ポイントを貯めるポイ活はお得なのか。金融・投資コンサルタントの永田雄三さんは「ポイントに心を奪われて、必要のないものまで買うのは、ムダ遣い以外の何ものでもない。基本的にお金を使って得をすることはない」という――。

※本稿は、永田 雄三『1000万円を貯めた女子100人がやったこと、やめたことリスト』(日経BP)の一部を再編集したものです。

ポイ活でお金は貯まるのか

女子の意見
● 貯まっているポイントは微々たるもの。おまけに、「ポイントがつく」と思うと節約意識が持てず、出費は減らなかった
● ポイ活アプリに登録したら、「お得な情報」が次々届くように。むしろ前よりも出費が増えたかも……
● 毎回の買い物で、ポイントを考えるのが面倒くさくなった。他の貯まる方法を知ってしまうと、効率の悪さばかりが気になる

「いつものお買い物も、○○経由でするだけで、ポイントが貯まる‼」
「初心者でも簡単!」
「毎月●万円の食費だけで、●円分お得!」

ポイントを貯めたり、それで買い物をしたりする「ポイ活」。私がお金のアドバイスをしている女子の中にも、熱心に取り組んでいる人がいます。

“だって、いつもの出費なのに、ポイントがたくさんついたらお得じゃないですか”

と、私も何度か、彼女たちのおすすめのポイ活サイトを紹介されました、笑。

スマートフォンで獲得したポイントを確認してガッツポーズする女性
写真=iStock.com/takasuu
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ポイントの還元率が高いとはいえ…

でも、私は女子たちに、「お金持ちになりたいなら、ポイ活はしないほうがいい」と伝えています。

その理由は、「お買い物で、ポイント還元」という仕組みそのものが、「今あるお金をどう“使う”か」という視点に固定されているからです。

ポイ活の還元のレベルで、1000万円、あなたは貯められると思いますか?

1000万円は極端だというのなら、10万円でも構いません。10万円をポイントで貯めるために、いくらかかりますか?

たとえば「100円で1ポイント、1ポイント1円でお買い物できる」というポイントサービスは、大手コンビニチェーンなども導入している、よくある還元率だと思います。

買い物金額は言うまでもないと思いますが、念のためお伝えします。

1000万円です。

“いやいや、そのために出費を増やしているわけではないから、いいんですよ。いつもの買い物で、いつの間にか貯まっているからいいんです”
“一般的なポイ活は、もっと還元率がいいですから”

そうかもしれません。でも、「いつの間にかポイントが貯まっている」というのは、裏を返せば、「支出を管理できていない」ということではありませんか?

「ポイントの還元率が高い」といっても、何十倍、何百倍、とまではいかないのでは?

「ポイント5倍デー」でムダ遣いしていないか

私には、ポイントのサービスは、「消費者に、より多くのお金を使わせる仕組み」の1つにしか見えません。企業は営利団体です。利益にならないことはやりません。

実際、多くの企業は消費を促すためにポイント制度を利用します。

要するに、ポイント制度によって消費者のお財布の奪い合いをしている、のです。

ポイントと購買意欲の関係は、行動経済学を少しでもかじれば、イヤというほど見えてくるはずです。

一切のポイ活をやめなさい、と言っているわけではありません。

毎日行く近くのスーパーがあるなら、そのお店のポイントを貯めるのはいいと思います。貯めないよりも、貯めたほうが得になるでしょう。

でも、「今日はポイント5倍デー」という日に、余計なものまで買うのは、やはり損です。ポイントに心を奪われて、必要のないものまで買うのは、ムダ遣い以外の何ものでもありません。

基本的に「お金を使って得をすることはない」んです。

大切なのは、ポイ活は企業側が儲かる仕組みの1つである、と理解しておくことです。

1000万円貯めるために必要なのは、「賢い消費者になる」ことではありません。「仕事でお金を得て消費する」というルーティンから脱却することです。

「ポイ活」によって生まれる「ちょっとしたお得感」は、「仕事でお金を得て、消費する」ルーティンを強めるものでこそあれ、1000万円無理なく貯めるマインドとは異なります。

そこのところをぜひおさえておいていただきたいと思います。

「無駄遣い」の文字が付いた木製のブロックが積み上げられている
写真=iStock.com/Seiya Tabuchi
※写真はイメージです

カード払いより現金払いは正解か

女子の意見
● 「カード払いよりも現金払いのほうが、お金を使っている感覚が強いから、ムダな出費が減る」と聞いてやってみた。けど、現金払いにしたところで必要な出費が減るわけでもなかった
● 昔っから親に「クレジットカードよりも現金を使え」「クレジットカードは借金みたいなもの」と言われてきた。でも、クレジットカード払いはポイントもつくし、明細も確認できるし……何より便利だと思う

カードでも現金でも、結局「払っている」のは同じです。

1000万円貯めた女子がやめたことの5つめは、「カード払いではなく現金払い」。つまり、買い物をするときに「カードか現金か」を選べる場合、これまでは現金払いを選んできたけれども、それをやめた、という意見です。

この「カード払い」には、電子マネーも含まれます。

そう、1000万円貯めた女子たちは、「カードだろうが、電子マネーだろうが、現金だろうが、好きな方法で払えばいい」と言うのです。

それどころか、さらに話を聞いてみると、

“カードとか電子マネーで払ったほうが、実はお得ですよね”

とまで言っていました。

クレジットカードや電子マネーは絞るとよい

たとえば、1万円の買い物をした場合、クレジットカードや電子マネーの多くはポイントが付与されます。

また、何月何日に、どの店で、いくら使ったかを一覧にしてくれるので、支出の管理にも使えます。

その意味では、何種類ものクレジットカードや電子マネーを併用するよりも、「クレジットカードはこれ」「電子マネーはこれ」と絞ったほうが管理はしやすいでしょう。

スマートフォン上のオンラインバンキングモバイルアプリの画面を開いている人の手元
写真=iStock.com/Thai Liang Lim
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親からクレジットカードより現金と言われたが…

ところで、上で紹介した意見のように、

“親に昔、クレジットカードよりも現金を使え、と言われました”

という人は一定数いるようです。それでクレジットカードや電子マネーに抵抗感がもしあるならば、その抵抗感は今すぐ捨てなさい!

なぜか。その理由をお話ししましょう。

1つめ。まず、親御さんが「クレジットカードよりも現金を使え」と言ったのは、いつですか?

大学生になったとき、社会人になったときなど、自身の購買行動や金銭感覚が固まりきっていない時期が大半ではないでしょうか。過去にカード地獄(カードローンやリボ払い)を経験したことのある方は、そのタイミングかもしれませんね。

これらはいずれも、「お金のリテラシーがないとき」。お金のリテラシーのまだないわが子が、カード地獄、借金地獄に陥らないように……という親の愛です。

高校生の子どもに「門限は夜8時!」と言っていたのと同じ心境でしょう。

一方、本書を読んでいるみなさんは「書籍でお金の貯め方を勉強しよう」というリテラシーをすでにお持ちです。

そしてもちろん、クレジットカードや電子マネーで買い物をすれば、自分の口座の残高が減ることを知っています。そんな状態になった今、果たして親の言いつけを守る必要はあるでしょうか? 門限同様、卒業してもいいと私は思います。

現金は衛生的でない

2つめ。ここ数年で、現金の利便性はどんどん下がっています。現金での支払いの場合、いつ、どこで使ったかを振り返れませんし、直接顔を合わせないとやりとりできません。何より衛生的とはいえません。この傾向は、新型コロナウイルスの流行によって、ますます顕著になりました。

要するに、時代は着実に「脱・現金」の方向に流れているということです。今後は、もしかしたら「現金お断り」という店舗が増えていくかもしれません。

それなのに、小銭をじゃらじゃらと持ち歩く生活にこだわる理由はない、といっていいのではないでしょうか。

手のひらに500円硬貨2枚と1円玉をのせている
写真=iStock.com/yaophotograph
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「現金なら、踏みとどまれる」派に言いたいこと

“でも先生? 衝動的に欲しいものがあるときに、財布から直接お金がなくなると思うと、踏みとどまれるんです”

永田 雄三『1000万円を貯めた女子100人がやったこと、やめたことリスト』(日経BP)
永田 雄三『1000万円を貯めた女子100人がやったこと、やめたことリスト』(日経BP)

現金払いでは、より「損失」を大きく感じるという調査はたしかにあります。

しかし、調査に云々いうよりも、「買わずに踏みとどまれるものを買おうとした」ことを、反省してほしいと思います。

「現金払いなら買わないけど、カード払いなら買う」ものは、あなたの人生に必要なものではありませんね。もっといえば、「欲しいもの」かどうかも疑わしい。一瞬の衝動で「欲しい」と思わされているにすぎません。

クレジットカードか現金か、という「払い方」ではなく、「必要かどうか」で「買うか買わないか」の区別をつけられるようになることは、1000万円貯めるための大事な一歩です。

「お金が貯まらない」のは、カードで払うからではない。➡いらないものを買っているだけ