コロナ禍の規制が緩和されつつあるいま、あやしい投資セミナーも復活している。ファイナンシャルプランナーの藤原久敏さんは「あやしいセミナーほど人間心理が研究し尽くされていて、魅力的に感じるので注意してください」という――。
セミナー会場で講演する人
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あやしい投資セミナーの5つの共通点

一時はコロナ禍により、ほぼ全面的に中止されていた投資セミナーも、最近では、平時に近い状態で開催されるようになってきました。やはり「リアル」に話を聞きたい人も多く、一定の需要はあるようですが、中には「あやしい」投資セミナーもあるわけです。

そこで今回は、「投資セミナーの見分け方(あやしいセミナーと安全なセミナー)」について書きました。

私自身、過去、多くの投資セミナーに参加してきましたが、中には、「あやしい」投資セミナーもありました。

そこで気付いたのが、以下のような共通点でした。

1 とにかく、不安を煽ってくる

・不安を煽る定番フレーズとしては、「老後2000万円問題」「少子高齢化」「ハイパーインフレ」「超円安」「国家破綻」「年金・医療制度崩壊」など。
・流暢なトークや、臨場感のあるスライド・音楽など、人間心理を研究し尽くした演出をフル活用。
・とにかく不安で頭をいっぱいにさせて、「不安を取り除くにはコレしかない」と、投資商品を勧めてくる。

2 興味関心を引くべく、旬なテーマを切り口にしてくる

・少し前なら「FX」「仮想通貨」、最近であれば「FIRE」「NFT」などでしょうか。

3 一体感を演出してくる

・「一緒にやろう」「共に成功しよう」など、すでに仲間になったかのごとく、接してくる。
・投資セミナーと思ったら、ネットワークビジネス勧誘セミナーであることも少なくない。

4 セミナー講師は、アドバイザーや先生との立場で、接してくる

・こちらの悩み(不安)について相談に乗りますよ、との立場で接してくる。
・講師は、いかにスゴイ人であるかをアピールしてくる。

5 その場での「即決」を迫ってくる

・「今、決断できない人は、何もできませんよ」「今、やらないと何も変わりませんよ」など、少々キツメに煽ってくるケースも。

あやしいセミナーには「勧誘」がつきもの

「洗脳」というと大袈裟かもしれませんが、リアルならではの臨場感を最大限生かして、判断力を鈍らせようとの魂胆をプンプン感じますね。

あやしい投資セミナーでは、ほぼ間違いなく、何らかの「勧誘」があります。

そして、その勧誘してくる商品・サービスは高額であったり、手数料が高かったりするケースがほとんどです。また、その商品・サービスの内容は非常に分かりにくく、実は、ネットワークビジネスの勧誘であることも少なくありません。

スマホを持ち顔を手で覆う女性
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中には詐欺まがい、というか詐欺のケースもあります。

実際、私が行ったあやしい投資セミナーの主催者が詐欺容疑で逮捕されたことを、後日、新聞で知ったことも何度かありました。

もちろん、前述の共通点の多くを満たすからといって、それが絶対に「あやしい」投資セミナーとは限りませんが、その可能性は意識しておいた方がよいでしょう。

知人が遭遇したあやしいセミナーの内容

先日、知人が「資産逃避」「不労所得」をテーマにした投資セミナーに行ってきました。

テーマだけで、あやしい匂いがプンプンしますよね。

最近では、FPとして雑誌等に登場する機会も増えて少々自意識過剰の私は、(とくに「あやしい」と思われる)投資セミナーに行く機会がメッキリ減っており、ここぞとばかりにアレコレ聞いてみました。

聞いた内容をザックリまとめると、そのセミナーでは「昨年からの超円安」を皮切りに、「少子高齢化」から日本経済の危機的状況を語り、さらには「ウクライナ情勢」を切り口に、中国による日本侵略の可能性といった地政学リスクを持ち出し、これでもかというくらいに不安を煽ってきたようです。

そんな状況の今、「皆さんの資産を守りたい、との使命感から」とある海外ファンドを勧められたそうです。

ファンドの詳細は難しくてよく分からなかったそうですが、とにかく、過去の運用実績から年率10%は狙えるとアピールが凄かったとのこと。

クオリティーの高い資料やデータは逆にあやしい

立派な資料に、投影されたスライドデータ(写真や動画等)のクオリティーも高く、そして、何といっても(業界では著名らしい)講師の話が面白かったらしく、参加者は10名強だったようですが、会場全体の一体感は凄かったようです。

ただ、セミナー後の商品勧誘時には(一人ひとりの席に社員っぽい人がやってきて)個別対応となり、その際、「で、どうするんですか」的な威圧感が、すごく嫌だったようです。また、次回セミナーへの友人・知人紹介のお願いがうっとうしく、そこで一気に熱が冷めたとのことでした。

私はそれを聞いて、昔と全然変わってないな、と感じました。

前述の共通点も満載でして、かつて、私がよく参加していたころの、典型的な「あやしい」投資セミナーそのものでした。

時代は変わっても、人間相手の勘所は変わらないものだなぁと、妙に感心しました。

とりあえず知人には、それが詐欺かどうかまでは分からないが、少なくとも、ファンドに係る諸々の手数料は高額であることは間違いないだろうとは伝えました。

あやしいセミナーはエンタメ性が高い

皮肉なことに、その投資セミナーがあやしければあやしいほど、表面的にはしっかりとしたセミナーであることを強調するためか、そのクオリティーは高く、また、非日常感を演出するためか、エンターテインメント性も高くなっています。

すなわち、あやしい投資セミナーほど魅力的で、内容も充実しているものが多いのです。

実際、私もかつては、そんな魅力にハマってしまい、冷静なときなら絶対に買わないような、手数料の高いファンドで大損したこともありました。

投資詐欺商品に手を出すことはありませんでしたが、それはたまたま、その商品が100万円単位と高額ゆえに手が出なかっただけで、当時、お金に余裕があれば投資していた可能性は高かったです。それくらいに、あやしい投資セミナーは魅力的なのです。

投資について勉強しようと、うっかり、そんなあやしい投資セミナーに行ってしまうと、かなり危険だと言わざるを得ません。

当然ながら、全力で避けたいところです。

安全な投資セミナーとは

ただ、あやしいかどうかは、事前に主催者やテーマ等からある程度は予測できるとはいえ、実際には行ってみないと分からないものです。

そこで、ここならまず大丈夫だろう(安全だろう)、という投資セミナーをいくつか紹介したいと思います。

日本FP協会主催のセミナー

日本FP協会とは、広く一般市民に向けてファイナンシャル・プランニングの啓発と普及を図るNPO法人です。日本FP協会以外にも、マネー教育に力を入れている素晴らしい団体はたくさんあるとは思いますが、私が自信をもって勧めるのはこの団体です。

なぜなら、私自身、この日本FP協会大阪支部で10年間ボランティアスタッフを務め、各種セミナーや相談会を運営してきたからです。そんな実体験から、「無料で」「質の高い」「勧誘の一切ない」セミナーであると断言します。セミナーテーマは投資以外にもいろいろあって、日本全国で、わりと頻繁に開催されています。

日本FP協会HP

国や自治体、公的機関主催のセミナー

たとえば、金融広報中央委員会主催のセミナーなど、こちらも「無料で」「質の高い」「勧誘の一切ない」セミナーとなっており、あやしさ度合はゼロと言えるでしょう。

金融広報中央委員会HP(知るぽると)

ただ、開催頻度は多くはなく、募集人数も限られていることから、実際に参加するとなると、地元自治体主催のセミナーが現実的でしょう。自治体からの情報(広報誌・HP・パンフレット等)をチェックすれば、わりとアチコチで開催されているものです。

とくに地元市町村など狙い目で、地元公民館や図書館の情報をこまめにチェックすれば、意外と身近なところで、投資セミナーが開催されているかもしれません。

金融機関主催のセミナー

銀行や証券会社等が主催する一般顧客向けセミナーで、これも基本無料です。

多くの金融機関が定期的に実施しており、会社挙げての数百人規模のものから、支店開催の数人~数十人規模のものまで、その規模やテーマも様々で、探せば、必ずや自分に合ったものが見つかるでしょう。

セミナーでの「勧誘(商品・サービスの案内)」はあっても、不快なほどに強引な勧誘はないはずです。

個別勧誘が不安な人は、数百人規模の大きなセミナーであれば、個別勧誘は(物理的にも)まずないと思われるので安心でしょう。また、投資セミナーに慣れていない人であれば、何度か足を運んだことのある支店で開催されるセミナーであれば、行きやすいかもしれませんね。

そういった視点から、投資セミナー初心者の方にとって、金融機関主催のセミナーはお勧めと言えます。

コロナ禍においても、行動制限はしない流れになってきていることから、今後ますます、リアルの投資セミナーは増えてくることでしょう。

我々にとって、情報収集の選択肢が増えることは好ましいことではありますが、それに伴い、あやしい投資セミナーも増えてくるはずです。

そんな中、今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。