子ども6人のママFP橋本さんにとって、全員の部屋をつくることは、まず無理。そこで考えたのは、子ども部屋をつくらない生活。どこの部屋も家族みんなで使う。それが、子どもたちの自立心を育て、集中力や学力アップにつながったという。子ども部屋はなくてもいいのは、なぜか。

子どもがいると子ども部屋が要るかな、小学生になると学習机が要るかな、と親になると誰しも考えるかもしれません。ですが、わが家は子どもが6人いるのでそれぞれ個室を持つことは正直不可能です。子どもが2人、3人だとしても間取りや経済的な状況によっては個室を持たせることが難しいご家庭もあるでしょう。

わが家では子ども部屋の役割を考えたときにその役割が果たせれば個室がなくてもよいのではないか? と考えました。子どもがいる=子ども部屋が必要という固定観念を捨てて、どうすれば子どもたち、そして家族みんなが快適に暮らせるのか? という視点で家づくり(賃貸ですが)をしています。

今回は筆者が実践する、子ども部屋がなくても子どもの居場所と自立心を育むための暮らしの工夫をご紹介いたします。

会議室予約スタイルで友達も呼べる

わが家には子ども部屋がありません。というよりも家全体が子ども部屋と言ったほうがしっくりくる気がします。子ども部屋がないと友達を呼べないという意見もあるかもしれませんが、わが家では毎日のようにそれぞれの子が数人ずつ友達を呼んでいます。

その際、今日は自分が友達とこの部屋を使うから入らないで! と宣言し、それぞれのグループが別々の部屋を使っています。いったいこの家には何人いるの⁉ という状況になることもしばしばですが、一つの部屋ではお兄ちゃんが友達とゲームをし、隣の部屋では妹が友達を呼んでおままごとをし、他の部屋ではお姉ちゃんが友達とマットレスで遊園地づくりをし、という具合にグループに分かれて楽しんでいます。

オフィスの会議室のようなイメージでそれぞれの部屋で会合が行われています。

フリーアドレス制でどこでも勉強ができる

わが家には各自の学習机はありません。仮に6人分と両親の仕事机をそろえたら、おそらく部屋の面積は全て机で埋まってしまうでしょう。片づけでお客様の家にうかがうときも、よくありがちなのが専用の机が多すぎるということです。

子ども二人の学習机、ママの鏡台、PC机、ダイニングテーブル、リビングにローテーブルといった具合に家中机だらけのご家庭も少なくありません。わが家では専用の机は持たず、基本的にはダイニングテーブルだけです。ダイニングテーブルでご飯を食べますし、勉強もしますし、PCを使って仕事もします。そして、サブデスクとして無印良品の折り畳み式ローテーブルを3つ所持しています。

わが家はフリーアドレス制。どこでも学習スペースとなり、みんな、いつでもどこでも集中して勉強できる。
筆者撮影
わが家はフリーアドレス制。どこでも学習スペースとなり、みんな、いつでもどこでも集中して勉強できる。

子どもたちの友達が来て使うとき、他の部屋でオンライン会議をしたいときや勉強したいときなど、使うときだけ出して、使いたい場所で使います。机を○○専用にするのではなく、一つの机をいろいろな用途に使うようにすると机の稼働率があがり、無駄な空間もなくなります。

1部屋をフルに活用する1カ所クローク制

わが家ではそれぞれの個室がないので洋服は全員分をほぼ1カ所にまとめています。下着やパジャマなども洋服と同じところにまとめているので洗濯物をしまうのもあっちこっち行かずにすみ、楽にできます。洗濯物の片づけは子どもたちのお手伝いになっています。

その他、個室がないことで、家族8人で生活する局面で、いろいろな工夫をしています。

全員分の洋服をほぼ1カ所にまとめて収納するクローゼット。自分のひき出しが割り当てられていて、洗濯物は自分でしまう。
筆者撮影
全員分の洋服をほぼ1カ所にまとめて収納するクローゼット。自分のひき出しが割り当てられていて、洗濯物は自分でしまう。
・寝るときはどうするの?

わが家では家族みんなで同じ部屋に雑魚寝です。押し入れの襖を取り外し、押し入れの下までマットレスを敷き詰めます。日中はマットレスは立てておき、部屋はそのまま子どもたちの遊び部屋になります。

寝るときは、押し入れの下までマットレスを敷いて、家族8人が雑魚寝。
筆者撮影
寝るときは、押し入れの下までマットレスを敷いて、家族8人が雑魚寝。
・一人になりたいときは?

たまには家で一人になりたいときもありますよね。そういうときは家族に宣言をして、一人の時間を持たせてもらいます。子どもたちも自分の友達だけで家を占有したいということがあるのですが、そのときは他の子たちが児童館や外遊びをするなど協力することにしています。

・読書の習慣が自分空間をつくる

わが家は全員本が好きです。家族全員で行う朝読書も習慣にしています。読書をすることで、まわりに人がいても瞬時に自分の精神的空間に入れるような気がします。家族全員の朝読書がその訓練になっているかもしれません。

家族全員での朝読書。朝の5分間、全員で読書をする。
筆者撮影
家族全員での朝読書。朝の5分間、全員で読書をする。

個人ロッカー制で片づけ術を自然に学ぶ

わが家ではそれぞれの個室はないのですが、それぞれのロッカーがあります。学校のカバン、リュック、お出かけバッグ、プールバッグ、教科書類、各自の私物が収められています。自分たちがつくった工作もロッカーにポイポイ入れてあるのですが、いっぱいになってぐちゃぐちゃになってくると、「要る、要らないしようか?」と声をかけます。

個室はなくても、個人ロッカー制。物があふれてくると、片づけが始まる。
筆者撮影
個室はなくても、個人ロッカー制。物があふれてくると、片づけが始まる。

各自が自分でこれは要る、これは要らないと判断し、整理します。上の子たちはもう自分で判断することができるのですが、下の子たちはまだ自分だけで判断しようとすると全部とっておきたい! となってしまいます。なので少し大人がサポートしています。

まずは必要なものを選びます。次に欲しいものを選びます。「全部取っておきたいけど、全部取っておくと他の人のところまで使ってしまうよね。自分のところに人のものまで入ってきたら嫌だね。自分の棚に入るだけにしようね。何個なら入るかな? 絶対に取っておきたい順番に選ぼう」と一緒に考えます。

また、学期末にも学用品も含め要る、要らないの選別と使い切ってしまったものの補充の確認をするようにしています。

要る、要らないの判断をすることは大人でも難しいものです。片づけサポートでもご自身で要る、要らないの判断をしていただくのですが、自分一人では判断の基準がわからず固まってしまうので、これは今使っていますか? いつ使いましたか? 今後も使いますか? と聞いていきます。判断はあくまでも持ち主が行います。時間もお金も空間も自分の持っている範囲内で使うことが大事です。定期的に要る、要らないを考えることで優先順位をつける訓練になります。

集中力を高めるリビング学習

基本的には全員リビング学習をしています。もうすぐご飯の時間というときやテーブルが他に使われているときは先ほどご紹介したローテーブルを出して行うこともありますが、個室がないので、どこでも学習スペースに変わります。

みんながいると集中できないと思うかもしれませんが、最初からずっとこの状況の橋本家の子どもたちは、いつでもどこでもすっと集中して勉強することができます。上の子は中学受験で難関と言われる学校に合格でき、中間期末もこの環境の中よい成績をとっています。

基本的には、リビングで学習。オフィスにも使われているのでいつもきれいに片づいている。
筆者撮影
基本的には、リビングで学習。勉強にも仕事にも家族8人の食事にも使われているのでいつもきれいに片づいている。

自分だけの部屋じゃないから片づける

子ども部屋をなかなか片づけないというお悩みを聞くことはよくあります。自分の部屋だと散らかったままでも別にいいじゃないかと思うかもしれません。わが家の場合は、ロッカー以外はみんなで共有するスペースなので自分勝手にするわけにはいきません。

モノも家族で共有しているものがほとんどです。みんなで使うモノ、みんなで使う場所だからこそ散らかしたままにせず、みんなが快適に暮らせるようにちゃんと片づける習慣が自然とついていきました。プライベートのロッカーはぐちゃっとなることもありますが、定期的に片づけるようにすることで他の子の友達が来ても大丈夫な状態をつくることができます。

社会の中ではルールを守った上での自由と社会の一員として果たすべき義務があると思います。家庭でもそれは同じです。外の社会よりはルールや義務はゆるいものですし、許されることも多いですが、社会に出たときの練習としての家庭の役割はあると思います。

社会人になると、会社には個室がなく、たくさんの人の中で集中して仕事をしなければいけないことが多いと思います。家庭でも家族がいる中で集中する練習をしておいたほうがいいかもしれません。また、自分がいいと思ったことが通らなかったり、交渉しなければいけなかったり、といったことも家庭の中で練習しておくといい気がします。

みんなで使うリビング。使っているうちに自ずと社会のルールを身に付けていく。
筆者撮影
みんなで使うリビング。使っているうちに自ずと社会のルールを身に付けていく。

どうしても子ども部屋をつくりたいときの方法

コロナ禍で子ども部屋だけでなく仕事部屋を確保したいという家庭も増えました。間取りが変更できず、部屋数が足りないけれど、どうしても個室をつくりたいというご相談を受けることがあります。そんなときは、工夫次第でつくることは可能です。

・カーテンで部屋を区切る

カーテンレールはネジ留め式もありますが、突っ張り式のものもあります。カーテンレールではなく、突っ張り棒でカーテンをつけるという方法もあります。カーテンレールの場合、天上から空間を仕切るので、しっかりと間仕切りをすることができますが、電気や空調の問題が出てくる場合があります。突っ張り棒の場合は上部を開けて設置できます。

突っ張り棒式のカーテンで、部屋を仕切ることができる。
突っ張り棒式のカーテンで、部屋を仕切ることができる。
・パーテーションで部屋を区切る

オフィスの会議室の間仕切りのようにしっかりとしたパーテーションは値段は高めですが、しっかりと個室を確保できます。安く抑えたい場合は目隠しのような、可動できる簡単なパーテーションでゆるやかに部屋を区切るということもできます。

可動式のパーテーションでゆるやかに部屋を区切ることもできる。
可動式のパーテーションでゆるやかに部屋を区切ることもできる。
・家具で部屋を区切る

ベッドや本棚など家具で部屋を区切ることもできます。ただ、部屋の真ん中に家具を置くと圧迫感があり、狭く感じてしまうかもしれません。

まとめ
子どもも大人も個室が欲しいなぁと思うことはあるでしょう。とはいえ家族全員がそれぞれの個室を持つことは難しいものですし、家族で一緒に暮らしながらみんながばらばらに過ごすのも寂しい気がします。個室を持つことにこだわらず、一人の時間がとれるように工夫や協力をし、家族みんなで過ごす時間に幸せを感じるような関係を築いていけばよいのではないでしょうか。

個室がないと自主性が育たないとか、プライバシーが守られないとかいろいろな意見があるでしょう。ですが、個室があってもなくても自主性は育ちますし、個室という形がなくても、一人になりたいときは一人の時間をとれるようにする、各自のモノは各自で管理する、など家族の中で個人を尊重する意識を持つことでプライバシーを守ることもできます。

子どもが自分の部屋を持ちたいという気持ちは、社会人になったら一人暮らしをして独立するぞ! という独立のための克己心にするとよいのかなと思います。