※本稿は、なにおれ『31歳、夫婦2人、月13万円で、自分らしく暮らす。』(大和出版)の一部を再編集したものです。
一人暮らしで年240万円の生活費がかかっていたワケ
まずは、僕の過去5年の年間生活費を公開します。
お金を使って仕事の苦しさから逃れようとしていた5年前と、少ないお金でも楽しく暮らせるようになった1年前までのものです。
2017年の生活費は、約240万円でした。月換算でおおよそ20万円になります。
この年は友人2人と一軒家を借りて、僕を入れて男3人でルームシェアをしていました。家賃を節約することが目的ではなく、どうにか毎日を楽しく生きられないかと、むしろお金を使うことを目的にしていたくらいです。
当時は、海外営業の仕事が自分に合っていないことを自覚しながらも辞める勇気もなく、苦しさを紛らわせるために派手にお金を使っていました。
そのため「人から認識される自分」と「自分だけが知っている自分」との落差が激しい時期でもありました。
友人らと一緒に暮らした記憶は、いまでも人生で一番といっていいほど楽しい思い出です。それと同時に、どれだけ私生活で楽しいことをしても、仕事の苦しさからは逃れられないことを痛感します。
2018年の生活費は、約180万円でした。月にならすと15万円ほどです。
この年に当時の仕事に限界を迎え、転職を決意します。それに合わせて家族や友人が近くにいない、縁もゆかりもない土地に移り住みます。
また、転職によって得られた有給消化の1カ月で、「自分はどう生きたいのか?」を人生ではじめて真剣に考えました。
結果的に、持っているものを手放したり、人間関係を整理したり、副業としてブログを始めたりと、労働環境や生活環境を大きく変えることとなり、生活費が大きく下がりはじめます。
月8万円あれば豊かな暮らしが可能
2019年の生活費は、約140万円でした。
副業ブログでお金のことを発信することを決めます。記事を書くためにお金の本を読んで勉強したり、学んだことを自分の暮らしで試してみたりと、お金と暮らしについて、朝起きてから夜布団の中で目を閉じるまでずっと考える。
そんな日々を繰り返しているうちに、少ないお金でも楽しく暮らすノウハウが自分の中に蓄積しはじめます。
気がつけば、毎月の生活費は11万円ほどで落ち着くようになっていました。
そして、2020年。この年の生活費は、おおよそ100万円でした。
2年ほど時間をかけて暮らしを整えてきたこともあり、月8万円もあれば豊かさを感じて暮らせるようになっていました。
会社員として働きながらでも月8万円で暮らせることが体験としてわかり、「もし会社を辞めれば月5万円でも十分に暮らせるな」と確信します。
そのため、会社を辞めて生きていくことが現実的になった頃でした。
結婚し、一人当たりの生活費は80万円に
ところが、2021年には結婚をします。
見栄や世間体は全部捨てて、家賃の安い地方に移住し、1人でひっそりと生きていくつもりでした。
ですが、転職先の職場でいまの妻と出会います。
やりたくないことに縛られ、生き苦しさを感じている僕とは真逆で、毎日を自然体で過ごす妻。たくさんの会話を交わす中で、「この人となら1人で生きるよりも楽しく生きられそうだ」と思い、結婚を決めました。
結婚をしたことで必要な出費もありましたが、2人で200万円の生活費でした。
1人当たりに換算すると、年間100万円(月8.3万円)になります。
最後に、直近2022年の生活費も紹介しておきます。上半期(1~6月)を終えた時点で、約80万円になります。単純計算で、通期では2倍の160万円で着地予定をしています。
つまり、1人当たりの年間生活費は80万円(月6.5万円ほど)の計算になります。
ということで、過去5年間の年間生活費(1人当たり)の推移をまとめると、冒頭の図表1のようになります。
見事に毎年使うお金の額が減っています。
そして、この右肩下がりの生活費を実現できるように努力してきたことこそが、僕が自分らしく生きられるようになった最大の要因でもあります。
お金を使うほど「生活のための労働」が必要になる
お金は大切です。お金は人生を豊かにしてくれます。「お金なんてなくても幸せだ」といえるほど、僕は強い人間ではありません。
ですが、「お金」と一言でいっても、「お金を持っていること」と「お金を使うこと」は全くの別物です。
僕は少ないお金で暮らすようになるまで、このことを一緒くたにして考えていました。
お金持ちだからといって、必ずしもお金をたくさん使って暮らしているわけではありません。そして、お金をたくさん持っているからといって、必ずしもお金を使わなければいけないわけでもなかったのです。
それどころか、お金をたくさん使って暮らすことには代償があります。
その代償とはすなわち、生きるために働いて稼がなければいけないお金が多くなることです。「生活のための労働」といったほうがわかりやすいかもしれません。
はじめはちょっとした贅沢のつもりでも、次第にその贅沢をすることが当たり前になっていきます。すると、当たり前になった贅沢な暮らしを維持するためには、より多くのお金を稼がなければいけなくなるわけです。
生きづらさの正体
本来、お金を使うことは、豊かに暮らすことが目的のはずです。
おしゃれなインテリア家具を買うのも、おいしいレストランで食事をするのも、たまには旅行をするのも、すべては豊かに暮らすためのもののはずです。
それがいつの間にか、「いまの暮らしを維持するには、仕事で多少いやなことがあっても我慢するしかない」という状態に変わります。
つまり、元々は豊かに暮らすためにお金を使っていたはずが、自覚がないうちに、お金を使って暮らすことが苦しさの根源にすり替わってしまうわけです。
生活にかかるお金を年々減らしていく中で、僕はこのことを強く実感しています。
海外営業の仕事の辛さを誤魔化すためにお金を使って遊んでいたとき、お金を使えば使うほど、辛いと感じる仕事から逃げられなくなっていました。
「いまの暮らしを続けるには最低でも月20万円は必要で、将来のことを考えると年収を下げる転職なんてできない」
そう思っていました。
結局は自分自身で、自分の首を絞めていたわけです。
そして、この「生きるためにはやりたくない仕事を続けるしかない」という「選択肢のない状態」こそが、生きづらさの正体です。同時に、自分らしく生きられない根本的な原因でもあります。