女性の視点や目線でビジネスを社会に創り出していく
2023年6月3日(土)。前日の大雨による交通網の混乱からイベント開催に不安が残ったものの、昼前には天候も落ち着き、予定どおり開催の運びとなった。まずは『プレジデント ウーマン』木下明子編集長の挨拶で会がスタートした。
『プレジデント ウーマン』では創刊以来、女性のキャリアを応援するさまざまな企画を誌面やオンラインで展開し続けているが、2020年秋からは、ブランドとコラボするキャリア女性向けの商品開発にも力を入れている。それらのすべては、“働く女性”の目線を重視しながら商品化しているのが特徴。
今回のイベントのゲストである日野佳恵子さんは、こうした女性の目線や視点から広がる新たなビジネスを社会に増やし、子どもたちの未来を明るくすることをミッションに掲げる、マーケティング会社「HERSTORY(ハー・ストーリィ)」の代表だ。
日野さん自身の経験から培った独自の“女性視点理論”と、それを取り入れることで、商品はもちろん、企業や社会が変わっていくというトークに、自然と女性リーダーたちの熱い視線と共感が集まっていく。
「『History(ヒストリー)』という言葉は、His+Storyの造語で、訳すと“彼の歩む道”。女性たちがまだ力を持たない時代、もうひとつの道“彼女の歩む道”『Herstory』もあると、女性の立場を強調するメッセージとして使われました。そのメッセージを私自身の会社名に掲げて創業、33年を迎えました。さまざまな年代や属性の女性たち、それぞれの価値観に着目し、細かく分類して、マーケティング戦略を企業とともに考えています」(日野佳恵子さん)
「君の意見を採用したら商品はいくつ売れる?」
日野さんは、1990年、まだ女性経営者が珍しかった高度成長期の昭和の香りが残る時代に起業。以来33年、さまざまな企業へ顧客起点のマーケティングを実装している。スタートは、社会人としてはじめて勤めた広告代理店を退職し、出産後に組織化したママさんたちのネットワーク。10年かけて5万人の組織をつくり上げ、女性たちの声を企業に届け続けた。以来、住宅設備、食品、車など、関係する企業、業種は多岐にわたるという。
「男性中心の社会では、女性ひとりの声ではダメなんです。私も上司やクライアントから『君の意見を採用すればわが社のキッチンがいくつ売れる?』『お前の意見は、この商品のターゲット層の意見ではない』と言われ続け、撃沈の連続でした。男性に提案する際は、数字が必要なんですね。そして、肩書も重要。一人の女性社員ではなく、社長の名刺で勝負しようと。それで起業したんです」
男性社会の中で女性の意見を伝える困難さを実感しているのか、参加メンバーの多くが大きくうなずき共感していた。
日野さんの「男性は怖がり。数字を見せることが彼らの幸せにつながるんです」という言葉は特に印象的。男性は感覚よりも“事実”である数字を重視しがちだと日野さん。だからこそ、女性が仕事を進めるうえで“データ”を活用することの重要性を強調した。
「男性を説得するには、“国が出す“社会的データ”、業界が出す“男女混合データ”そして、実際のターゲットである“購買層データ”。この3つを揃えるとほぼ、聞いてくれます」
さらに、日野さんいわく、マーケティング経済用語にはファッションのようにトレンドがあり、そのトレンド用語をプレゼンに散りばめることで、理解されやすくなるとも。この言葉には全員の笑顔がこぼれた。
社員100人を抱えるまで急成長した日野さんの会社は、2008年のリーマンショックで、縮小を余儀なくされた。社員も10名までに減らし、株価もゼロに落ちた。しかし、そうした苦労も経験してよかったと日野さんは振り返る。
「リーマンを機に、47万人の女性たちに意見を聞き、あらためて『何が本質なのか』にじっくりと向き合いました。そこで女性たちは5つの価値でモノを選んでいるということがわかったんです」
5つの価値とは、商品そのものである「基本的価値」、自分にとっての「個人的価値」、おしゃれや見た目の「情緒的価値」、世の中的にどうなのかという「社会的価値」。そして、使うと便利かどうかの「便宜的価値」。そこでもっとも重要なのが「社会的価値」なのだという。こうした「買い物行動」を中心に、女性たちの本質をより理解したからこそ、今があると日野さんはメンバーに熱く語った。
第3回イベントは、7月26日(水)にオンラインで開催決定!
質疑応答では、「現代と過去のマーケティング手法の変化があるのか知りたい」「女性向け商品のプレゼンテクニックを知りたい」「助成システムに足りない部分は」などなど、マーケティングのプロの日野さんにさまざまな質問が飛び交った。最後に日野さんは、参加メンバーたちに「今後のリーダーは、男女ではなく、国とか世界という視点でモノを見ることが大切。生き残っていくためには、グローバルな視点を持つことが必須です」とアドバイス。大きな拍手とともに、講演を終えた。
その後は、参加メンバー同士の交流会がスタート。
日野さんを囲んでの名刺交換会や、お茶を飲みながらの和気あいあいとした意見交換など、リアルの場での交流を楽しむ姿がそこかしこで見られた。
女性リーダーたちは時に、組織内で孤独を感じることもあるという。同じ状況、同じ立場のリーダーたちとの交流で、明日への鋭気を養っていくことができたのではないだろうか。
地方在住のメンバーからの熱い要望に応え、次回は、7月26日(水)19:00〜20:30に、オンライン形式により第3回「PRESIDENT WOMAN Leader’s Salon」を開催する予定。テーマは、「女性管理職のダブルキャリアを考える」だ。
『プレジデント ウーマン』は、今後も、女性リーダーたちとともに女性のキャリア構築はもちろん、女性の目線をビジネスや社会に生かす活動を行っていく。
「PRESIDENT WOMAN Leader’s Salon」への参加はメンバー登録が必要です。ご希望の方は、以下からご登録ください(登録条件などあり)。