「この人の話を聞きたい」と思ってもらうには
最近は会議やプレゼン、営業などをオンラインで行う人が増え、ビジネスの場でも画面越しの印象が大事になってきている。好印象を与えるには話し方や声も大事な要素のひとつ。木下明子編集長も最近はウェビナーやプレゼン動画などで話す機会が増え、「いい話し手になるにはどうすれば……」と悩み始めたそう。
そこで今回、数々の企業研修やセミナーで聞き手を引きつける“感動ヴォイス”を教えてきた村松由美子さんにレッスンを依頼。まずは事前に、木下編集長が話しているウェビナー動画を見てもらった。
「知的で信頼できる方だと感じました。ただ、頭の回転が速い人は早口になりやすいもの。木下さんも同じで、間をあけずに話すため呼吸が浅くなっています。聞き手に、緊張している、焦っているといった印象を与えやすいのではと思いました」
さらに、筋肉の動きが硬いため表情や声も硬い印象になっているとのこと。こうした緊張感や硬さを解消するには、まず体の筋肉をゆるめて、そのうえで深く呼吸するトレーニングを行うと効果的だという。
オンラインでは、聞き手はずっと画面を見ているため、対面よりも早く疲れたり飽きたりしがちだ。そこを、話し手がリラックスしてゆったりとした呼吸づかいで話せば「無意識のうちに人間味や真実味を感じて『この人の話を聞きたい』という姿勢になりやすい」と村松さん。
この言葉に、木下編集長も「話すときに筋肉や呼吸まで意識したことはなかった」と驚いた様子。改善したい部分や意識すべきポイントを確認し合ったところで、いよいよトレーニング開始!
編集長のお悩み
1. 早口
もともとせっかちで、オンラインで話すときも、つい早口になってしまいます。
2. 表情が硬い
ある程度の緊張感は大事にしたいのですが、よく「表情が硬い」と言われます。
3. 相手を疲れさせない話し方をしたい
説得力があり、かつ相手が視聴していて疲れない話し方&声をめざしたいです。
【POINT】まずは体と頬まわりの緊張をほぐしましょう
筋肉が硬いままだと息を吸っても肺が膨らみにくいので、呼吸は浅く、声は響きにくくなってしまいます。まずは体と頬まわりの緊張をほぐして、ゆったりと呼吸できる状態をつくりましょう。次のトレーニングで表情や声の硬さがとれやすくなりますよ。
相手を疲れさせない話し方、カギは「横隔膜の動き」
次に教えてもらったのは、呼吸をテーマにしたトレーニング。
「呼吸するうえで大事な筋肉である横隔膜は、表情筋とも深く関わっています。つまり、大きく呼吸して横隔膜を動かせば、それだけ表情も動くということ。これが聞き手を引きつける表現力につながります」
無表情のままで話し続けると、聞き手はどこがポイントなのかわからず、集中力が低下してしまうのだとか。また、話の内容を言葉だけで理解しようとするため脳も疲れやすい。その点、表情豊かに話せば言葉にも感情がこもり、聞き手にとってわかりやすく疲れにくい話し方に。さらに、声に抑揚をつけたり手ぶりを交えたりするのもおすすめだという。
「相手を飽きさせない、疲れさせない話し手になりたい! さっそく実践してみます」(木下)
3つの基本トレーニングは、毎日継続して行うとより効果的だそう。時間がないときは「本番前に頬まわりをゆるめるだけでも、印象はかなり変わりますよ」と村松さん。
体や頬まわりの緊張をほぐす、呼吸を深くして表情を豊かにする。話し方や声の悩みを解消するには、この2点がポイントになりそうだ。
【POINT】呼吸が深くなると表現力が変わります!
● 吸う&吐く動作を深くゆっくり行うと、表情をつくる筋肉「表情筋」が動き、表情の硬さがとれて声も出やすくなります。
● 表情や声が豊かになると表現力もアップ。「言いたいことがしっかり伝わる」「飽きさせない」「心を動かす」話し方につながります。
きちんと練習すれば何歳からでも変われる
最後に木下編集長は早口の改善トレーニングにも挑戦し、「自然なスピードで話せるようになってきた」とうれしそうな表情に。
「早口さんはご自身の中に流れているリズムも速いんです。緊張するとさらに速くなるので、本番前に指先でゆっくりももをたたいてリズムをとり、呼吸や話すスピードをそれに合わせておきましょう。気持ちの面でも落ち着きを取り戻せますよ」
後日、木下編集長は事前にトレーニングをしてから講師としてウェビナーに登壇。動画を見た村松さんは「表情が軟らかくなり、呼吸や声もゆったりと伸びていて落ち着いて聞ける」と語った。ただ、まだ少し早口のため、引き続き間を大切にしながら話すようにとアドバイスも。
「何事も練習すればできるようになると実感できたので、今後も練習を続けていきます」(木下)
実は村松さんも、以前は人前で話すのが苦手だったそう。研究や練習を重ねた結果上達し、気持ちの面でも前向きになれたと振り返る。
「人は何歳からでも変わることができます。大事なのは練習を続けること。そうすれば、必ずなりたい自分になっていけると思います」
※新型コロナウイルス感染防止対策のため撮影はそれぞれ個別に行いました。
感動ヴォイス協会代表理事
フリーアナウンサーを経て、大学院でヴォイササイズ(声のエクササイズ)による声の変化とメンタルや印象への効果を実証。著書に『話し方に自信がもてる声の磨き方』がある。
木下明子
プレジデントウーマン編集長