2年前は0.5%でも、輝いて見えた
ここ最近の物価上昇、そして株価の上昇もあって、これはいよいよ、国内金利にも上昇の兆しが見えてきたといわれています。
金利上昇時には、漫然と預金に預けていると、残念な目に遭うかもしれません。
実際、私は米ドル預金に漫然と預け、アメリカの急激な利上げ(米ドル金利上昇)によって、残念な目に遭っています。
今回は、金利上昇の兆しの中で、ぜひとも心がけるべき、預金の選び方がテーマです。
約2年前、私は米ドル預金を探していました。
しかし当時、アメリカの金利は非常に低く、米ドル定期預金1年物の金利は0.1%程度と、円建て預金と、さほど変わらない水準でした。
そんな中、3年物ではありましたが、金利0.5%の米ドル預金を見つけたのでした。
これは0.1%からすれば5倍の水準と、円建て預金の低金利にはもちろんのこと、米ドル預金の低金利にもうんざりしていた私は、その魅力に大いに引かれました。
今思えば、0.5%でも低金利には変わりませんが、当時の私には、非常に輝いて見えたのでした。
なので、私はすぐさま、手持ちの米ドルをかき集め、3万米ドルを預け入れたのでした。
グングン上がる金利を、ただ眺めるだけ……
しかしその後、新型コロナによる景気低迷からの回復、ロシアのウクライナ侵攻による食料・資源の価格高騰等を受けて、世界的なインフレ懸念が高まり、アメリカはいち早く、利上げを始めます。
約2年前、2021年夏には0~0.25%だったアメリカの政策金利は、2022年春ごろから引き上げられ始め、わずか1年余りで、現在、5~5.25%の水準となっています。
それに伴い、米ドル預金の金利も、見る見るうちに上昇していきました。
私が預けた当時、1年物で0.1%程度だった米ドル定期預金は、預けてから半年もたたないうちに見る見る上がり始め、今現在、なんと5%に迫る金利水準となっています。
しかし外貨定期預金は原則、中途解約はできません。
なので私は、今となっては何の魅力もない、この0.5%で我慢するしかありません。
これまで、グングン上昇していく金利を歯ぎしりしながら眺め、そして満期まであと1年もあるので、これからも悔しい思いを続けることになります。
儲け損ないほど、悔しいものはない
今回の金利上昇で、私は損失を出したわけではありません。
むしろ、アメリカ(米ドル)の金利上昇により、相変わらず超低金利の日本(円)との金利差から、ドル高円安が進み、為替差益を得ています。
にもかかわらず、「今預ければ、金利5%弱なのに」と、私が預けた預金金利0.5%の約10倍もの金利を見ては、「儲け損なった」との悔しさの方が、はるかに勝ってしまうのです。
この「損するよりも、儲け損ないの方が悔しい」との心理状況は、いくら投資経験を重ねても、なかなか克服できないものだと痛感しております。
そして、意味のないこと、むしろ心理的に有害と分かってはいても、こんなことも考えてしまいます。
今預ければ金利5%弱なのに、かつての金利0.5%で拘束されていることで、年間で差し引き4.5%(5%-0.5%)分の金利を儲け損ねている(※)、と。
※現在の金利を5%として計算
預入金額が3万ドルなので、儲け損ねた金利は1350ドル(3万ドル×4.5%)。
税引き後でも1000ドル以上なので、現在の為替レートで14万円以上。
このように、しっかり円換算もしてしまうことで、儲け損なった金額がよりリアルに感じられ、余計に悔しい思いをするという、残念な状況となっています。
そんな状況に、今さらながら、3年物の(相対的に高い)金利に惑わされずに、金利上昇リスクを考慮して、手堅く半年物や1年物で様子を見ておけばと、後悔しきりです。
もし3年物に預けるにしても、全額(3万ドル)を一気に預けるのではなく、金利上昇リスクを考慮して、たとえば1万ドルずつでも、様子を見ながら預けるべきだったと、ただ漫然と預けたことに、反省しきりです。
米ドル預金と円預金、アメリカと日本との違い
さて、ここまでは、金利上昇による、米ドル定期預金での失敗談でした。
それでは、この失敗の教訓は、そのまま、円建て定期預金にも当てはまるのでしょうか?
すなわち、今回の米ドル定期預金での失敗を踏まえ、円建て定期預金でも、金利上昇リスクを考慮して、1年物以下の短いタイプで様子を見ておくのが賢明なのでしょうか?
いえ、米ドル預金と円預金とでは、その商品性が違います。
原則として中途解約ができない外貨定期預金と違って、円建て定期預金は中途解約が可能です。
もちろん、中途解約時に適用される金利は、契約時の金利に比べてグッと下がりますが、いざとなれば(金利が急激に上昇すれば)中途解約をして、より高金利の預金に預け替えることができます。
外貨定期預金のように、(相対的に低くなった)金利に拘束されないことは、大きな安心ですね。
そして、アメリカと日本とでは、金利への対応が違います。
株価や物価の動きに対し、敏感に金利を反応させるアメリカと違って、日本の場合、30年以上前のバブル崩壊後から続く超低金利政策は根深く、金利の扱いにはかなり慎重です。
冒頭でも触れたように、日本においても金利上昇の兆しが見え始めているとはいえ、今後、アメリカのようにグングン引き上げられるとは考えにくく、当面は、今の超低金利は続く可能性は高いでしょう。
そんな理由から、円預金であれば、3年物や5年物といった長期タイプであっても、選択肢に入れてもよいでしょう。
当然、預入期間が長いほど金利は高いので、より高い金利を得られる可能性が高まります。
円預金であっても、諦める必要はない!
とはいえ、現在、メガバンクの定期預金1年物金利は0.002%。
そんな状況ですから、3年物や5年物でといった長期タイプではあっても、円建てである限り、1%を超える定期預金など、(投資信託とのセットや仕組預金などの特別なケースでない限り)あり得ない状況です。
しかし、そんな状況であっても諦めずに(ただ漫然と預けずに)、少しでも有利な預金を求め、真剣に選びたいものです。
その理由は、大きく2つあります。
1つは、ある程度まとまった資金があれば、たとえ0.1%単位でも大きな差となるから。
この地を這うような超低金利の世の中であっても、(1%超は無理でも)0.3~0.6%程度なら、探せば見つかります。
仮に金利0.5%であれば、300万円も預ければ、受け取れる利息は年間1万5000円(税引き後約1万2000円)。
これが5年物であれば、合計約6万円と、それなりの金額になりますね。
ただ漫然と預けていたなら、受け取れる利息は300円(0.002%の場合)もないわけで、その差は無視できません。
もう1つの理由は、情報収集力を身に付けるため。
少しでも有利な預金を探すには、各金融機関の情報だけでなく、世の中の金利動向(ひいては経済情勢)など、普段からアンテナを高く張っておく必要があります。
実際、これから金利が上昇するかどうかは分かりませんが、現在の物価上昇、そして歴史的な株価高値は、投資環境における大きな転換点であることは間違いありません。そんな中、来年から新NISAもスタートし、投資を始める人も多いでしょう(すでに投資をしている人も多いはず)。
そこで、預金選びで身に付けた情報収集力、そして経済情勢等への意識は、間違いなく投資にも役立つはずです。
なので、今の超低金利の世の中でも諦めずに、少しでも有利な預金を探す努力は心がけたいものです。
信用金庫・信用組合が見逃せない!
そこで、少しでも高い金利が望める預金を探すのなら、信用金庫や信用組合(以下、信金・信組)が見逃せません。
一般に、比較的高金利の預金といえば、ネット銀行や地方銀行のネット支店等が有名ですが、実は、意外と見逃されているのが、信金・信組なのです。
信金・信組とは、限られた営業エリア内で活動し、その地域の発展に寄与するための地域金融機関のこと。
なんだか特別な金融機関というイメージを持っている(そして近所にあってもスルーしている)人も多いかもしれませんが、基本的には、銀行と同じと思ってもよいでしょう。
なので、われわれは、銀行と同じように、信金・信組にもお金を預けることができます(※)。
※ただし、信用組合に預金できるのは組合員のみで、組合員資格は原則、営業エリア内に居住・勤務している人のみ。
そんな信金・信組の定期預金には、銀行よりも高い金利を付けるものも多く、私自身、預金はすべて地元の信金・信組に預けています。
私の地元の地域金融機関の金利は
それでは最後に、私の地元、大阪の信金・信組ではありますが、比較的高金利の預金を紹介します。
・大阪厚生信用金庫「セルフ夢IB定期預金」
1年物 0.30%
3年物 0.35%
5年物 0.40%
・大同信用組合「貯めーる定期」
1年物 0.32%
3年物 0.40%
5年物 0.45%
10年物 0.50%
・ミレ信用組合「IB定期預金ミレッチ」
1年物 0.55%
3年物 0.60%
※2023年7月6日現在
いかがでしょうか?
ぜひ、皆さんの地元にある信金・信組も視野に入れて、隠れた高金利預金を探してみてください。
ただ、限られた営業エリア内で活動する信金・信組の情報は、テレビや雑誌などで大々的に告知されることは少なく、「自分の足」で情報を取りに行く必要はあります。
私自身、定期的に自転車で地元を巡り、信金・信組の店頭ポスターなどをチェックしています。
そして、そんな地域金融機関ならではの情報収集法によって、地元への愛着も増すという相乗効果も得ております。
ちなみに、これは個人的な感想(感覚)ですが、口座開設・預金預入時にもらえる粗品が、メガバンクや大手地銀に比べて、信金・信組では、ちょっと「いいもの」をくれるような気がします。
先日は、100万円預けて、陶器製の小皿をもらいました。
これは、小規模ながらも、地域密着がポリシーの地域金融機関ならではの心意気として、さりげなくうれしいところです。