仕事ができる人は、なぜメールが短いのか。複数の会社を経営し、組織のDX支援を手掛ける岡田充弘さんは「本文が長い人は、自己紹介やPRを本文に入れてしまいます。反対に仕事ができる人は、そうした情報をさりげなく署名に詰め込んでいるのです」という――。
ノートパソコンの画面にはメールボックス
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新しいデジタルツールが生まれても仕事は楽にならない

毎年数多くのデジタルツールが生まれてきていますが、仕事が楽になったという話はほとんど聞きません。楽になるどころか、むしろ年々忙しくなっている感さえあるのは一体なぜでしょうか?

原因はいろいろあるとは思いますが、私は日本で時短が進まない理由の一つとして「なかなか減らないメール業務」があると思っています。メールが登場して20年以上が経ちますが、いまだに現役ツールとして存在し続けています。

そう言うと「メールをやめてチャットやSlackを使えばいいじゃないか」といった声が聞こえてきそうですが、相手側の事情もあって、多くのビジネスシーンで結局メールの利用は避けて通れない、というのが現実ではないでしょうか。

メールの問題を分解すると、メールの「数(送受信量)」と「長さ(文章量)」に分かれます。

私は「数」の問題は比較的対処しやすいと思っています。

というのも、私が外資系コンサルティング会社に勤務していた頃は、毎日数百件のメールが届いていましたが、その大半は社内報や共有情報で、自分の仕事に直接関係があるメールはうち1、2割程度でした(それでも多いのですが)。したがって、メーラーのプレビュー機能やショートカットキーを駆使するなど“読み飛ばす技術”さえ身につけておけば、数百件であろうとそれほど困ることはなかったのです。

1件を読むのに費やせる時間は平均3秒

一方で私は「長さ」は大きな問題だと捉えています。長いメールは、読むのも書くのも時間が取られるからです。多数のプロジェクトを扱う謎解きゲーム会社や、複数の成長企業を顧客に持つDXコンサル会社を経営する今の自分にそんな悠長な時間はありません。時間は事業や顧客の成長に関わることに使いたいと考えます。したがってメール1件読むのに費やせる時間は平均3秒、長くて10秒ほどです。

ちなみになぜメールが長くなるかというと、たいていは余計なことを書きすぎているのです。

例えば、見込み顧客に向けた営業メールで、自分や商品を良く見せようとついメールが長くなってしまうのは、容易に想像がつくのではないでしょうか。

1.仕事ができる人はメール本文ではなく署名に語らせる

仕事ができる人はそんな野暮なことをやりません。彼らの多くは、「本文はシンプルに」を心がけ、自己紹介や商品PRを署名欄にまとめます。このスタイルであれば、必要な人は署名の中身をしっかり見る一方で、情報を必要としていない人は見なくてもいい。相手の時間を無駄に使わせない気遣いがいき届いているのです。

そこで紹介したいのが、メールの署名にちょっとした工夫をほどこす方法です。

自分の活動や実績など、メールの本文に書くほどではないけど、知ってもらえたら嬉しいなくらいの情報を、さりげなく署名に詰め込んでしまうのです。

私の場合は、①電話・メールなどの連絡先情報や、②経営する謎解きゲーム会社やDXコンサル会社のURLのほか、③著書や略歴がわかるURLを署名欄に記載するようにしています。

デキる人はメール本文ではなく署名に語らせる
図表=筆者作成

この方法であれば、③によって自分や自分たちの商品に興味を持ってくれた人には、より詳しい情報を提供できますし、そうでない人には署名としてスルーしてもらうことができます。

私はしていませんが、noteやYouTubeチャンネルなどSNS関連のURLを記載している人もいますし、ネットショップを開設している人であれば、それらのURLを掲載しておくと思わぬ売上増につながるかもしれません。この辺りは絶対の正解はありませんので、目的によって自分ならではの工夫をしてみてはいかがでしょうか。

2.メールアドレス毎にデフォルトの署名を決める

Gメールでは複数のメールアドレスを使ってメールの送受信ができるのですが、それらのメールアドレス毎にデフォルトの署名を決めることもできます。

メールアドレス毎にデフォルトの署名を決める
図表=筆者作成

たとえば私の場合なら、謎解きゲーム会社であるクロネコキューブ社のメールアドレスに適した署名はこれ、DXコンサル会社であるカナリア社のメールアドレスに適した署名はこれ、といった具合です。またそれぞれのメールアドレスで、新規メール作成時、返信・転送時によっても、署名を分けることができます。

ちなみに私の場合は、返信・転送メールで何度も署名が記載されるのはうっとうしいので「署名なし」を選択し、新規メールを作成する時にだけ署名が表示されるよう設定してあります。

仕事とプライベートで署名を使い分けたい人や、仕事でも複数の顔を持つ人にとっては、あらかじめ設定しておくと、大変便利な機能であると言えるのではないでしょうか。

3.相手の関心や状況によって署名を使い分ける

また、メールアドレスは一定のものを利用する場合でも、送る相手や状況によって署名を使い分けたいシーンもあるかと思います。

たとえば私であれば、相手が生産性向上やDX関連のことに興味がある方であればカナリア社の署名を使いますし、それ以外の私の全般的な情報に興味を持ちそうな方であればカナリア社とクロネコキューブ社を併記した署名を使うようにしています。

具体的には、Gメール標準の署名機能ではなく、テンプレートの機能を使って、あらかじめ作成・保存しておいた署名のテンプレートを、メールを作成する都度選択するようにしています。

相手の関心や状況によって署名を使い分ける
図表=筆者作成

たしかに最近はチャットツールが台頭してきているので、メールの出番は少なくなってきているかもしれませんが、ややフォーマルなやりとりや対顧客との折衝シーンなど、活躍することも多いと思いますので、うまく活用してもらえたらと思います。

ノートパソコンを使用する女性の手元
写真=iStock.com/fizkes
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私が会社員だった頃は、肩書が一つしかなかったため、複数の署名を使い分けるといったことは考えたこともありませんでしたが、現在は肩書が増えているため、結果的に今回ご紹介したような機能を重用しています。かつてと異なり、一人の人が同時に多くのことにチャレンジできるようになった今の時代ならではの工夫といえるかもしれません。