「結婚・出産後も仕事を続けたい」と考える女性にとって、「パートナーが家事育児に協力的か」は重要な問題。しかし、そんな「家事を率先して担うパートナー」を選ぶとき、私たちは「インドア派」や「内向的な男性」をイメージしていないだろうか。しかしライターの高川朋子さんは「うちの夫のように家事をする男性は、日々の身体的なトレーニングも行っていることが多い」という――。

わが家の夫は仕事で遅くなっても、毎日夕食を作る

わが家では、料理はほぼ毎日夫が作ります。

私たちは共働きで、ともにフルタイムの会社員。子どもは2人いて、それぞれ高校生と小学生です。夫は、日々会社へ行き、帰ってきてから家族4人分の夕食を準備し、私たちに食べさせてくれます。料理のレパートリーは和洋中エスニックと幅広く、ごく一般的な家庭料理から、「香港風蒸し魚」などのちょっと凝った料理まで。正直、とてもおいしいです。

高川家で夫が作った家庭料理
筆者撮影
高川家で夫が作った家庭料理

ときには、夫が仕事で遅くなり、妻である私の方が早く帰宅することもよくありますが、私は基本的に待っているだけ(子どもたちのお腹がすいているときは、パンなどを食べさせることも)。夫は「遅くなってごめん」と帰ってきて急いで料理をすることもあれば、スーパーで買ってきたおそうざいを食卓に並べてくれることもあります。泊まりがけの出張や飲み会でもない限り、夫は毎日進んで夕食を用意します。休日には、朝昼晩の三食も……。

【図表】夫・妻の家事関連時間の推移
※2001~2021年、週全体平均、6歳未満の子供を持つ夫婦と子供の世帯 出典=総務省統計局「我が国における家事関連時間の男女の差~生活時間からみたジェンダーギャップ~」(統計 Today No.190)、2023年2月8日

それがわが家では日常ですが、統計を見ると、2021年のデータ(平均値)でも、6歳未満の子どもがいる家庭で夫が家事をする時間は妻の9分の1で、男性は1日に30分しかしていません。家事育児を合わせても女性の方が5倍近く、時間を割いています(図表1)。やはりうちは「夫がめちゃくちゃ料理をする」例外的な家庭なのかもしれません。

夫が料理するのは「コスパが良く好みの味にできるから」

夫は結婚当初から料理をしていたのですが、私が第1子出産前後に専業主婦だった時期があったり、子どもたちが幼かった頃に夫が5年間海外へ単身赴任をしていた時期があったりと、昔から「食事担当」だったわけではありません。単身赴任中は、住まいに十分なキッチンがなかったこともあり、料理はほとんどしていなかったようです。ほぼ毎日料理をするようになったのは、10年ほど前に単身赴任から帰ってきてからです。

夫に「なぜ料理をするの?」と尋ねてみたところ、「外食や中食(弁当や惣菜を買ってくること)に比べて、自炊した方が安く上がってコストパフォーマンスがいいし、自分で料理をすると自分好みの味付けにできるから」との答えが返ってきました。

週5回、朝5時から10キロメートル以上走る夫

そんな夫ですが、「ジョギングが趣味」という側面も持っています。

平日3日、土日2日の週5回は、朝5時に起きて自宅近辺を10キロメートル以上走り、朝6時には自宅に戻って、シャワーと朝食を済ませ、出勤しているそうです。「そうです」というのは、その時間、私はまだお布団でスヤスヤと眠っているからです。

ジョギングの趣味は10年以上続けており、たとえば出張や旅行でホテルなどに宿泊したときも休むことはなく、晴れている限り基本的に毎日走っています。そして、コロナ禍でここしばらくは遠ざかっていたものの、年に何回か市民マラソン大会にエントリーし、出場しています。

ランニング中の男性
写真=iStock.com/west
※写真はイメージです

とはいえ、夫が「料理を毎日すること」と「走るのが趣味であること」は全く別の事柄であり、関連があるとは思っていませんでした。そう、今までは。

美容師による予想外のプロファイリング

さて、私は先日美容室に行き、髪を切ってもらいつつ、担当の美容師さん(女性)とおしゃべりをしていました。

【美容師さん】今日の晩ごはん、何にするか決まってます?

【私】うちは夫が毎日つくってくれるんで、任せてますね

【美容師さん】えっ、いいですね、うらやましい!

なんてことのない雑談だったのですが、美容師さんが続けた言葉に、私は耳を疑いました。

「ひょっとして、旦那さんって走る人ですか? “私調べ”ですけどね、お客さんで、『夫が毎日料理をする』って言っている人の旦那さんは全員、毎日走る人なんですよ。たまにマラソン大会に出たりして。それで、日曜日は、こっちは朝寝坊したいのに、『ごはんできたよ』って夫が起こしてくる、ってこぼしてたり……」

驚くなかれ、美容師さんによるプロファイリングは、うちの夫と完全に一致していたのです。

SNSに投稿すると「うちの夫も走るし料理する」という報告が殺到

そこからむくむくと湧き上がってきたのが、「ひょっとしたら、料理をする男性=走っている男性なのか?」という疑問と驚き。

私はその疑問と驚きを、X(旧Twitter)のアカウントに投稿してみました。それが、こちらです。

高川さんのツイート
画像=筆者提供

この投稿は、思わぬ反響を呼びました。閲覧数は74.8万を記録。いわゆる「バズる」というやつです。そして、寄せられたのは、「そういえば、うちの夫も」「知人が同じタイプ」といった、数多い同意の声でした。

・うちも料理担当のダンナ、ジョギングするし、大会も出る

・さすがに平日は毎日ではないが、週末はほぼオットが作るし、週末は毎日走ってるし大会にも出ないことはないし、筋トレにも行く。自転車も乗ってた。ヒルクライム。朝ごはんも時々作ってくれる。

・毎日ご飯を作っているダンナは走ってないけど、通勤で12~13キロメートル、ロードバイクで通勤してる

・帰宅したときは家事のほとんどをして料理は3食作ってくれる単身赴任夫、毎朝走る習慣あり……!

・うちの毎日料理する夫は、ジョギングはしないものの、毎日筋トレとエアロバイクを欠かさない。日曜日は朝ご飯ができたところで起こしてくれる……。確かに……。

・前の職場にこういう方(家庭の料理はほぼ作る男性)がいましたが、正にこれでした! 彼は毎朝4時に起きて走り、洗濯もしていた。

・うちは平日の夜ご飯とお弁当を3日間作ります! マラソンやトレイルランの大会にも参加。週末は寝坊したいけどカーテン開けてベッドシーツを回収されるので強制起床。以前は頼んでないのにアラームかけられてた。うちだけじゃなかった!

・うちの父親も毎日夕飯作ってるし、毎日筋トレしてるし週末は5キロから10キロ走ってる。

もちろん、当てはまらない人もいて「うちの夫は料理するけれど、走らない」という声も届いたのですが、想像以上に多くの「走っている」「自転車に乗っている」「ジムに行く」「筋トレをしている」という声が集まってきたのでした。

ジムでトレーニング中の男性
写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです

運動も料理も「三日坊主にならない」という能力

なぜ「トレーニングをする男性」は、「料理をする」のでしょうか。

夫やX(旧Twitter)で集まってきた証言を総合し、私が推察したところ、その理由は大きく分けて3つです。ひとつずつお話ししたいと思います。

①自己管理能力が高い

当然のことながら、朝早く起きて走るにしろ、仕事帰りにジムに行くにしろ、途中でへこたれて三日坊主にならずにコツコツと毎日トレーニングを続けるには、自分自身を律して、感情や行動をコントロールする能力が必要です。つまり、「自己管理能力」です。

そして、1日の仕事を終え、たとえとても疲れていたとしても、「まあいいや」とならず、帰宅してから料理をするには、やはり目標達成に向けて意識して行動する力「自己管理能力」が必要でしょう。

共働きが一般的となり、男性の家事育児時間は増加傾向にあるとはいえ、いまだ女性の家事育児時間に比べると、雲泥の差と言わざるを得ない現在。1日で「料理」や「食器洗い」をする時間(平均)は、女性が1時間25分なのに、男性はたったの14分です(図表2)。

ともすれば男性が家事をしなくても許されてしまいそうなところ、「毎日料理をする」と決めてその通りにするには、トレーニングでも生かされる「自己管理能力」の高さが鍵と言えそうです。

【図表2】6歳未満の子供を持つ夫・妻の家事関連時間
※2016年、2021年、週全体平均、夫婦と子供の世帯 出典=総務省統計局「我が国における家事関連時間の男女の差~生活時間からみたジェンダーギャップ~」(統計 Today No.190)、2023年2月8日

スケジュールに合わせた「進捗管理」

次に挙げる理由も、①と近いところがあるのですが、夫が「これは必要」と語っていた能力です。

②進捗管理ができる

料理をしたことがある人なら誰でもわかると思いますが、料理には「進捗しんちょく管理」が必要です。

いくつもの料理を同時進行でつくり、完成させて一つの献立とするには、計画性が要求されます。ましてや、共働きで日中会社に行きながら、帰宅後お腹をすかせた家族にすみやかに夕食を提供するには、「前日の夜に下味やパン粉までつけておいた鶏胸肉を、当日帰宅してから揚げて完成させる」といった、前工程・後工程に分けての組み立ても必要でしょう。

こういった「進捗管理」の能力は、「早く走ってタイムを縮めたい」「筋肉をつけたい」「体力をつけたい」などの目的に向けて必要な運動メニューを調べ、「次の大会までに」といったスケジュールに沿って日々の計画を立てて実行するトレーニングにも必要な能力です。

「夕食の時間」や「次の大会」に向けて、綿密な計画を練って実行し、万一遅れなどが生じれば間に合うよう計画の変更を行う「進捗管理」の能力は、料理にもトレーニングにも生きるでしょう。

体力があれば料理もでき、毎日のタスクをこなせる

最後は、身もふたもない理由かもしれません。でも、私としては「これに尽きる」と思う理由でもあります。

③体力がある

家事や子育てをしながら仕事も続けることは、にもかくにも体力がなければできません。グズる子どもを保育園へ送り迎えし、既に疲れ切った体で出社して一日中仕事をこなして買い物を済ませ、帰ってきて料理をつくり、家族に食べさせる……。世の中の女性にとっても、たいへんな体力が必要になる大仕事ですが、それは男性にとっても同じこと。

X(旧Twitter)で寄せられた声には、料理する夫はとにかく「体力おばけ」と言われるほどパワーがあるという意見もあったのですが、たとえ生まれつき体力に恵まれていなくても、ランニングや筋トレなどの毎日のトレーニングを通して十分なスタミナを身に付ければ、日々仕事と家事を両立させることも可能というわけです。この場合、「トレーニングをする男性は料理をする」というよりも、逆に「トレーニングをすることで、料理をする体力がつく。そして実際に食事をつくる」といえるのではないでしょうか。

キッチンで調理している成人男性
写真=iStock.com/JGalione
※写真はイメージです

理想の結婚相手はランニングコースやジムにいるかも

また、特に夫については、とにかく「朝型」で、早起きは苦にならず、しかも起きた瞬間からお腹がすいてすぐに朝食が食べられる体質である、ということも後押しとなっていると思います。

女性が結婚生活と並行してキャリアを積む上で、率先して家事を担うパートナーは大きな味方。経済力よりもずっと大きいポイントになります。

しかし、家事能力の有無はともかく、「はたして結婚後、日常的に家事をしてくれるかどうか」を結婚前に見極めることは難しいもの。そんなとき、「継続したトレーニングの習慣があるか」が、判断の一助になるかもしれません。