自宅の通信環境整備は必須。新たなマナーも出現
「ウィズコロナ」に突入してはや2年。リモートワークを導入する企業は格段に増えている。働き方大変革の時代、社内会議も営業もオンラインが当たり前となった。編集部で実施したアンケートでは、オンラインツールの使い方やマナーに至るまでさまざまな回答が得られた。6割以上がオンライン会議ツールを頻繁に利用(Q2)しており、社内外の会議や打ち合わせ、セミナーなどで多く使われている(Q3)。
そんなオンライン会議の最大のメリットは「移動時間が不要」となったことを挙げる人が多数(Q5)。在宅勤務も可能になり、通勤や打ち合わせへの移動が不要で会議に参加できるという便利さには、「もう手放せない」の声も多い。しかし、新たな問題もあるよう。リモートで必須の通信環境の整備は当然のこと、オンラインならではの「伝え方」があり、リアル以上に気を使わなければならないことが増えているというのだ。
※企画内各グラフの「その他」は、すべてフリーアンサーによる回答です。
無表情になりがちなオンライン会議では参加者の積極的なリアクションと発言のタイミングが重要になる(Q6)。また、オンラインだからといって、リラックスして臨む人はいないだろうが、「リアル会議と同じだという意識は大切」との意見も。在宅勤務で、ホームウエアのまま参加するのは当然NG。せめて上半身だけでもきちんと身支度を整えることが必須。「いつもジャケット着用で参加する同僚。きちんとしているなと印象がアップ」という声もある。
また、ただの傍聴人になるのは避けるべきこと。最後までひと言も発さず退室するのは「本当に仕事をしているのか」と他者を不愉快にさせる行為。そうした参加者を出さないためにも、進行役を定め、すべての人に発言の機会を与えるようにするのも重要だ。発言する場合は、「長時間発言しない」「先の発言者に話をかぶせない」「一方的にしゃべらず、会話のキャッチボールを心がける」のはもちろん、「反対意見は言葉を選び、慎重に」伝えることも大切だという。
リアルではその場の空気感で、ある程度の反対の感情も緩和されるが、オンラインでは直接的に伝わり、相手の心に刺さるという。思いがけず「誹謗中傷された」と受けとられないためにも、特に気をつけたいポイントといえる。
さらに、集中力が途切れやすいのもオンライン会議の特性。参加者に興味のある内容、引きつける話し方、簡潔な伝え方が、リアル以上に大切になりそう。
今、あらためて見直したい。メール・チャットの使い方
リモートワークが進む前から浸透しているのが、メールやチャットなどのワークツールだ。つい20年ほど前までは、ビジネス上の連絡ツールといえば「電話」「FAX」が当たり前だったが、今や主流はメールに取って代わった(Q7)。通常連絡はもちろん、資料も同時に送付可能、さらに同じ内容を関係者に一斉に伝えられる便利さで利用者が多い。また発信記録が残る利点も挙げられた(Q8)。検索の容易さもあり、過去の記録を見つけやすく重宝する。
メールに比べるとチャットは社内の個人間やグループでのやりとりで使用する人が多い印象だ(Q9)。いずれにしても、メールやチャットなどのオンラインツールの便利な点は「相手の都合を気にせず用件を伝えられる」「相手の時間を奪わずに済む」などが多い。確かに、電話はその内容やかけるタイミングによっては「なんでそんなことで今電話してくるの!」と直接言われないまでも、相手の感情を逆なですることにもなりかねない。メールやチャットならば、急ぎの用件以外で「読める時間に読んでもらう」という相手の都合に合わせられるメリットが大きいといえる。
「ぶっきらぼう」「変な日本語」。カチンとくるメール
しかし、そんな便利なオンラインツールでも、伝え方次第では相手の機嫌を損ねるケースもあるので注意が必要だ。多くの人が気をつけているのが「誤字脱字」「簡潔さ」「礼儀正しさ」。ぶっきらぼうな書き方では礼儀を欠くし、インターネットから借用した例文を多用していては薄っぺらくて伝わらない。ダラダラと長いメールも「何が言いたいの?」となる。チャットのように短文で会話するツールであれば問題ないだろうが、メールでただ「了解しました」では、逆にカチンとくる人が多い。
「メール簡素化実行中」などとひと言添えることも必要だ。また問いかけとは違う内容の返信にも気をつけたい。1往復で終わるやりとりが、2往復、3往復となり、結局相手の時間を奪うことになりかねないからだ。もちろん、質問メールを送る側にも注意が求められる。相手が答えやすいような表現、簡潔さが大切だ。
相手の心に伝わるメールというのは、たとえビジネス上であっても送る相手への「気遣い」「思いやり」「感謝」が垣間見られる文章のよう。
誤字脱字だらけ、変な日本語では伝わるものも伝わらないのだ。
急ぎの用件は電話がいちばん。気をつけるべきこととは
アンケートの回答を見ると、「急ぎの用件」「すぐに回答がほしい」ときは電話を使用する人が多い(Q12)。直接会話する重要性を多くの人が感じているが、急ぎでも「事前にチャットやメールで都合を確認してから」という人も。会社のカルチャーや人間関係にもよるが、電話の場合はより「相手・内容・時間」を考慮する必要がありそう。「9時から18時。昼食時は避けると決めている」人もいる。一方、「相手の時間を奪う」から電話は一切しないという声も多数あり、営業活動にありがちな「いきなり電話」はできる限り遠慮すべきだろう。
電話の際に気を使うことは、「早口にならないように」「声のトーンを明るく」「丁寧な言葉づかい」などが多い。いずれにしても、相手に伝えるためには、「ひとりで話し続ける」など、一方通行はNG。用件は簡潔に、丁寧な言葉で、相手を敬いながら話すことが、相手の心に響く。さらに相手の体調をおもんぱかったり、感謝の言葉を添えたりすると一層心が伝わるもの。1対1しかも、声のみで話す電話は、お互いの感情や雰囲気がじかに伝わりやすいため、より慎重さが必要となる。
手書き文字にほっこり。受け取る人に思いをはせて
オンラインツールに席巻されたように思えるが、手紙派も健在。手紙のメリットはなんといっても「温かみ」や「誠意」が伝わりやすいこと。肉筆で書かれた文章に、書き手の思いを感じ取ることができ、「手紙をもらうだけで感動する」という声も多く挙がった。
ふだんメールで済ます人も、頂き物の「お礼」や「書類送付時」には手書きの手紙や一筆箋を添えているよう(Q15)。ただし、手書きの手紙は、細心の注意が必要。「文頭・文末の礼儀」「語尾の統一(です・ます調、だ・である調)」「美しい日本語」「誤字脱字」「季節にあった時候の挨拶」など。
そして何よりも「丁寧に」字を書くこと。もらった手紙がものすごい悪筆だと「書き手への印象はダウン。手紙の内容は記憶に残らない」という厳しい意見も。リアルでもオンラインでも「伝える相手へ思いをはせる」ことが大切。「伝える」ことは、決して一方的では完結しない。相手が理解してこそ、はじめて「伝わった」ことになる。
相手を思えばこそ、無礼な態度にもならないし、丁寧な言葉や文字でわかりやすく伝えたいと、自ら努力もできるのだ。
美しく・わかりやすい。アナウンサーへの支持多数
「伝え方がうまいと感じる人」には、回答者の多くがアナウンサーやニュースキャスターの名を挙げた。なかでもNHKの現役または、出身アナウンサーの名がずらり。その理由は、「聞き取りやすい」「内容がわかりやすい」「丁寧」が圧倒的。ほかの放送局も同様だろうが、「伝えるワザ」を徹底的にたたき込まれるという。「伝える目的」「端的でわかりやすい速度」、そして「正確な日本語」。こうした基礎があるからこそ、全般的にアナウンサーらは「伝え方がうまい」と感じる人が多いのだろう。
アンケートでは、タレントのマツコ・デラックスさん、IKKOさん、北海道日本ハムファイターズの監督・新庄剛志さんの名前も挙がった。共通するのは、やはり「わかりやすさ」。「ストレートでも相手の尊厳を傷つけない」「話す速度がいい」。また、俳優の岸惠子さん、中谷美紀さん、天海祐希さん、タレント・壇蜜さんの名前も。こちらは「美しく、丁寧な言葉づかい」「キレイな日本語」など、話す言葉の美しさを支持する声が多かった。リアルでのコミュニケーションが希薄な時代になったからこそ、より相手に伝わりやすくする工夫が必須となっている。