高額の買い物で後悔しないためにどうすればいいのか。FPの井戸美枝さんは「『一生モノです』『一生お使いいただけますよ』というセールストークには注意が必要。実際には一生モノなんて存在しないのです。購入を決める前に必ず2つのことを確認してほしい」という――。

※本稿は、井戸美枝『お金がなくてもFIREできる』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。

ブティックにディスプレーされた鞄とハイヒール
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「一生モノ」に気をつけろ

「この家具は一生モノです」「このバッグの革は使えば使うほど味わいが出ますから、一生お使いいただけますよ」。そんな言葉につられて高価な買い物をしてしまった経験はないでしょうか? 私は何度もあります。

しかし、この頃ようやく気づきました。「一生モノ」なんて、そもそも存在しないのです。ファッションはもちろん、インテリアにもその時々の流行の色や形がありますし、年齢を重ねるうちに自分の好みも変わります。引っ越しや体型の変化で家具や洋服が合わなくなることもあるでしょう。私自身も、最近は重かったり着心地が悪かったりする服や靴は避けるようになりました。結果として、一生モノのつもりで買っても「有期モノ」になってしまう可能性が高いのです。「一生モノ」のセールストークには注意が必要です。

買いたいモノは使い切れるか、いくらで売れるか考える

うきうきしながら買ったのに、今は物置きや部屋の片隅で眠っている家具や家電、健康器具などはありませんか? 家の中に要らないモノがあると、そのエリアが“もやもやゾーン”と化します。つい置いている空間の広さを家賃換算して憂鬱な気分になってしまいます。ですから、不要なモノ、使わないモノは人にあげるなどして即刻処分することをお勧めします。

逆に、これから買い物をするのであれば、「本当に使い切れるのか」「使わなくなったときにいくらで売れるのか」を考えることが大切です。

自分の趣味嗜好だけで判断すると、購入時は高額だったとしても非常に安価で処分せざるを得なくなる可能性があります。中古でも人気があり、欲しいという人がたくさんいるようなモノを選んでおけば、不要になったときも気持ちよく手放すことができます。

使わないモノを少しでも高く処分する方法

コロナ禍で一念発起して自宅の「断捨離」をした方もいらっしゃることでしょう。しかし、喉元過ぎれば何とやらで、せっかくさっぱりした家に、また少しずつモノが増えてきてはいないでしょうか?

私も今、「持たない暮らし」を目指してモノを減らそうとしている真っ最中です。

洋服やバッグなど使わないモノはどんどん売っていますが、なかなかこちらが思うような値段では買い取ってもらえません。

唯一「やったあ!」と思ったのは、15〜16年前に20万円弱で購入したロレックスの腕時計が38万5000円で売れたことくらいです。高級腕時計の中でもロレックスやカルティエなどは、モデルにもよりますが比較的買い取り価格がいいようです。特に手巻きの時計は査定が高くなっています。

これに対し、洋服や食器、1度でも履いた靴などはほとんど売れません。特に、ネームを入れたオーダースーツは、いくら銀座の高級テーラーで仕立てたものであっても買い手が付かないようです。

洗濯物をたたむ女性
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複数の業者で査定を

腕時計や服飾品、ゴルフクラブ、釣り道具、アウトドアグッズなどを売る際は、複数の業者で査定をしてもらいましょう。

大手のリセールショップには、ウェブサイトやLINEなどから査定ができるところもあります。先の38万5000円で売れたロレックスの腕時計も、売ろうと決めて何軒かで査定してもらったところ、業者によって買い取り価格が1万5000円も違っていたのには驚きました。

腕時計や財布といったかさばらないモノなら、買い取りの窓口に持参したほうが担当者と交渉がしやすく、より高い値段で引き取ってもらえる公算が大きくなります。

景気に左右されない「稼ぐ力」を手に入れる

1億円の貯蓄があっても将来が不安な人もいれば、貯蓄は少なくても気にしていない人もいます。後者には、たとえば、医療関係や、アナリストなど金融関係の有資格者で、いつでも働けば自分が思うような収入が得られるとか、株式投資をしていて定期的に配当金が振り込まれるなど、何かしら収入を得るすべを持っている人が多いようです。

今のような先行き不透明な時代だからこそ、「経済状況や景気動向に左右されず、お金を稼げる力」は、生きていく上での自信につながります。

企業経営においても、好景気時代には「必要以上に借り入れを恐れていては成長はない」という考え方が支配的でしたが、先の見えない今は「自己資本重視の健全経営」に舵を切る企業が増えています。

勉強する女性の手元
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自己研鑽は何歳からでも遅くない

ライトFIREは、言うなら、自分だけの小さな企業を経営するようなものです。個人もしっかりした自己資本を築いておけば、FIRE後の選択の幅が広がり、安心して小さなチャレンジを続けることができます。今のうちに、自分の収入を得る手段になりそうな得意分野や、将来性の高い分野のスキルを磨いておきましょう。

井戸美枝『お金がなくてもFIREできる』(日経プレミアシリーズ)
井戸美枝『お金がなくてもFIREできる』(日経プレミアシリーズ)

会社で法務や税務、総務畑を経験してきた方なら、中小企業診断士、税理士、社会保険労務士などの資格を取得しておけば、ライトFIRE後も会社員時代の経験を生かして働きやすくなるでしょう。自己研鑽は何歳からでも遅いことはありません。

ただし、自己資本を高めるには、それなりの時間がかかります。懸命に勉強して前述のような資格試験に合格したとしても、実際にマネタイズするには、誰に対しどんな業務を行うのかマーケティングをしたり、人脈を生かして営業活動を行ったりといった準備期間が必要になります。

ライトFIRE後もマイペースで長く働き続けるためには、長期的な視点でコツコツと自己資本形成に取り組むことが大切です。

お金の貯め方や使い方のマインドチェンジについてお話ししてきましたが、これらを頭の中で理解しただけでは実効性は望めません。

何であれ、重要なのは行動に移すことです。自分で手を動かすことによって初めて、そのアプローチが「自分の性格」や「ライフスタイル」に合ったものか、心理的・時間的に負担にならないかがわかります。トライして「これはダメだ」と思ったら、後はやらなければいいのです。

一番いけないのは、この手の本を読んで「やらない理由を探す」ことです。考えるより前に行動しましょう! 3日経っても何も手をつけていないとしたら、その方法はあなたに合ったものではないのかもしれません。