もし上昇モードに切り替われば、少ない元手で大きな利益が得られるチャンスなのですから。
そして、これはまさに、宝くじを買う感覚に似ているのかもしれません。
宝くじ一等の当選確率はおよそ1000万分の1と言われていますが、これはあまりにも低く過ぎて、まったく実感の湧かない数字ですね。
ただ、このように「極めて低い確率」については、「体感としては、実際の確率よりも高く感じる」と言われています。
宝くじを買う人は「ダメ元」と思いながらも、でも実はひそかに「でも、当たるかも」とも思っているのは、そのような「心のクセ」があるからです。
実際の確率(1000万分の1)通りに実感すれば、宝くじなど、まず、買う人などいないでしょう。
ちなみに、飛行機が墜落する確率は10万分の1らしく、これも極めて低い確率で、ほぼゼロと言っても良い数字です。
しかし、飛行機に乗るときには「大丈夫かな……」とドキドキしてしまう人は多いわけで、これはまさに、「極めて低い確率は、実際の確率よりも高く感じる」からですね。
「極めて低い確率」は実際よりも高く感じられる
超低位株が上昇モードに切り替わる確率は、分かりません(私の知る限り、公のデータはない)。
さすがに、宝くじの当選確率や飛行機墜落の確率よりは高いでしょうが、それでも、極めて低いことは間違いありません。
そして、超低位株を買う人は、その実際の確率よりも高く感じていることも間違いないでしょう。
だからこそ、買うわけですね。
ちなみに、私は超低位株を10銘柄以上保有していますが、これまで、上昇モードに切り替わった銘柄はゼロ。
にもかかわらず、私の感覚としては、低迷を続ける超低位株が上昇モードに切り替わる確率は10~20%くらいに感じてしまっています。
もちろんこれは、私が勝手に(期待込みで)感じてしまっている数字であって、実際の確率よりも、かなり高く見積もってしまっていることは分かっています。
頭では分かっていても、そんな「心のクセ」は、抗いがたいものがあるわけです。
なお、私の保有する超低位株は、良くて現状維持、中には、低い株価がさらに低くなった銘柄もあり、残念ながら、私の超低位株投資においては、含み損を抱えた状態が続いております。
急騰することもあるが利益を得るのは難しい
残念ながら、超低位株が「継続的な上昇モード」に切り替わることはほぼないわけですが、「一瞬の急騰劇」であれば、それほど珍しくはありません。
たとえば、超低位株で知られる不動産会社「REVOLUTION」(17円)は、2019年秋ごろ、それまで10円程度で推移していた株価は、一気に80円超まで跳ね上がりました。
その後急落、2020年春には10円台まで戻るも、同年夏には再び70円超まで急騰し、急落しました。
このように、株価が突然跳ね上がり、そしてすぐに急落するという「一瞬の急騰劇」は、超低位株によく見られる現象です。
これは意図的に株価が操作されているケースが多く、そのような銘柄を「仕手株」と言います。
超低位株は、そんな仕手株となる可能性が高いのです。
そんな急騰劇の一瞬、株価上昇のピークで売ることができれば良いのですが、通常、そんな芸当はほぼ不可能です。
多くの場合、「おおっ」と思っているうちに、株価はピークを付けて、急落してしまうことでしょう。
なので、そんなことはほぼ不可能にもかかわらず、「急騰したときに売っていれば……」と、ただただ悔しい思いをするだけなのです。
下手すれば、急騰時に思わず追加で買ってしまい、その後の急落で損失を被るリスクもあります。
いずれにせよ、そんな「一瞬の急騰劇」の際には、株価の動きに振り回されるだけで、良いことはないのです。
「以前より株価が安くなった…」お手頃感に要注意
あと、超低位株で気を付けたいのが、「以前の株価は高かったのに、超低位株の水準になった」銘柄です。
以前は、それなりの株価であった超低位株の場合、余計にお得感を感じやすく、また、「以前の株価水準に戻れば、大儲け」との期待感もあって、ついつい手を出してしまいがちなのです。これも、心のクセと言えるでしょう。
しかし残念ながら、いったん超低位株の水準まで沈んでしまえば、多くの場合、そこから這い上がるケースは少なく、むしろ、さらに下落することも少なくありません。
そもそも、以前はそれなりの株価だったのに、超低位株の水準まで下落するということは、何らかの致命的な要因があるわけですから。
たとえば、冒頭にも挙げた「サマンサジャパンリミテッド」(106円)の株価は、2014年夏ごろには1600円でした。料理レシピサイト最大手の「クックパッド」(118円)は、2015年夏ごろには2880円まで上がりました。そして、私の保有する「ペッパーフードサービス」(106円)に至っては、2017年秋ごろには、株価はなんと8000円を超えていました。
それゆえに、「以前の株価8000円からすれば、今の株価はタダみたいなものだ」と、赤字続きの会社に、ついつい手を出してしまったわけです。
そしていずれも、現在の株価は100円前後と、以前の株価から見ればとんでもなく安い水準ではありますが、残念ながら、株価上昇の見込みはほぼなく、ずっと低迷を続けています。
新NISAで投資デビューする人が知っておきたいこと
また、超低位株は極めて少額から投資できるので、「損をしても、たかが知れている」とばかりに、銘柄分析もそこそこに、株価だけで判断して、投資が雑になりがちなのも要注意です。
超低位株に傾倒し、そんな雑な投資ばかりをしていると、他の投資にも悪影響を及ぼしかねません。
それでは最後に、投資対象としての超低位株についてまとめると、以下の通りです。
・市場に見放されたボロ株(業績低迷・財務内容が悪い・将来性なし)が多い
・よって、本格的な株価上昇モードになることなど、めったにない
・しかし、「極めて低い確率は、実際の確率よりも高く感じる」「かつて高い株価だった超低位株は、お手頃感を強く感じる」といった心のクセから、ついつい手を出しがち
・「一瞬の急騰劇」はあり得るが、多くの場合、ただ株価の動きに振り回されるだけ
・投資判断が「雑」になりがちで、他の投資にも悪影響を及ぼすかも
来年から始まる新NISAもあり、投資の第一歩として、冒頭でも書いたとおり、「少額からできるお手軽さ」「株価上昇余地の大きさ」から、超低位株に関心を持つ人も多いかもしれません。
しかし、上記のポイントしっかり認識して、極めて低い株価に目を惑わされることなく、慎重に判断したいものです。
※株価は2023年12月5日現在