新NISAのスタートを前に初心者が注意すべきこと
最近の日本株の上昇を目の当たりにして、「そろそろ投資で資産を増やさないとまずいのではないか」と考えている人も多いのではないでしょうか。今回は、2023年後半から24年にかけて、資産1億円を超えるお金持ちたちがどんな投資を考えているかについて、紹介したいと思います。
ご存じの方も多いと思いますが、24年から新NISAがスタートします。最大の特徴は非課税枠の拡大です。現在の制度ではつみたてNISAで最大800万円、一般NISAでは最大600万円を非課税で投資できることになっています。併用はできません。
新NISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠に分かれ、合わせて1800万円(成長投資枠は1200万円)まで非課税で投資が可能になります。また、期間も無期限になりますから、生涯、非課税での投資が可能になるのです。
新NISAのスタートを機に投資に興味を持つ人が増えると考えられますが、同時に投資初心者を狙った悪徳業者が増えることも予測されます。
岸田政権は22年に資産所得倍増プランを打ち出しました。日本の家計金融資産の半分以上を預貯金が占めていることから、これを投資につなげて資産所得を拡大させようとするプランです。
金融庁が準備する「中立的アドバイザー」の問題点
しかし、日本人は金融リテラシーが低いといわれ、このままで投資を始めてしまうと、知識不足のために大きな損失を被ったり、金融詐欺に遭ったりしかねません。そこで金融庁では、消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスを提供できるアドバイザーの育成を検討しています。
日銀の金融広報中央委員会が中心になって、中立的なアドバイザーの認定をおこなう金融経済教育推進機構(仮称)の設立準備を進めています。
この場合の中立的なアドバイザーとは、金融商品を販売せず、アドバイス報酬や相談報酬のみを受け取っている人が想定されています。最近は特定の金融機関には属さず、資産運用のアドバイスをおこなうIFA(資産アドバイザー)が浸透しつつありますが、彼らは運用プランの提案から、商品の販売までワンストップで提供しているので、金融庁の考える中立的なアドバイザーには該当しません。
では、どんな人が該当するのでしょうか。たとえば、金融機関などでファイナンシャルプランナーとして仕事をしていた人がリタイア後にアドバイザーになる、専業主婦がファイナンシャルプランナーとなりアドバイスをおこなう、副業でファイナンシャルプランナーとしてアドバイスをおこなう……などのケースが多くなると予想されます。
「誰に資産運用の相談をするか」慎重に検討を
当社もプロとして、資産運用アドバイスをおこなっていますが、アドバイスだけでなく金融商品や不動産の仲介、媒介をしているので中立的なアドバイザーにはなれません。ただ、中立的であることが本当にお客さまのためになるかは疑問を持っています。アドバイザーであれば中立的であるよりも、お客さまの側に立つべきなのです。
また、アドバイザーの認定に行政がお金出すので、具体的なアドバイスはしにくいはずです。何かあったときに責任が取れないので、お客さまから「私の場合はどの商品が向いていますか」と聞かれても、具体的な商品は提示できないでしょう。結局、アドバイスが一般論で終わってしまう可能性が高いでしょう。
多くの方は、一般論ではなく、自分は具体的にどうしたらいいのか知りたいと思っているはずです。中立的と言うと、一見有益なアドバイスが受けられそうです。でも、本当に自分にとって有益なのかは人によって大きく変わりそうです。
金融庁が進めているアドバイザー制度が最終的にどうなるかはわかりませんが、これから投資を始めようと考えている人は、誰に相談するかを考えるきっかけにしていただくのがいいでしょう。
今年後半以降に有望な投資先とは
では、23年後半以降に投資をするなら、何が有望でしょうか。
どんな商品がよいかは、投資期間や目的などによって異なりますから、一概には言えません。ただ、私が知っているお金持ちの多くは米国株を狙っています。
米国はインフレを抑え込むために、22年4月以降、利上げを続けてきましたが、ようやく天井が近づいてきたようです。米国はこれから景気後退局面に入る可能性が高まっており、景気後退とともに金利の引き下げ局面に入ることが予測されていれます。
過去の株式市場を見ると、金利低下局面は株価にとって厳しい時期です。つまり、米国株はこれから下がる可能性が高いということです。普通の人は株価が下がることを嫌がりますが、お金持ちは歓迎します。安く仕込める時期だからです。
今回の利上げは急激かつ大きな幅で行われてきましたので、その分、反動も大きくなる可能性があります。お金持ちはそれを見越して、どこで仕込もうかと待ち構えているのです。
実際に米国株が下がるかどうかは誰にもわかりませんが、米国経済は景気後退に入り、株価も下がる確率が高いと考えているのです。
気の早いお金持ちはすでに買い始めている
気の早いお金持ちの中には、すでに買い始めている人もいます。米国の代表的な株価指数であるS&P500は、21年12月をピークに22年10月までに20%以上、下がりました。このときをチャンスと考えて、第1弾として買っています。お金持ちは「久しぶりに買いのチャンスが来たよねー」と喜んでいます。
その後は、上昇に転じていますが、私は本格的な下げが来るならこれからと考えています。過去のケースを見ても、利上げをしている間よりも、利下げをして少し世の中がホッとした頃に本格的な経済ショックが来るケースが多いのです。それを狙っているお金持ちも多いのです。
お金持ちの中には短期間で資産を増やした人が少なくありません。長期にわたってチャレンジは続けているのですが、ある時に資産が急成長する時期を迎えるのです。ビジネスには黎明期→成長期→成熟期→衰退期というサイクルがあります。それと同じように資産の成長にサイクルがあり、低迷する時期がしばらく続き、ある時期に一気に増えるのです。
先進国の中で人口が増え続けるのは米国のみ
つまり、特別な時期に、その時期にふさわしい方法を見つけて実行した人たちが、短期間で爆発的に資産を増やしています。私はこれを「チャンスの扉」と呼んでいます。チャンスの扉は、特別な人たちだけに開くものではありません。実は誰の前にも開いています。ただ、多くの人が気づかないだけです。
そのチャンスの扉がこれから開く可能性があります。その時に米国株を買うのは大きなチャンスをつかむことになります。米国経済は成長が鈍化すると心配する人もいますが、米国は先進国の中で唯一、人口が増えていく基盤を持っています。長期的に人口が増えれば経済は発展しやすくなります。また、テキサス新幹線が計画されるなど、社会インフラの整備の余地がまだまだあるのが米国です。さらに、AIなどのIT技術に代表されるように、技術進歩に伴う生産性の向上に関しても米国が優れています。これら経済成長の3要素がすべてそろっている先進国が米国なのです。日本や欧州も株価が上昇する局面が来ていますが、長期的には経済成長力の差によって投資成果が米国に劣ってしまう可能性が高いでしょう。
「貧乏サイクル」を抜け出して「お金持ちサイクル」へ
チャレンジをしなければいつまでたっても普通の人から抜け出すことはできません。普通の人は底値圏ではなかなか手を出せず、皆が投資してだいぶ値上がりしたところでようやく買いにいきます。
その結果、高値づかみとなり、大幅に下落したところで怖くなって売却してしまいます。「貧乏サイクル」のはじまりです。
本当のお金持ちは経済ショックなどで株価が暴落するような時期、みんなが投資に目を向けていないときにこそ「集中」して買います。それはいつまでも持ち続けるわけではありません。短期ではありませんが、株価が上昇しみんなが浮かれて買いに走っているようなときにある程度売却し、利益を確保し現金比率を高めます。これが「金持ちサイクル」です。
「貧乏サイクル」から「金持ちサイクル」に入ることができれば、次のチャンスに投資できる金額がグンと増え、これを繰り返します。あるお金持ちは「人生で経済ショックを2回はつかめ」と言っていました。何回か金持ちサイクルを繰り返すことができれば、資産を大幅に増やすことができるかもしれませんね。