コロナ禍での健康志向に応える販売戦略を

キリンビバレッジの営業ウーマンの松園明子さんが担当するのは、全国に約2000店舗を展開するドラッグストアの本部だ。

キリンビバレッジ 広域流通営業部 営業担当 課長 松園明子さん
キリンビバレッジ 広域流通営業部 営業担当 課長 松園明子さん

営業チームは2人体制で、松園さんは内勤のサポート業務を中心に行いつつ、商談にも同行。クライアントに提案する数字の分析などを主に担うが、コロナ禍以前は、週1ペースでクライアントと直接対面して打ち合わせる機会もあったという。

その営業スタイルが、コロナ禍の完全リモートで大きく変化。しかし、「こまめな電話やメールで、営業先とのコミュニケーションを途切れさせないようにしました」と、関係性の維持を心がけている。

「ドラッグストアの営業では、限られた飲料の棚にいかに自社商品を置いてもらうかが勝負です。そもそもドラッグストアを訪れるお客様は健康志向の高い方が多いので、そういう方々に自社製品を購入していただくために、どこまで健康価値を提供できるかが大きなポイントです」

その意味では、商品に関連した健康に関する知識を現場の店舗スタッフにどれだけ提供できるかも、重要な営業戦略のひとつだ。

私のオンライン営業3カ条

ドラッグストアはコロナ禍で巣ごもり需要や健康関連商品への人気の高まりなどから、売り上げが向上した業界のひとつだ。松園さんは、自社製品の中でも、プラズマ乳酸菌による免疫ケアをうたう「iMUSE(イミューズ)」が必ずヒットすると確信。本部の商品採用担当者と綿密なやりとりを重ねていった。

松園明子さん

「先方の担当者には、今こそiMUSEを店頭に目立つように並べるべきだと強くアピールしました。通常、商品は各店舗からのリクエストに応じて手配するのですが、今回は逆に本部から商品を手配することで、各店舗に在庫をしっかり確保する戦略を提案。店頭に商品を積み上げてディスプレーすることで、来店するお客様の目に留まりやすくするように考えました」

新型コロナウイルスの流行状況などに合わせながら、細かいデータを早急に取りまとめることも必要だった。iMUSEの購入層や購入動機などを詳細に分析し、クライアントの販売戦略に役立ててもらうことができたという。その結果、松園さんの担当するドラッグストアでの2020年iMUSE仕入れ数は前年比200%超と大幅にアップ。時流をしっかり捉えたオンライン営業で、大きな成果につなげることができた。

管理栄養士向けのオンライン勉強会

また、コロナ禍以前から、ドラッグストアで働く管理栄養士を対象に「プラズマ乳酸菌勉強会」を企画し、講師としてその効果・効能を詳しくレクチャーしてきた。松園さんは、せっかく管理栄養士の資格を持って店頭に立っていても、実際にそのスキルを接客に生かす機会があまりないというクライアントの課題に注目。その解決策として勉強会を提案し、実現したものだ。

ワイヤレスイヤホンとスマホスタンドは、自宅からのオンライン会議には欠かせない。
ワイヤレスイヤホンとスマホスタンドは、自宅からのオンライン会議には欠かせない。

「もともとはリアルで開催していましたが、忙しい店舗スタッフが店舗業務を休んで勉強会に足を運ぶのはハードルが高いという問題点がありました。しかし、コロナ禍で勉強会もオンラインで開催するように変更。勤務シフトを数時間調整するだけで、全国どこからでも、タブレット端末を通じて店舗から気軽に参加できるようになりました。実際にお客様に接している管理栄養士の方に正しい知識を持っていただくことが、ゆくゆくは商品の売り上げ増に結びつくと考えています」

営業先の本部からも、管理栄養士の知識を生かした販売戦略が展開できると、この勉強会への評価と期待は大きい。

一方で、オンラインになったことで、これまでよりもさらにわかりやすくポイントを整理。話すスピードや時間配分は事前にリハーサルを重ねて入念にチェックするなど、オンライン画面上でも理解しやすいように心がけている。また、勉強会の終了後にアンケートを回収し、問い合わせにも個別メールなどできめ細かく対応。

「オンラインは相手の温度感がわかりにくいので、先方の状況を細かく確認することが重要です。勉強会は、オンラインのほうがより多くの人に参加してもらいやすく、手応えも上々で、今後もオンライン中心で開催していくつもりです」

松園明子(まつぞの・あきこ)
キリンビバレッジ 広域流通営業部 営業担当 課長
1987年生まれ。2010年、キリンビバレッジ入社後、首都圏で量販店の営業を担当。業務管理部グループ事務センター債権担当を経て現職。18年から大手ドラッグストアチェーン店の営業を担当。顧客店舗の管理栄養士向け勉強会なども実施。