ド底辺からの社会人スタート
私は平均的な家庭で育ち、高校までは何不自由なく好きにさせてもらいました。
ただ大学時代は、仕送りは一切なく、奨学金を借りつつ自分でもアルバイトをしなければ、家を出て大学進学はできない水準でした。
なので在学中は本当に貧しい生活でした。同級生からも「おまえみたいな貧乏なヤツ初めて見た」と言われましたし、いつもヨレヨレの服を着ていたからか「午堂くんて日本語うまいね」と貧しい留学生と間違えられたこともあったぐらいです。
さらにちょうど就職氷河期で、どこにも就職できずフリーター生活を余儀なくされ、最初に就職した会社も1年でクビになったという、かなりド底辺でのスタートでした(こうした原体験がお金に対するコンプレックスとなり、マネー関連の情報発信をすることになったのかもしれません)。
それから10年後、外資コンサル勤務で年収は1200万円となり、「ついに年収1000万円を超えたか」とある種の達成感みたいなものがありました。
このあたりまでは普通のサラリーマンの感覚でした。
富裕層と交流すれば見える世界が変わる
しかし認識が変わったのは、のちに起業して投資不動産の仲介業を始め、知り合う友人知人が起業家や経営者、投資家ばかりになってからです。
年収1億円くらいの人は普通にゴロゴロいますし、経営する会社の年商や保有資産が100億円を超えるような人とも出会います。
たとえば身なりは普通のおじさんだと思っていたら十数社のオーナーで悠々自適とか、まだ20代後半なのにFX(外国為替証拠金取引)の取引ロットが1億円単位の投資家とか、年間家賃収入10億円のメガ大家・ギガ大家とか、いままでの自分の感覚とはまるで次元が異なるお金持ちとの交流が増えていったのです。
すると、自分の中にあったビジネスのスケールイメージ、稼ぐ金額も大きく跳ね上がり、当時の年収1200万円程度で達成感を得ていた自分がいかにちっぽけだったか、世界観が変わりました。
同時に、会話の中身、思考の中身も変わりました。
たとえば飲み会に誘われて行ってみると、そこにいるのはほぼ起業家・経営者で、話題の中心はビジネスや儲け話です。
「あれは儲かる」「あの会社はこれで儲かっている」「これがビジネスになるんじゃないか?」とか、誰かの名前や会社名が出たら、すかさずスマホで検索し、「おお~、この人、こういう人なんだって。こんなことまで手広くやってるよ」という話で盛り上がったり、「新しいあのソーシャルサービス、こうした方が売れるんじゃね?」と「勝手にコンサル大会」が始まります。
そして毎回誰かが別の起業家を連れてきてはこうした会が繰り返され、人と情報のネットワークが広がるのです。
それで自分自身も、普段から誰かのビジネスモデルやマネタイズ技術を観察したり研究したりするのが習慣になりました。
どうすれば富裕層と交流できるか
ひとたび富裕層と交流を持ち、彼らのものの見方や考え方を学ぶことができれば、自分の中のチープな常識や貧困な価値観がひっくり返され、見える景色が変わり、世の中にはたくさんのチャンスが転がっていることに気がつけるようになる。
「目に映る世界が変わる」「住む世界が違う」というのが言葉だけでなく体感として実感できます。
ではどうすれば、富裕層との接点を持ち、彼らの思考パターンや行動パターンを自分のものとできるか。
一番早いのは自ら起業することです。前述の通り起業すれば、レベルの違いはあったとしても、出会うのも紹介されるのもほぼ起業家になり、出会う機会が劇的に増えます。
起業しなくとも、例えば副業や投資を始めたら、それをブログなりSNSなりで発信すれば(副業禁止でなければ実名が望ましい)、誰かが見つけてくれてファンになったり、オフ会をやりませんかと声がかかったり、時には出版や講演のお誘いが来ることもあります(私自身、サラリーマン時代にペンネームで発行していたメルマガがきっかけで出版に至りました)。
自分という存在はここにいて、こんなことに興味を持っていて、こんなことをしています、というフラグを立てておくのです。
何もなければ誘いや問い合わせがくることはありません。
交流会の鉄則
また、起業家・経営者が集まるイベントやシンポジウム、オンラインサロン、あるいは勉強会などに参加する方法があります。交流会や懇親会があれば、それにも参加する。
そこで注意すべきはお客さまや傍観者にならないようにすること。もしそうなってしまうと彼らの商売のカモになって終わりです。
大事なことの一つは「自分はこういう課題の解決に興味を持っていて、こんな活動をしています」という自己紹介ができるかどうかです。
彼らは一般人の自己紹介は聞きたくありませんが、ビジネスチャンスやビジネスモデルに関する話題は面白がります。だからそこで彼らの気を引けるテーマを語ることができれば、「キミ面白いね」とSNSを交換したりして交流が始まる可能性があります。
ちなみに当時ヨチヨチ起業家だった私が、なぜ富裕層に相手にしてもらえたかというと、投資用不動産を商材にしていたという理由もあるとは思いますが(富裕層には不動産が大好きな人が少なくない)、彼らの話や教えをフンフンと素直に聞き愚直に実践したことや、目下の相手でも敬意を持って接し、こちらからも情報提供をしたり顧客や仕事や取引先を紹介したり、あるいは酒食に招いたりして接触頻度を増やしたこともあるのではないかと思っています。
また、書籍を出版するようになると著者の知り合いも増えていくのですが、著者の多くは事業家ということで対等に付き合えるようにもなりました。
交流できなくても本から学べる
仮に身の回りにそういう場がなくても、簡単で誰でもできる方法が読書です。
1500円程度という格安の値段で富裕層や起業家の世界・価値観を知ることができますから、手軽な自己変革手段といえるでしょう(あるいは図書館ならタダで借りられる)。
私自身、起業家が書いた本に感銘を受けて起業を目指すようになりましたし、『金持ち父さん貧乏父さん』の影響で資産運用を始めました。
そして今は自分が執筆をする立場となり、本コラムでは富裕層や起業家・経営者の行動習慣を考察し紹介していますし、書籍『年収1億稼ぐ人、年収300万で終わる人』『年収1億円を稼ぐ人の頑張らない成功法則』(いずれも学研プラス)も同様です。
ほんの一部でも試してみよう
ただし、書籍やコラムを読んだだけでは、相応の感受性や行間を読み解く読解力、実行力がなければ、意識や習慣を変えることは難しいとも感じます。
私の著作の読者でも、「本の内容を忠実に実践したらGAFAMの一社に引き抜かれ、もう10年目です」とか、「午堂さんの本の影響を受けて不動産投資を始め、ついにリタイアしました」という感謝のメッセージが来る一方で、「そんなことは知っている」「富裕層はそんなことしない」「新しい情報がない」「コイツの言うことは偏っている」などと全否定する人もいます。
仮に自分の意見と異なる主義主張だったとしても、「そういう考えもある」「自分の考えとは違う人もいる」と多様性を許容し、また「そんなの無理」「あの人は特殊」と言い訳をするのではなく、自分の場合に置き換えて一部でも試してみようと考えたいものです。
自分の成長期・発展期こそ「素直さ」がモノを言うのは、これまで数多くの成功者、そして没落者を見てきて実感することです。
子どもが富裕層になる可能性を高めるには
あるいはもし、自分の子どもが将来お金で困ることがないよう何か良い影響を与えたいと思うなら、たとえば人気漫画『SPY×FAMILY』に出てくるアーニャ・フォージャーではありませんが、富裕層や有力者の子弟が通うようなレベルの高い学校に入れるという方法もあるかもしれません(漫画ではスパイミッションですが)。
私立校やボーディングスクールはお金がかかりますが、本コラムでも過去に書いたように、有名難関校の学生の方が起業や社会課題の解決に熱心です。
そしてそういう人たちと日常的に接していれば、子もポジティブな影響を受けるでしょう。
実際、この1年ちょっとぐらいの間で私が出会った若手起業家(50人前後)の出身大学は、1位がダントツで慶応義塾大学、次いで2位3位がほぼ同数で早稲田大学、東京大学でした(交流した人のウェブサイトは必ず確認するのでプロフィールを閲覧しました)。
お金や不動産ではなく…子どもに残したいもの
私自身は自分の子どもたちにはやはり起業を教えたいと思っています。まあ、教えるというか興味を持たせて実践を促すことでしょうか。
特に長男は発達障害なので通常の進学ルートは難しいでしょうし、発達障害のある人は対人関係が苦手であったり仕事が続かなかったり貧困に陥りやすい傾向があることもわかっているので、独力で何かができる技術を身に付けさせたい。
そしてお金や不動産を残すのではなく、好奇心や自分の力で人生を切り開く前向きなマインドといった知的基盤を残すことが、親である自分の役目ではないかと考えています。
たとえば子がマイホームを買う際、親が頭金として数百万円を支援するというのは珍しいことではないでしょう。あるいはお金を残したくても、普通の家庭では数千万円を貯めることも難しい。
しかし、たとえば平均的な生涯収入が2億円だとして、子が生涯で10億円を稼ぐことができるようになれば、それは8億円の財産を相続したに等しい効果になります。それに何より、本人の生きる自信にもなると思うからです。
最後に、私が好きなアメリカインディアンの教えを紹介します。
「あなたが産まれたとき、あなたは泣いて、周りの人は笑っていたでしょう。だからあなたが死ぬときは、周りが泣いて、あなたが笑っているような人生にするのですよ」