オンライン初対面の顧客とも意思疎通を
通信会社の携帯電話事業部門向けの法人営業を担当する、富士通の鈴木悠里衣さん。ビジネスプロデューサーとして、単にシステムを売る従来の営業の役割を超え、顧客の潜在的課題をDXテクノロジーで解決することをミッションに、コンサル型営業をこなす毎日だ。
現在、2歳の子どもを子育て中の鈴木さんが産休に入ったのは、コロナ禍直前の2019年12月。育休から復帰した21年4月は、まだコロナ禍真っ最中で、“フルリモート”という新しい働き方が待っていた。
「育休中も会社とはオンラインでやりとりしていましたが、復帰してあらためて社内外すべてのやりとりがオンラインという状況にはやはり戸惑いましたね」と当時を振り返る。
復帰後、営業先の担当者とはオンライン上で初顔合わせというケースがほとんどだった。人間関係を構築するために、画面越しでも可能な限り意思疎通を図ること、数少ない対面のチャンスをできるだけ有効に使うことを心がけているという。
「表情が見えづらいオンラインでは、先方が本当に理解してくれているのかがわかりにくいので、こちらが一方的に説明したり、単純な質問と回答の往復だけになったりしないようにしています。こちらの意図が正確に伝わっているかをこまめに確認したり、質問がないか問いかけたり。会議や打ち合わせの前後の何げない会話から先方の状況をできるだけ多くキャッチすることも大切です」
会議が始まる前は議題のポイントを、会議の最後にはまとめを明確にすることで、会議の意義を全員が共有。オンライン会議では、画面上で資料を共有しながらやりとりするので、自分を映すビデオはあえてオフにして資料に集中できるようにする。
「私のように自宅から参加する人もいるので、参加者全員がビデオ機能をオンにすると回線に負荷がかかり不安定になることもありえます」
営業の成否は、オンラインに限らず、いかに「ストーリー」を伝えられるかにある、と鈴木さん。
「提案内容の背景や効果をわかりやすく伝えるために、クオリティーの高い説明動画を制作。これもストーリーを伝えるひとつの武器です」
対面営業の時間をいかに充実させるか
2年以上続くコロナ禍で、リアルとオンラインのハイブリッド営業がスタンダードとなりつつある。
「ハイブリッド営業では、いかに対面の時間を充実させるかが大きな鍵です。貴重なチャンスであるリアルの対面で、少しでも多くの情報をキャッチすること。そのためにはいつも以上に綿密な準備が不可欠ですね」
対面の機会が貴重なのは、クライアントだけではなくチームメンバーも同じだ。出社時は新型コロナウイルス対策に注意しながらランチ会をするなど、リアルなコミュニケーションもできるだけ持つようにしている。オンラインの定例ミーティングでも、最初に「1分スピーチ」などでお互いの近況を伝え合い、単なる報告や相談で終わらせずに距離を縮めるようにしているという。
鈴木さんはオンライン主流で仕事をするメリットについて、次のように語る。
「リモートワークになって、格段に時間を効率的に使えるようになりました。以前に比べて、1日にこなせる会議やタスクは1.5倍に増えています。その分、予定をブロックしてひとりで頭の中を整理したり、アウトプットしたりする時間も意識的に確保するようにしています」
富士通キャリア事業本部マネージャー
1982年生まれ。2005年に富士通入社後、携帯通信会社のアカウント営業を担当。情報システムからネットワークまで幅広く提案活動を経験し、18年度からはマネージャーとして5Gを活用した新規サービス企画・提案をする。