隠れ教育費を賢く攻略して2、3割の節約
ファイナンシャルプランナーの橋本絵美です。家計改善のアドバイスを中心にセミナー講師やコラムの執筆などを行っています。共働きパパママ世帯を中心に、新婚ご夫妻から退職後のご夫婦までさまざまなご家庭の家計を改善してきました。
また、お金のやりくりに困っている人はモノのやりくり、お片づけにも困っているもの。なので、ファイナンシャルプランナーと併せてお片づけプランナーとしても活動しています。プライベートでは2男4女、6人の子どもの母として育児と家事と家計を切り盛りしています。
昨年は中学校、小学校のダブル入学で、入学準備に何かとお金がかかりました。小学校と中学校は義務教育ですが、いわゆる隠れ教育費として小学校入学から卒業までにも毎年いろいろと購入するものがあったなぁというのが実際子どもたちを卒業させてきた中で感じた印象です。
文科省が実施した令和3年度子供の学習費調査によると、保護者が支出した1年間・公立小学校における子ども一人当たりの学校教育費のうち図書・学用品・実習材料費等は2万4286円ですが、わが家では、「必要な機能を備えたものを安く買う」ことを基本としています。
その方針を徹底したので学用品に関してもおそらく普通の家庭の2、3割は低く抑えられたのではないかなと思います。そんなわが家の経験から、隠れ教育費を賢く攻略する方法をお話しします。
ランドセルだけではない…意外と多い小学校入学準備品
小学校の入学準備は細々とそろえるものが多く、小さなものでもひとつずつ記名しなければならず地味に大変です。
自治体によっては全員に無償提供される物もありますが、基本的には各自準備をしなければいけません。中にはサイズ指定があり、既製品で準備しにくいものもあります。
ランドセルは新品でなくてもいい
中でも、一番高額なものがランドセルですが、最近はラン活といわれるランドセル選び活動が注目されています。ひと昔前はランドセルの色は赤か黒が定番でしたが、今はピンクや紫、オフホワイトなどさまざまな色のラインナップがあります。刺繍や装飾が施されたものや、オーダーメイド品など選択肢が増えたことで、ランドセルを選ぶためにいろいろなお店に行ったり、ネットで調べたりという、ランドセル選びのための活動が必要になってきたということです。
それに伴って、ランドセルの価格は上がってきています。高額なものになると10万円近くするものもあり、平均でも5、6万円が相場といわれています。高額なこともあり、ランドセルは祖父母が入学祝いとして購入するケースが多いようです。わが家でも当初は祖父母が購入してくれていました。
ですが、長男、長女が卒業したのを機にお下がりを導入することにしました。長男のランドセルは入れ替わりで入学した近所のお友達がぜひ譲ってほしいと言うので、お下がりで差し上げました。長女のランドセルは四女が使います。
キレイなランドセルを見せたら交渉成立
ランドセルのお下がりと聞くと、え⁉ と思われる方もいるかもしれません。私も長男長女の入学の頃はランドセルは新品が当たり前と思っていました。ですが、習い事のユニフォームのお下がりをいただいたり、制服や洋服などのお下がりをいただいたりする中で、「ランドセルも新品にこだわる必要はないのかもしれない」と考え方が変わってきました。
祖父母は上の子たちと同じように四女にも新しいランドセルを買うよ、と言ってくれたのですが、「まだキレイで使えるランドセルをわざわざ処分して新しいものを買うよりも、長く使った方がいい」「他にもいろいろそろえないといけないものがあるからお祝いの方がありがたい」ということを伝えました。
四女にはカバーをはずしてキレイなランドセルを見せたらご満悦だったので、交渉成立しました。これまでも長女からお出かけ用のリュックサックのお下がりをもらったりしていたので、抵抗が少なかったのかもしれません。
6年間で処分してしまうには惜しい高級かばん
長男のランドセルを差し上げたお子さんもお下がりだからと嫌がることもなく、喜んで背負ってくれました。もし、周りの大人が「お下がりなんてちょっとね……」などと言っていたら本人も嫌がっていたかもしれませんが、ご両親が「キレイ! キレイ! 全然いい!」と喜んでいたので子どもさんもその気になったのかもしれません。
冷静に考えるとランドセルは5、6万円もする高級かばんです。6年間で処分してしまうには惜しいものです。使い方にもよると思いますが、透明カバーをつけていたせいか、長男長女のランドセルは6年間ほぼ休まず使用していたにもかかわらず、キレイなままでした。であるならば、ユニフォームや制服のようにお下がりにしてもいいのではないか、と思ったのです。それに、1年生の時は黄色いカバーをつけているので、多少古かったとしても隠れてしまいます。
もちろん、「やっぱり子どもには新品のランドセルを買ってあげたい。おじいちゃんもおばあちゃんも買うのを楽しみにしているのだから」という方に、無理におすすめするつもりはありません。こんな選択肢もありますよと、私のクライアントには、発想のヒントとしてご紹介しています。
新品を安く買う方法もある
新品がいいけれど、6万円は家計が厳しいという場合も、安く購入する方法があります。ランドセルは毎年改良されたものや新しいデザインのものが発売されています。ですから、昨年モデルのものや展示品、アウトレット品などは、半額以下や安いものだと1万円以下で購入することもできます。店頭にも割引価格で展示されていますし、ネットショップやフリマアプリでも出品されています。
6年間使うのだから頑丈なものを選びたいと思うかもしれませんが、ランドセルは基本的にはどこのメーカーでも6年保証がついています。どのランドセルを選んだとしても6年保証がついているので、もし壊れても修理してもらえます。アウトレット品やフリマの場合は6年保証がついていないこともあります。ただ、心配はいりません。なぜなら、ランドセルが壊れて修理したという話は私は今まで一度も聞いたことはありません。ランドセルは、そんなに壊れることはないし、壊れても修理するほどではないのかな、と思います。
入学後も次々必要になってくる学用品を安く手に入れる方法
さて、入学後も水着、ピアニカ、リコーダー、絵の具、習字道具、彫刻刀、裁縫道具など、毎年何かしら新しい種類の学用品が必要になります。これらの学用品は、必要な時期になると学校から注文袋が配られます。でも、学校から配布されたからといって、必ずしもこの注文袋で注文する必要はありません。各自で購入することも可能です。ネットショップなどで購入すると2、3割安く購入できます。
注文袋の金額の内訳を詳しく見ると、価格の大部分が肝心の中身ではなく、カバーやバッグの代金だったりします。メーカーのマークがついていたり、デザインが凝っていたりと、バッグの値段が高くなっています。選べるバッグの種類が何十種類もあったりするので、結局みんなバラバラのバッグで持ってくることになります。ですから、中身だけ注文袋で購入し、外側は家にある手提げ袋で代用するのもありです。
これらも購入せずにお下がりが利用できるものもあります。水着は成長に伴って買い替えますのでお下がり可能です。ピアニカも低学年しか使いませんでした。ソプラノリコーダーは小学校までで、中学校になるとアルトリコーダーになります。ただし、絵の具、習字道具、彫刻刀、裁縫道具は中学でも使用するので、お下がりは難しいかもしれません。わが家では知り合いの大学生になったお嬢さんからお下がりをいただきました。
多様性が重視される社会になってきました。ランドセルの色も一人ひとり違っていてロッカーがカラフルになっています。新品を買うべき、みんなと同じものを買うべきという固定観念は、この際捨ててもいいのではないでしょうか。
※学用品の中には学校や自治体によっては学校備品にしているものや、支給される場合もあります
貯め時を逃さないように
学用品を一つひとつ節約しても、たった数千円ずつじゃないかと思うかもしれません。ですが、本当に教育費がかかるのはこれからで、授業料のかからない小学校の時期は一番お金の貯め時なのです。この貯め時に節約できるところは節約して、今後の教育費として備えておくことをおすすめします。高校からは授業料がかかります。今まで新学期になると当たり前のように配られていた教科書もタダ(無料)ではありません。私立の場合は入学金も高額です。高校進学後も大学受験のために塾に通ったり、入学金や授業料にまとまったお金が必要になります。
もし今、毎月1000円でも節約して5%の利回りで積み立て運用していけば、18年後には約35万円になります。少しでも将来のために今できることをやっておくと、後々身を助けることになります。
「無償化」という言葉が独り歩きしている
でも高校も大学も無償化されたんでしょ? とおっしゃる方もいます。無償化という言葉が独り歩きしていますが、誰でも無償となるわけではなく、所得制限があります。また、支給される額に上限があるので、上限額以上かかる場合は完全に無償ではありません。
【高等学校等就学支援金制度(高校無償化)】
高校無償化、私立高校無償化といわれる高等学校就学支援制度では、公立高校の場合年11万8800円、私立高校の場合39万6000円を上限として支給されます。授業料がそれ以上の場合は超えた部分は自己負担となります。入学金や教科書代、制服等は自己負担です。
また、先ほど述べた所得制限があり、年収590万円以上になると支給上限が11万8800円となり、年収910万円以上になると支給はされません。
※年収は目安であり、扶養やその他控除により異なります。
【高等教育の修学支援新制度(大学無償化)】
大学はどうなっているでしょうか。大学無償化といわれる高等教育の就学支援制度では授業料免除と給付型奨学金の2種類の支援があります。進学先の種類によって支援金額の上限があります。また、所得制限の区分が3段階あり、年収の区分に応じてそれぞれ減額されるため、誰もが完全に無償となるわけではありません。
今後、制度が変更されたり、新たな少子化対策が発表されることもあるかと思いますが、無償化などと聞こえのいいワードだけを鵜呑みにせず、その都度自分が対象であるのかを確認するようにしましょう。
まとめ
小学校の隠れ教育費の攻略法から高校、大学の就学支援まで少し幅広い話になってしまいました。小学校のうちは親自身も若くて働き盛り、子どもはかわいい盛りで何でも買ってあげたくなり、それでも家計は成り立つと思うかもしれません。ですが、ここが将来のための、資産を増やすチャンスなのです。大学までの道のりは長く、かかるお金もどんどん高額になり、しかもまとまった金額が必要になってきます。国からの支援も限定されたものが多く、全員が対象となるわけではありません。支援が手厚くなるとその後の増税も懸念されます。自身の定年後にも学費がかかるという人も少なくありません。子どもが小さいうちから将来を見据えての今のお金の使い方を考えることをおすすめします。