インデックス投資で資産1億円を達成した人の体験談を見かけることがあるが、普通の会社員が真似するのは難しい。個人投資家のまつのすけさんは「インデックス投資で資産1億円を達成できるのは、高所得者などに限られます。元手が少ない普通の会社員ならこれから訪れるチャンスを上手に活用するのがいいですね」という――。
スマートフォンで金融チャートを分析する若い投資家
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インデックス投資は手軽だがリターンには限界も

世の中ではiDeCoやつみたてNISAが徐々に普及しており、投資信託による積立投資が浸透しています。最初に投資信託の積立の設定さえすれば、あとはほったらかしで投資が可能。手間不要でリターンが期待できるので便利です。

ただし、着実な資産形成には有効である一方、短期的に大きなリターンは期待できないという点は事実であります。

インデックス投資信託で期待できるリターンは、株式投信100%でも年率+5%~+7%程度です。数年に1度ある絶好調の年でも概ね+40%~+50%にとどまります。したがって、インデックス投資によって1年間で1億円の利益を得るためには、凄まじく良好な年でも2億円~2億5000万円程度の元手が必要になります。

また、よくある「年率+5%~+7%の複利効果で右肩上がり」といったグラフには注意が必要となります。定期預金のように確定利回りの商品はそのグラフの通りきれいに複利効果を発揮しますが、株式のように、ある年は+20%、別の年は-10%と変動がある場合、+5%~+7%よりもトータルリターンは常に下がりがちです。

積立投資は“運任せ”の投資法

さらに、投資信託を持ちっぱなしの場合、投資の開始時期と終了時期によって、パフォーマンスには大きな格差が生じます。身も蓋もない話ですが、投資信託の「バイ&ホールド」あるいは「積立投資」は、開始と終了の時期によって大いなる違いが生じるので、運任せの投資法なのです。

金融庁の「資産・地域を分散して積立投資を行った場合の運用成果の実績」においては、保有期間20年という長期投資でも年率+2%~+8%まで大きなばらつきが生じています。ここでの6%という格差は年率ですから、20年のトータルでは大きな差が生じます。

加えて、例えば資産1億円といった高い目標を設定する場合は、収入も元手も少ない場合、投信積立やインデックス投資では難しくなります。

日本経済新聞の記事「荒波越える長期積み立て」(2019年1月20日)でも、「時期によって投資リターンは異なる」とのデータが解析されました。

「資産額の累計投資額に対する倍率(1990年~2018年)」では、30年間積み立て(先進国株投信)の場合、約1.7倍~5.8倍と大きな格差が生じています。

<積立期間別のリターン>
・5年間積み立て:約-50%~+100%
・20年間積み立て:約±0%~+300%
・30年間積み立て:約+70%~+480%

インデックス投資で1億円を達成できるのは高所得者

仮に20年間の積立を行い、中間である+150%の成果を達成したとしましょう。1億円をクリアするためには、単純計算で4000万円の元手が必要となります。

老後資金2000万円で紛糾している情勢下ですから、諸々の支出控除後で4000万円を貯蓄し、さらにそれをすべてフルインベストメントして、年率換算で±20%、時期が悪い年は-40%といったリスクに耐えられる人は多くないでしょう。

インデックス投資で1億円という話は、年収が多い方、もしくは年収数百万円でも人生を犠牲にし支出を極度に抑えて、蓄財最優先が可能な方限定のストラテジー(戦略)であります。ただし、「難易度がゼロ」である点は大きなメリットです。

アクティブ運用で超過リターンを狙うのは難易度が相応に高く、誰でも簡単にできる話ではありません。

以下ではリスクを取って少ない元手で+1億円を狙う戦略について解説します。

足元の戦略は長期上昇トレンドのファイナル上げを取りに行く

足元では世界的に株価が調整していますが、これは米FRB(連邦準備理事会)の利上げ開始の初期に特有の現象で、中間反落を乗り越えて再び上昇に向かうと考えています。中間反落とは、金融相場と業績相場の移行過程に起こる反落のことです。

2022年3月に米国債の2年と10年の間で逆イールド(利回り差の逆転)が発生しました。短期金利が長期金利の水準を上回るのは通常とは逆の現象で、景気後退・株価調整に転じるシグナルとなることが多く、過去の経験則では「逆イールド」発生から、「1~2年程度で株価がピークアウトすることが多い」との実績があります。

そして、逆イールド発生からピークまでの騰落率は+20%~+30%程度の時期が多いのです。したがって、強気は2023年までというのが当面の相場観です。2023年3月~2024年3月あたりは要警戒だと考えています。

2024~2025年の調整が浅かったとしても、遅くても2027年頃までは、世界的に株価が大天井をつけて、長期低迷相場に入る可能性があると考えます。

上昇トレンドの株式市場データ
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そう考えると、いまは最後の上昇を取りに行く戦略がいいと思います。季節特性では大統領2年目(中間選挙の年)は4~9月が軟調な傾向にあるので、新規でインデックス投資を始めるなら時間分散で買っていくのがおすすめです。

相場の底打ちが明確になったら米国ETFで勝負する

単純なインデックス投資よりリスクを取りたい方は、今年の5~9月に底打ちした動きになったら、そのタイミングで米国株ETFである「Direxion デイリー S&P500 ブル3倍 ETF」(SPXL)を買うのも選択肢です。大手ネット証券で取り扱いがあります。

ただし、レバレッジ型ETFは金利上昇の悪影響を受けるので、持ちっぱなしは低金利に張り付いているとき、中央銀行が金融緩和姿勢のときが無難です。また、レバレッジ型ETFはボックス相場では減価し、一度暴落すると取り戻すのが難しくなるのが欠点です。

一方で上昇相場には強いので、S&P500の3倍ETFは、2022年5~9月に訪れると想定している底値から2023年~2024年までの期間限定で、高いリスクを背負って高いリターンを狙う方におすすめです。いまはバイ&ホールドではなく、トレーディングとしての購入に適しています。

個別株に投資する場合のお勧め5選

個別株では次の5銘柄がおすすめです。

<日本株>
・ソフトバンクグループ(9984)

<米国株>
・デルタ航空(DAL)
・カーニバル(CCL)
・エネルギー・セレクト・セクター SPDR ファンド(XLE)
・クラウドストライク・ホールディングス(CRWD)

ソフトバンクグループは、5000円以下は割安ゾーンだと考えています。買っておくと1~2年後には花開くでしょう。ただし、財務状態が悪く金利上昇に脆弱ぜいじゃくで、ハイパーグロース株、中国株に多く投資しており、値動きが非常に荒いので、上級者向けの銘柄です。

平気で3~4%の値動きがあるので、激しいボラティリティにはメンタル的に耐えられない方の場合、変なところで疲れて投げてしまいがちになるので、おすすめできません。

コロナの本格収束で期待できる航空&クルーズ船

エアライン世界最大手のデルタ航空、クルーズ船大手のカーニバルは、コロナウイルスが収束に向かったらここから大きく上昇するポテンシャルがあります。デルタ航空は航空連合スカイチームの盟主であり、世界中で事業を展開しています。

日本では、カードショッピングだけでデルタスカイクラブを利用可能なゴールドメダリオンを取得できるデルタアメックスゴールドが人気を博しています。

カーニバルは、北米・オーストラリア・ヨーロッパ・アジアで事業を展開しているレジャー旅行会社です。カーニバルクルーズライン、プリンセスクルーズ、ホランドアメリカライン、シーボーン、P&Oクルーズ、コスタクルーズ、アイダクルーズ、キュナードを運営しています。

エネルギー株の大相場を狙うならETF

エネルギー・セレクト・セクター SPDR ファンドは、エクソンモービル、シェブロン、EOGリソーシズ、シュルンベルジェ、コノコフィリップス等のエネルギー関連企業に投資するETFです。ETFなので個別銘柄とは少し違いますが、エネルギーセクターに絞って投資をする商品なので個別銘柄として挙げています。

2008年や2014年のようなエネルギー株の大相場が来る可能性があるので、反落リスクを取って大相場を狙いたい方におすすめです。

クラウドストライク・ホールディングスは、FRBの金融引き締め・金利上昇によって逆風が吹き荒れていますが、その中でもハイパーグロース株では期待できる銘柄です。足元では官民いずれも世界的に需要が急上昇しているサイバーセキュリティの代表的上昇企業です。

売上、利益、ガイダンスの全てが予想を上回る完璧決算、米国国防総省のセキュリティレベルであるIL-4(インパクトレベル4)取得、ドイツ当局が推奨と、事業そのものは順風満帆です。

ただし、足元ではFRBが金融引き締め姿勢なので、ハイパーグロース株には逆風が吹き荒れているのが難点です。したがって、この銘柄にオールインは避けてください。ポートフォリオの一部、スパイスとしてはお勧めとなります。

未来を予測できなくても株式投資で勝利できる

ごく一部の超人を除くと、将来の株価予測は困難を極めるというのが一般的です。株式市場に参加している投資家は、世の中に流布しているあらゆる情報を正確に把握して、新たな情報が出たら瞬時に織り込んで、正しい判断を下せるわけではありません。

市場参加者の大部分は、効率的市場仮説で定義されている合理的経済人とはほど遠い状況にあり、あらゆる情報を瞬時に把握して正確に意思決定できる主体はあまりいません。

無数にある市場に影響を及ぼすファクターの中で、自分の考えと親和的な一部の材料で意思決定を行う方が大多数です。考え方、手法は千差万別であり、多種多様な投資主体が参加して形成されているのが株式市場です。

大口から小口個人まで多様な市場参加者が、異なるリスク許容度、異なる保有情報、異なる売買ルール、異なる資金、異なるメンタルに基づいて、多様な角度から判断して市場で売買しています。

毎日、数多く勃発する出来事や業績変化に対して、どのように対応するのかもそれぞれで異なります。そうした無数の意思決定の集合体が株式市場であり、長期的には株価は業績に収斂されるとはいえ、短期的には需給バランスで揺れ動きます。

幾多の情報を正確に把握して、株価の行く末を正確に見極めるのは困難を極めます。しかし、株価を予測できるか否かとトレードで成功するか否かは必ずしも直結していません。アクティブ投資家は、ランダムに見える株式市場の中で期待値の高い売買行動を発見して、勝率が高い取引を行うことで収益を獲得しています。

バリュー投資、グロース投資、イベント投資、インデックス投資などは、いずれも正攻法で適切な行動を取れれば期待値が高い株式投資です。