今年10月、秋篠宮ご夫妻の長女眞子さんと結婚した小室圭さんが、アメリカ・ニューヨーク州の司法試験に合格した。コラムニストの河崎環さんは「結婚も海外脱出も、眞子さんが主導したのではないか。小室さんが試験に合格した今、夫婦で大手を振って、思った通りのライフスタイルで人生を楽しんでほしい」という――。
ニューヨークの街を歩く小室圭さんと眞子さん。2022年6月7日撮影
写真=ABACA PRESS/時事通信フォト
ニューヨークの街を歩く小室圭さんと眞子さん。2022年6月7日撮影

学習院の校庭でプリンセスに「アイーン」

その昔、眞子さま・佳子さま姉妹が学習院初等科へお進みになったとのニュースは、当の学び舎に集う初等科キッズたちにも大きな出来事だったのだという。

「学習院にプリンセスが来る」

天皇陛下の直系の初孫にあたる眞子さま、そして佳子さまをお預かりする教員たちはビシバシに緊張、お迎えにあたって失礼や不手際があっては絶対にならぬとさまざまな学内プロトコルとロジスティクスが検討され、何度もリハーサルが重ねられ、保護者にも決して過剰ではないが大いなる威厳と高い品格でもって「空気を読んでね。すごく」「あと、ちゃんとお子さんにも言い聞かせておいてね。すごく」との丁寧な通達があった、に違いない。

既に初等科にいらっしゃる眞子さまに加え、今度は佳子さまが入学されるというその春、初等科2年生に進級したある少年は、学内の大人も子どももみんな浮き立つ空気をビンビンに感じ、高揚を隠せなかった。「上級生として、佳子さまにいろいろ教えて差し上げなきゃ!」。なにせ僕はお兄さんなんだから、1年生が知らないことをたくさん知っているんだ。

そんな彼が休み時間、校庭でいつもの仲間と遊んでいると、先生や子どもたちに付き添われた小さな女の子がやってきた。佳子さまだ! 他の子どもたちがかわいらしい佳子さまと、そばに寄り添うお姉さまの眞子さまに視線を固定したまま動きを止め、遠巻きに眺めるのをかき分けて、少年は日本のプリンセス姉妹へと歩を進めた。育ちが良くて紳士の彼はもちろん、初対面ではまず爽やかに自己紹介するという上品なマナーを忘れていなかった。

「初めまして! 僕は2年生の●●です。これご存じですか? アイーン!」

クラスでも人気者の彼は突き出したアゴの下に素晴らしいキレで水平にした右手を添え、いつも学友たちに見せて喜ばれる愉快な所作で、プリンセスたちにご挨拶してみせた。大人たちの顔が瞬時にこわばり、迎賓館前の学習院初等科校庭で、時が止まった。

現代的な“好奇心ガールズ”

ところがプリンセスたちはそれを見て大喜び。「こうですか?」と、同じ動作を返してみせたのだという。「いいえ、もっとアゴをこう出して、アイーン! って」「アイーン!」「そうそう、上手です!」

プリンセスたちにとっては、校庭で、ちょっとお調子者の男子から生まれて初めて目にする面白い動作を教えてもらった、新鮮な出来事だったのだろう。「今日はこんなことがありました!」。彼女たちは、どうやらご自宅にお帰りになってから、それをご家族に向けて楽しく再現なさったようなのだ。

それから数日後、少年は両親と共に学校へ呼ばれ、血相を変えた偉い先生にこってりと絞られた。せっかく国民的なギャグ「アイーン」を教えて差し上げて、プリンセスたちだって喜んでくださったのに、文化的摩擦、いや、笑いの解釈における見解の相違があるとは残念なことである。

もともと自由な空気に適性の高かった少年は、中学校は別の学校へ進むことになった。やがて彼はヨーロッパへ、そして世界へと羽ばたいていき、その後は国内外のメディアで未来を担う世界の若者に選ばれるなどし、世界を舞台にできる新時代の起業家として注目されている。

新しいことを“品がない”として叱り、進取の気性の芽を摘むことが品格であり保守なのだと信じているとしたら、そんなルーティンに拘泥する文化にはイノベーションが生まれず、先細りする。私はそのアイーン話を聞いた時に思ったものだ。「なるほど、眞子さんも佳子さまも、根はとても好奇心が旺盛で、外向的な女の子なのじゃないか。ならば日本の皇室は、彼女たちには狭いだろうな」

眞子さんも戦っていた

その後、眞子さんが英語を公用語とすることで有名なICUに進んだ時点で、あれは明確な意思表示だったのだと受け取る事ができる。周囲は何カ国語も操る帰国子女や外国人ばかり。視野は確実に広がり、日本国内に閉じこもるのではなく世界を舞台に生きるのだと、海外志向は一種焼き付けられたも同然だ。眞子さんはそういう環境で、カナダ系インターナショナルスクールを卒業してきた小室圭さんと出会った。

日本中を激論に巻き込んだ小室圭さんとの結婚だったが、私は女友達と「眞子さんはああいうチャラっぽい普通の男子がタイプだったんだね〜」と笑いながらも、あの両親のもとで育った賢くて意志も強い長女の眞子さんは、彼女なりの確かなビジョンがなければここまで(ある意味国民を敵に回し、複雑性PTSDを負ってまで)戦わないだろうと感じた。眞子さんには、皇室を出て海外で暮らすのだという、確固たる自己イメージがあったはずだ。

そういうとき、女は戦えるものだ。あの結婚と国外脱出の件で、戦っていたのは小室圭さんじゃない、眞子さんだったというのは、女たちの中では早くからピンときた者が多かった。「これって、眞子さま主導だよね」「とにかく皇室を出たいんだろうなぁ」「コムKは、眞子さまだぁ……って新しい世界に有頂天になってたらいつの間にかこうなってて、もう後戻りできなくなった感じだね(笑)」

手を取り合う男女カップル
写真=iStock.com/Rattankun Thongbun
※写真はイメージです

「新しいロイヤルファミリー像を応援」で大炎上

だけど日本は、相変わらず女性は弱いものとしておくのが大好きで、「生意気でチャラけた小室圭が野心を持って皇族に近づき、眞子さまをそそのかし、できもしない米国弁護士試験を受験するだのと言って国外へ逃げた」「あの親も怪しい」「われわれの高貴なる皇室を脅かす存在、許すまじ!」「眞子さまはだまされている!」「それにしても眞子さまも頑固すぎだ、秋篠宮様がおかわいそう‼」とカッカしている人々がせっせとネットに呪いの言葉を書き込んでいた。

「ええじゃないか、海外に出て活躍したいという新しい日本のロイヤルファミリー像だ。小室圭さんもアメリカでの大学院生活を経て、なかなか引き締まっていい面構えをしている。日本を出て頑張ろうという若者は、それだけでも日本の希望なんだから、応援しようじゃないか」と朝の情報番組で鷹揚に発言した私は、当然の帰結として大炎上した。

「はぁ? 眞子さまは平民の小室圭と結婚して平民になるんだから、2人ともロイヤルファミリーじゃないし。このコメンテーター、バカなの?」とばかりにののしられたものだが、主題はロイヤルファミリーの正確な定義の話じゃない。あの頃の世間はまだ明けぬコロナ禍の不安だなんだ、ホント暇でピリピリしていた。

さて、弁護士試験を通って「小室圭さんは、外国人からは日本のロイヤルファミリーだという認識で弁護士としての人気が出るだろう」と予測されている今、あの人たちは息してるだろうか。元気にお過ごしだろうか。私を含む世界の庶民たちにとって、ロイヤルっていうのはそのくらいのざっくりした存在である。正統がなんだとか、皇族からはドがつく他人でまごうことなき庶民のあなたや私や平民コメンテーターがお互い皇位継承権1億3000万位の身分で皇室を憂いてみたところで、大茶番である。

不可思議な“司法試験マウンティング”

それから、なかなか合格をもぎ取れない小室圭さんの試験結果については、日本国内でこれまた不可思議な“司法試験マウンティング”が見られた。「米国の弁護士試験って、そもそもかつての日本の司法試験ほど厳しくない。ま、僕は日本の司法試験は2回目で通ってますけれどね」「僕は1回ですよ、ハハっ」「えっ、小室さんってアメリカでまだ受かんないの? 普通は1回で受かるし、回数重ねるほど合格率下がるよ」「厳しいこと言うようだけど、もう見込みないんじゃない?」

こういうのをはたで見ていると、人の不幸をネタにしてすらマウンティングで悦に入ることができる人間って、かわいそうだけど一体何のごうなんだろうか、偏差値教育の弊害だろうかと、しみじみ考えたものであった。

合格、おめでとうございます

いずれにせよ、眞子さん・小室圭さん全力応援派であろうがアンチであろうが、日本中が弁護士試験の結果を多かれ少なかれ気にしていたのはたしか。そんなオリンピック選手並み(もしかしてそれ以上?)の注目とプレッシャーの中、小室圭さんはよくぞ合格へこぎ着けたと思う。

三度目の正直、本当におめでとうございます。毎日ひたすらコツコツと重ねた努力が実るってこのこと。経済的な自立が可能になったのだから、もう誰が何を言おうと夫婦で大手を振って、好きなだけ思った通りのライフスタイルで人生を楽しんでほしい。グローバル経済後進国化した円安日本のメディアが、為替レート換算して嫉妬でキイキイ言うくらい、年収稼いじゃってほしい。なんせ国際社会で存在感も購買力も急速に失いつつある日本、今や1ドル150円ですのでね!