“孫フィーバー”――息子・娘夫婦に赤ちゃんが誕生した際、祖父母が喜びすぎてしまう状態を指す。プレジデントFamily編集部が産婦人科医の稲葉可奈子さん、NPO法人孫育て・ニッポン理事長の棒田明子さんに、祖父母にありがちな「声かけ失言」の事例を聞いた――。

※本稿は、『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2023』の一部を再編集したものです。

孫を褒めたつもりで「大きいわね」が禍根を残すワケ

今どきの常識を頭に入れ直し、さぁ孫育て開始! となったとき、祖父母が戸惑うのは何をどこまでしてやればいいかということだろう。

『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2023』(プレジデント社)
『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2023』(プレジデント社)

「子育ての主体はママ・パパであって、祖父母はサポーターに徹するのが大原則です。手を出しすぎるとママ・パパが親になる練習の機会を奪ってしまいます」(NPO法人孫育て・ニッポン理事長の棒田明子さん)

代わりに重点を置きたいのが、産後間もないママのケアだ。出産後はホルモンバランスが大きく変わるうえ、赤ちゃん中心の生活リズムや生命を育むことへのプレッシャーなどでナーバスになりやすいという。

「この時期の心の状態は、大切な人を亡くしたのと同じぐらいに不安定ということが研究でもわかっています。ちょっとのことでイライラして言葉もキツくなる。動物が産んだ子を守ろうと周りを威嚇するのと同じで、『ガルガル期』とも呼ばれています。産後3カ月ぐらいまで続くことが多いですね」(棒田さん)

そんなママをいたわるのが祖父母の役割だと、産婦人科医の稲葉可奈子さんも言う。

「赤ちゃんのお世話以外は体を休められるよう、食事の支度など家事をやってあげたり。ただ、手伝ってほしいことはママによってさまざま。何をしてほしいかを聞いてみてください」

もちろん、ガルガル期に限らず、ママ・パパの気持ちを尊重するのが孫育ての基本。そっぽを向かれないよう言葉の掛け方にも注意したい。棒田さんと稲葉さんから挙がったNGワードは本文末に掲載したセリフの通りだ。

「特に気をつけたいのは成長・発達について。ナーバスな話題なので、悪気はなくても口にしないほうがいいでしょう。褒めたつもりで『大きいわね』と言っても、おっぱいやミルクの飲ませすぎを責められていると感じてしまう人もいます」(棒田さん)

喜びすぎてしまう状態を示す“孫フィーバー”に注意

成長・発達に関しては、赤ちゃんが言葉を理解するようになってからも注意が必要だ。稲葉さんによれば、孫の成長を促そうと「まだおっぱいを飲んでいるの?」といった言葉を掛けると子どもの自尊心の芽を摘み取ってしまうのだとか。

「ママ・パパの気持ちに寄り添うのは妊娠中も同じです。なかでも慎重になってほしいのは出生前診断を受けてよくない結果が出たとき。諦めるか産むかの判断はママ・パパに任せること。たとえ相談されても、話を聞くまでにとどめておき、二人が出した結論に対してサポートするというスタンスにしましょう」(棒田さん)

ちなみに、出生前診断は検査会社でも受けられるが、結果を伝えて終わりの場合がほとんどだという。

「病院では結果に応じ、カウンセリングや相談の体制を整えています。もしママ・パパから、診断を受けるかどうかについて相談されたら、カウンセリングを受けられる場所で診断を受けるといいとアドバイスしてあげてください」(稲葉さん)

一方、祖父母の過ぎた支援に困惑されるケースもある。

孫ができて喜びすぎてしまう状態を示す“孫フィーバー”はその代表だ。誕生前からベビーグッズを買いまくり、誕生後はプレゼントの嵐。おやつも与え放題となれば、ママ・パパの子育て方針もガタガタになる。

祖母と孫
写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです

棒田さんによれば、2歳までは祖父母の家と普段の生活のルールが違うと子どもが混乱してしまうため、統一したほうがよいそうだ。

「孫育てでは頑張りすぎないことも大切。孫のお世話に疲れてしまいお休みしたいときは、行政の産後ヘルパーを利用するのも一つの方法です。また孫を預かるときに活用したいのが地域の子育て支援センター。こういった施設で預かれば、『孫が来るから家を片付けなくちゃ』というプレッシャーもなくなりますよ」(棒田さん)

孫育てではおじいちゃんの活躍の場も多く、一緒に遊んだり、健診や買い物などに車を出したり。育児に不慣れでも、ママやおばあちゃんが忙しいときに見ていてくれるだけでも大助かりだとか。

子育て・孫育てに欠かせないのは家族のチーム力。みんなで赤ちゃんの成長を見守れば、喜びは家族の数だけ大きく膨らむはずだ。

(構成/上島寿子)

息子夫婦・娘夫婦にかける言葉NG8つ

●成長・発達に関すること
「まだ寝返りしないの?」
「生後3カ月のわりに小さいかしら」
「ほかの子より大きいんじゃない?」

※成長が早くても遅くても不安になるもの。また体重や身長が大きくても小さくても同様

●やり方を否定すること
「(子どもが泣きやまないとき)そんな抱っこだからダメなのよ~」

※一生懸命やっていることを否定されると傷つく。「こうしたらラクよ」と前向きな声掛けに

●母乳かミルクかの栄養の話
「母乳が足りてないんじゃない?」
「私は母乳だけで育てたのよ」

※心配しているのかもしれないが、責められているように感じる。単なる経験談でも自慢に聞こえる

●孫の自尊心が傷つくこと
「まだおっぱい飲んでいるの?」
「こんなに大きくなったのに、おむつをしているの?」

※孫の自尊心を傷つけるだけで、成長を促すことにはならない

子ども夫婦との仲を円満に保つために!

【孫育て10カ条】
1 育児の主役はパパ・ママ、祖父母はサポーター
2 パパ・ママの話を聞く
3 今と昔の子育ての違いを知る
4 とがめるより、補う
5 ほかの子、親と比べない
6 手、口、お金は出しすぎず、心と体力にゆとりを! 断る勇気も持とう
7 「ありがとう」「ごめんなさい」を言う。親しき仲にも礼儀あり
8 孫の褒め役、夢の最強応援団になる
9 自分のライフスタイルも大切に
10 老いていく姿を見せる

「孫育て・ニッポン」のサイトより

祖母と孫
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです
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